誰にも邪魔させない。

咲倉なこ

13




放課後。


「海莉、行くぞ」


柊は私と帰ることが当たり前かのように言ってくる。


昨日、散々私の心を弄んだ仕返し。



「ごめん、今日坂城くんと帰るから」


私がそう言うと、隣にいた坂城くんがキョトンとし顔でこっちを見た。


巻き込んでごめんねと目で訴える。


「は?んでだよ?」


そう言う柊を無視して、

「行こ」と坂城くんに声をかける。


「あ、うん」


坂城くんはまだ戸惑っている感じだったけど頷いてくれた。


柊がどんな顔をしていたのか知らない私は、そのまま坂城くんと一緒に教室を出た。






「巻き込んでごめんね」


「僕は全然いいけど、いいの?彼氏にあんなこと言って」


いいんだよ、全然。


だって、


「彼氏じゃないから」


「え?」


坂城くんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。




「柊に頼まれて付き合ってるフリしてただけ。本当迷惑。…黙っててごめんね」


やっと本当のことを言えて、少し楽になった。




「そうだったんだ、なんだ、ははっ」


坂城くんは私の言葉を聞いて笑った。


「ヤバいにやけちゃう」


「え?」


「ごめん、不謹慎だよね。でも嬉しくって」


何を嬉しいと思ったのかは分からないけど、本当にうれしそうにしている坂城くん。


坂城くんと一緒にいると、なんかすごく穏やかでいれる。






一緒に帰ろうって誘ったものの、帰る方向が逆だったことに気が付いて、


「駅まで送るよ」


坂城くんにそう言わせてしまった。


「ほっっんとにごめん!」


「いいの、僕は海莉ちゃんと一緒にいれるから嬉しいんだよ?」


「あ、ありがとう」


坂城くん、本当に優しいな…。


その優しさに多少の罪悪感を感じる。




「海莉ちゃん?なんか元気ない?」

「うんん、そんなことないよ」


「でも、浮かない顔してる」

「そう?本当に大丈夫だよ。
坂城くんって人のことちゃんと見てるって言うか、ちゃんと気にかけてくれるって言うか、ほんと優しいよね」


その優しさは本当は嬉しいはずなのに。


やっぱり心が曇ってしまうのはきっと…。






「僕が優しくするのは、海莉ちゃんだけだよ」


まっすぐに私を見てそう言う坂城くん。


坂城くんはちゃんと私のことを見ていてくれているのに。


私はこんな時でも、違う人のことを考えてた。


本当に最低だ。




「なんか照れる…」


「だよね、僕も自分で言ってて恥ずかしい」


ちゃんと坂城くんと向き合いたいって思うのに。


言うことを聞いてくれない私の感情。




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