誰にも邪魔させない。

咲倉なこ

17




お昼休みの時間になって、柊と坂城くんは教室を出て行った。


気になって2人の後を追いかけるようにして廊下に出ると、

「ねー、ちょっといい?」


「私?」

「聞きたいことがあるから、来てくれる?」


他のクラスの知らない女子たちに声をかけられた。


なんか嫌な予感がする…。





案の定、人気のない中庭に連れて来られたと思えば、

「あんた、柊くんと付き合ってるんだよね?」

とリーダーっぽい女子に威圧感満載で聞かれる。


そうだった、その設定忘れてた。


「う、うん…」


一応まだ付き合ってるフリは続けた方がいいのかなと思い、女子たちの言葉に頷く。


「でも昨日、坂城と一緒に帰ってたよね?」


あ…昨日の見られてたんだ。

これはまずい。


「柊くんに悪いと思わないの?」


「それには事情がありまして…」




私がちゃんと説明をしようとする前に、女の子たちが次々と口を開く。


「お前の事情なんて聞いてねーよ。
ふらふらしてるんだったら、
とっとと柊くんと別れてくれない?」

「柊くんかわいそう」

「こんなブスに裏切られるなんて、マジで最低」




耳を塞ぎたくなった。


確かに私の行動は軽率だった。


だけどなんでこんな事言われなきゃいけないの。


もう嫌だよ…。


下を向いて落ちそうな涙を必死にこらえる。




「なんとか言いなさいよ!」



何も言わない私を見て、更に女子たちはヒートアップしていく。





そんな時、


「ねー、そんなところで何やってんの?」


聞き覚えのある声がして。




顔を上げると坂城くんがいた。




坂城くん…。




「お前らさ、こんなダサいこと辞めなよ」


坂城くんは女子集団のリーダーっぽい子に話しかけている。


知り合い…なのかな?


「坂城には関係ないでしょ?」


「関係あるじゃん。
言っとくけど、一緒に帰ろうって誘ったの僕だから」


「なに言ってるの、うそでしょ?」


坂城くんは、また私をかばってくれようとしている。


何でいつもそんなに優しいの…。




「それにさ、こんなとこ黒川に見られたらどうなるかな?
女でも容赦しないって言ってなかったっけ?」


坂城くんはリーダーの子に一歩近づくと、


「なんなら僕がチクってもいいけど?」


坂城くんはドスのきいた低い声でそう言って。


女子たちは少しずつ後ずさりして、表情を歪めながら校内へ戻っていった。






女子たちがいなくなってホッとして、力が抜けて地面にしゃがみ込んだ。


「坂城くん、ありがとう…」


「いいえー」


坂城くんはそう言って私の隣に腰を下ろす。




「女子って大変だね」


「まあね…でも私の行動も軽率だったし」


「でもそれは黒川に頼まれてたからだよね?
海莉ちゃんは何も悪くないよ」


坂城くんはどこまで優しいんだろう。




「一緒に帰ろうって誘ったのは私なのに…。
いつも本当にごめんね…」


「謝んないで、僕が好きでやってる事だから」




坂城くんの優しさはとても大きくて。


私にはもったいないくらい。


感謝してもしきれない。




でも、


だからこそ、


私は坂城くんに言わなきゃいけないことがある。





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