邪神の力の一部で不死になったんだが!?

Mikuzi

グランドベアを調べよう

 今回も大分時間が空いてしいまい、申しはけありません。いろいろと設定が矛盾しているかもしれないので、気づいたことがあればコメントしてください。
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 「ロシエルっーーー!?」


 グランドベアが放ったファイヤブレスはそれほど長くは続きませんでした。グランドベア自身も、長い間ブレスを出し続けることができない攻撃なのか、見るからに疲労しているように見えます。

 しかし、それでもやはり世界最強の竜の技、たった数十秒で地面は夏場のアイスクリームが溶けるように融解しています。

 そこには、ロシエルの姿は無く、文字通り消炭になってしまったのか・・・


 「ロシエル・・・・・・」


 私はロシエルがいないことに呆然としてしまいます。

 ロシエルと過ごした時間はあまりにも短い、でも、それでもこの世界に転生してからずっと一緒にいた存在が突如いなくなったことに、どうしようも無い負の感情が私の中で渦巻き始めます。


 (イヤだよっロシエル・・・貴方がいないと・・・私・・・・)


 このときの私の精神状態は完全に少女の体に引っ張られ、まるで母親と生き別れた幼い少女のように脆く、か弱く、不安定になってしまいました。

 ロシエルがいないことを確認し終えたのか、グランドベアは自分が燃やした場所から目を離し、呆然と立つ私を見定めるように伺ってきます。

 それでも私はロシエルを失ったことに呆然とし、何もすることができません。

 グランドベアは私が何もしてこない事に『仲間が殺されて悲しみに暮れているのか、はたまた自分のことを恐れて動けないのか』と考えたのか、その顔に笑みを浮かべた様に鋭い牙を見せてきます。

 そして今度は私の番とでも言うかの様に、唸り声と共にゆっくりと私に近づいてきます。

 私は近づいてくるグランドベアをただ何もせず見つめ続けていると、そこで・・・



 グランドベアの背後に影が差し・・・




 「クマ風情がッーーー!・・・舐めないで下さいッ!」




 その声が聞こえた時にはすでに・・・




 ザシュッーーー!!




 グランドベアの頭部は、空を舞っていました。

 あれほど苦戦していた様に見えたグランドベアは、やはり彼女が本気となれば手も足も出ない様です。

 数舜の間を開けて、グランドベアは首元から血を吹き出しながら、その巨体をゆっくりと崩れ落として行きました。

 私はこの一瞬の出来事を認識するのに気づくのに数秒を使い、気づいた時には私はその場から走り出し、その彼女に思いっきり飛びつき、力一杯抱きしめました。


 「ロシエルッーーーああぁロシエルッ!」

 「ーーーーーっ!?」


 ロシエルは突然、目尻に涙を溜めながら自分の胸に飛び込んできた私に驚いていましたが、すぐに私を抱きしめ返し、私を安心させる様に頭を優しく撫でてくれます。


 「・・・シア様、ご心配おかけしてしまい、申しはけございませんでした。罰は如何様にも・・・」

 「いいんですっーー貴方が生きていてくれるなら、私と一緒にいてくれるのなら・・・」

 「・・・私はどこにも行きませんし、そう簡単にも死にません。私は、悪魔ですから。」


 ロシエルはそう冗談めかして言い、私を安心させようとします。

 私もロシエルのその言葉に、自然と笑みが溢れます。


 「そうですよね。ロシエルは悪魔ですからね・・・約束は死ぬまで守ってもらいますからね。」


 私たちはしばらく、そのまま数分間の間お互いを抱きしめ合い続けました。


 「もう、大丈夫です。ありがとう・・・ロシエル。私を安心させてくれて・・・」

 「いえ・・・そもそも心配をお掛けしてしまったのは、私ですから。」


 私たちは数分後、どちらとも無くお互いにゆっくりと体を離しました。

 ロシエルと体を離すとき、彼女が妙に残念がっている様に見えたのは、きっと私をもう少し安心させたかったのでしょう。


 「それはそうと、ロシエル。あの時はどうやって脱出したんですか?四方を囲まれていたのに・・・」

 「あの程度、どうと言うことはありません。単に上空へ飛んで避けたたまでです。」


 ロシエルは先ほどの四方を囲まれた状況の中で、唯一頭上が空いていることを即座に確認して、グランドベアがファイヤブレスを放ってくるまでの数舜の間に空高くに飛び上がり回避したようです。

 ロシエルはなんてことない様に言っていますが、通常それをしようとしても僅かコンマ数秒の間にそれらを認識し、行動に移すことができるのは、ロシエルが場数を踏んでいる証でしょう。

