誰にも邪魔させない。

咲倉なこ

16 気づけよバカ。




次の日。


時計は午前3時50分を指している。


昨日の出来事があまりに衝撃的過ぎて、一睡もできていない。


何度感考えても柊の気持ちが分からない。


柊は私のこと好きじゃなけど私の気持ちはキープしておきたい、とかそんな感じなのかなって。


そんな理由しか浮かばない。


だとしたら最低すぎるんだけど。




朝方になってようやく睡魔が襲ってきた。


ちょっとでもいいから寝ておこうと思って、そのまま眠りについた。






「おーい海莉!起きろよ」


あー、誰かが私を起こしてる。


でもムリ、起きれない。


もうちょっと寝かせてほしい。




「起きねーと襲うぞ」


その一言でパチっと目があいた。


「え?柊?」


「おまえ、今何時だと思ってんだよ。遅刻するぞ?」


時計を見ると本当に結構ヤバい時間で。


「うそでしょー!?」


それから急いで支度をして家を出た。






ギリギリ電車に乗れてホッと一息。


そんな私を見て、柊はニヤニヤと私に喋りかけてきた。


「海莉の寝顔、写真撮っておくべきだったなー」


「え、どんな顔してた!?」


「めっちゃ口開いてて、超アホズラだった」


「はー?ウソでしょ?!」


「海莉超おもしろい!」


柊は私の寝顔がツボだったらしくお腹を抱えて笑っている。


私、どんな顔して寝てたんだろう…。


穴があったら入りたい…。


「なー、寝顔誰にも見せんなよ」


「え?そんなに」


「そんなに!」


うわあああ。


そんな誰にも見せられないような寝顔を、好きな人に見られたとか人生最大の汚点だ…。






そんな私とは裏腹に今日の柊は機嫌がいいみたい。


こうやって普通にしてるけど昨日、柊に告白したんだよね…?


昨日のことがウソのようだ。




あれ、これってもしかして私の告白、流されてる…?


でも、諦めてるから気にしないでって言ったのは私か。


でも、諦めないでいいよ的なこと言ったよね?


あー分かんない!


分かんないよー!



「海莉、どうした?
さっきから挙動不審なんだけど」


誰のせいだと思ってんのよー!






ギリギリの時間に学校について急いで自分の席についた。


「海莉ちゃん、おはよ」



私に気が付いて坂城くんが挨拶をくれる。


「坂城くん、おはよ」


「今日遅かったね?」

「寝坊しちゃって」

「そうなんだ。休みかと思った」


そんな他愛もない話をしていると、


「昨日俺のこと考えすぎて寝れなかったんだよなー」


後ろで柊の声がして、私と坂城くんは一緒なタイミングで振り返った。




「そんな訳ないでしょ?!バカじゃないの?!」


図星過ぎて、つい声を張り上げてしまった。


「ムキになるなって」


柊はニヤリと口角をあげて楽しそうにしている。






そんな私たちを見ていた坂城くんが、

「…黒川、昼休みちょっと話いい?」

柊に向かってそう言った。



「俺も話したいと思ってたんだよね」


坂城くんを睨みつける柊。


「…?」


なにこの空気。


ピリついた空気が流れたと思うと、先生が入ってきて柊は自分の席に戻っていった。


柊と坂城くんは一体何を話すんだろう…。


気になる。




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