 しかも、私の始祖と言う吸血鬼の中でも最上位の種族であってもロシエルがそれへ飛んだ瞬間を見ることはできませんでした。

 もちろんグランドベアのファイヤブレスで視界が塞がれていたのはありますが、それでも気付けなかったと言うことは、私がまだまだ弱いと言うことなのでしょう。


 「あの時は咄嗟のことでしたので、力の加減ができず数十メートルも上空へ飛んでしまい、再び地上に戻ってくるのに数十秒かかってしまいました。」


 確かに数十メートルも高く飛んでいたのなら、落下して戻ってくるまでには時間がかかります。


 「なるほど、そうだったんですね。それはともかく、本当にロシエルが無事でよかったです。」

 「そのことについては、本当に申し訳ありませんでした。」

 「ふふっ、もう良いですよ。それより、このグランドベア。本当に何なんでしょうか?」


 私は今も首から血を流し続けている、グランドベアの死体を見ながら疑問を言います。


 「それについては、私も分かりません。ただ、自然に生まれた変異種ではないことは確かでしょう。」

 「確かにそうでしょうね。自然に生まれたにしては、このグランドベアは異常すぎます。グランドベアについては詳しくはありませんが、明らかに〈透明化〉や〈ファイヤブレス〉は使えるはずがありません。何者かが・・・何の目的で?」

 「・・・うん?アレは何でしょうか・・・?」


 私が思考の海に使っていると、ロシエルが何かに気づいた様です。


 「どうしましたか、ロシエル?」

 「グランドベアの首筋あたりに、何か・・・杭のような物が刺さっているように見えます。」


 私はロシエルが言ったグランドベアの死体の首筋あたりを注視しました。

 首から先はロシエルの攻撃により1メートルほど先に転がっています。

 そして、ロシエルが言った様に、確かにグランドベアの首筋あたりに何かの金属でできた、悔いの様なものが深々とささっています。

 すでにグランドベアが死んでいることは分かっていますが、一様警戒しながら近づいていきます。


 「もしかして、これがグランドベアの異常な強さに何か関係しているのでしょうか?」


 この杭が今回の件になんらかの関係があることはわかりますが、具体的になんなのかは見ただけでは何も分かりません。


 「無関係ではないでしょう。この杭からは微弱な魔力を感じます。恐らく魔道具の類ではないかと。」

 「魔道具ですか?でも、何の魔道具でしょう?」

 「この杭は直接グランドベアの体に刺されています。グランドベアに直接効果のある魔道具であるのなら、その効果は装着者の能力を底上げする類のものが一般的でしょう。しかし、それであれば、わざわざ杭の形状にする意味はあまりありません。この形状になんらかの意味があったのではないでしょうか?」


 確かにロシエルの言う通りです。魔道具の効果が装着者の能力を上げるものなら、アクセサリーの類い、例えば首輪や腕輪などであれば、装着された魔物の動きを阻害せずにすみます。なので、この杭のように、わざわざ装着者を傷つけてまでつける形状である必要はありません。


 「そう云えば、シア様・・・」

 「はい、何ですか?」

 「シア様は確か、鑑定のスキルをお持ちでしたよね?それを使われてみれば、何かわかるのでは?」

 「・・・・・あっ。」

 「お忘れになっていたのですね・・・」


 ロシエルに言われて、私も今思い出しました。

 私には生まれつき鑑定のスキルを習得していますが、吸血鬼という種族には〈鑑定〉のスキルは本来、生まれつき習得しているスキルではないので、今までも幾度も使ってきたはずなのに、スッカリ忘れていました。


 「あははは・・・本当になんで忘れていたんでしょう。さっきの戦闘で頭がいっぱいだったんでしょうかね。」


 私はロシエルの指摘に言い訳を言いながら苦笑いで誤魔化し、ロシエルも「仕方がありませんね」という感じで笑みを浮かべながら許してくれます。


 「では、早速鑑定してみますね。」


 私は久しぶりに使う様に感じながら鑑定をかけます。


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 【使役の杭】•••魔道具の一種。この杭を打ち込んだ魔物を使役することができる。また、魔力はこの杭が打ち込まれた魔物から供給される。使役した魔物に命令するにはこの魔道具と対になる【使役の指輪】を装着する必要がある。

 Class: MagicTool〔魔道具〕
 Rarity:9[Epic〔エピック〕]
 Quality:A
 Durability:B
 Magic ー/ー
 〈使役〉•••魔物を強制的に使役することができる。命令をするには対となる魔道具が必要となる。

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 「なるほど・・・これでこのグランドベアが人為的な魔物であることが確定しましたね。」

 「どのような物でしたか?」

 私は鑑定の結果をロシエルに教えました。

 「やはりこれ程の強さになれば、自然発生ではあり得ません。しかし、次に、誰が、何のために、今このタイミングで私たちをこのグランドベアに襲わせたのか、ということが問題になってきます。」


 ロシエルの言う通り、このグランドベアが自然のものではないとわかった今、私たちがこの川を通るこのタイミングで、グランドベアに襲われると言うことは、私たちのことを知っていると言うことなのか。それとも、この場所を通った人を無差別に襲うよう命令されたのか・・・


 「私の予想ですが、おそらくこのグランドベアを使役していた者は意図して私たちを襲わせたのではないと思われます。」

 「何故そう思うのですか?」

 「私たちがこの森で暮らすようになってまだ数ヶ月しかたっていません。それにここはとても危険な森のさらに深部、今までに人との接触も一度もありません。さらに、この状況で私たちを襲うメリットがありません。」


 確かにロシエルの言う通りです。これまでの数ヶ月の間に、私はともかくロシエルは屋敷の外へは数えるほどしか出ていません。かく言う私も動物や魔物以外の生物との接触はありませんでした。


 「では、この襲撃は意図したものではない、と言うことですか?」

 「襲撃自体は意図したものかもしれませんが、私とシア様という特定の人物を襲わせたのでは無く、無差別に生き物を襲うよう命令されていた、と考えるのが妥当でしょう。」


 なるほど、十分納得できる推測です。確かに私たちという特定の誰かでは無く、その場にいる誰かを、それこそ人で無くともこの森には強い魔物がたくさんいるので、あれほど強いグランドベアのレベル上げには最適な場所です。


 「しかし、これがまともな人が使役していたと考えるのは、また難しい所です。」

 「それは、また何故ですか?」

 「何度も言うようですが、このグランドベアはとても異常です。仮にまともな者がこのグランドベアを使役しようとしたならば、必ず使役者の手に余り、暴走し言うことを聞か無くなるでしょう。しかも、今回の場合、魔道具を用いた使役のスキルです。魔道具とは一般に自分が使用することができないスキルや魔法を、魔石や装着者の魔力を使って擬似的に同じ力を発動しているに過ぎないのです。自分の力で無いのに完全に制御することができないのは道理です。」


 確かにこれ程異常な魔物を制御しようとしたならば、真面な者ではありませんね。


 「さらに、付け加えるのであれば、これは個人では無く組織的な者たちの犯行でしょう。もし仮にグランドベアが本当に暴走すれば、これを止められるのは、私と同等かそれ以上の強者で無くてはいけませんから。まあ、暴走させることが目的なのかもしれませんが。」

 「そうですね。ロシエルの言う通りですね。もし仮に、このグランドベアが町の近くで暴走すれば、その被害は甚大な物になりそうですね。」

 「ともかく、今はまだ情報が足りなさすぎます。グランドベアについては、また後ほどと言うことにして、今日の所は一度屋敷に戻った方がよろしいでしょう。すでに日が落ち始めてしまいましたので・・・」


 ロシエルにそう進言され、はっとして周囲を見渡すと・・・確かに空は薄らと赤く染まり始め、周囲の森も心なしか先ほどよりも薄暗くなっていきました。


 「そうですね。今日は予想外の戦闘がありましたし、精神的にも今日はとても疲れてしまいました。」

 「では、屋敷に戻る前にコレを回収しておきましょう。このままここへ放置すれば、また何か良からぬことが起こる切っ掛けになってしまいますから。」


 私は、もう一度グランドベアの死骸に目を向け、胴体から切り離された頭部を見やり、そのまま視線をスライドさせ、首筋に突き刺さったままの魔道具を見やります。

 あれほど危険で、異常な魔物を制御することができるこの魔道具は、おそらく私が考えているよりも数倍は価値があり、貴重だろということはグランドベアとの一戦で理解できました。

 もしかしたら、このグランドベアを使役していた者たちが、グランドベアの死骸だけでも回収しようと試みるかもしれませんが、今はまだその者たちと事を構えることは控えるべきでしょう。

 しかし、死骸をそのままにしその者たちが回収すれば、また同じようなことが起こるかもしれません。それを防ぐためにも、グランドベアの死骸は回収するべきでしょう。


 (それに、もしかしたらこのグランドベアの死骸が何かの役に立つかもしれませんし、私自身もいろいろと調べてみたいことがありますからね。)


 グランドベアの死骸を私のブラッドボックスへ回収し終わった後、私たちはそのまま屋敷のある方向へ、来た道を引き返していきました。


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 最後までお読みくださりありがとうございます。誤字・脱字やアドバイスなどのご意見があればコメントしてください。

   次回もよろしくお願いします。

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