邪神の力の一部で不死になったんだが!?
神との邂逅
「ここは何処なんだろ?」
氷餓は目を開けて周りを見渡してみるもそこは見渡す限り白い世界が広がっているだけで何も存在してない。
「何もない・・僕は確か通り魔に襲われてその後うまく隙をついてヤルことが出来だけど・・多分と言うか十中八九死んだよな僕・・」
先程のあった出来事を理解するのにしばらく時間を要し改めて考える。
「・・と言うことは、ここは死後の世界ってことだから、天国か地獄ってことかな。」
天国と言うには割には何も存在しない白い空間が広がっており、地球ではよく言われる理想郷など存在していない。かと言って地獄と言うにはここは少し明るいように思われた。
(こんな何も無いところが天国なんて、違う意味で地獄だよね・・)
『違いますよ。』
その声はまるで氷餓の思考を読んだかのようにタイミングよく呟かれた。何処からとも無く、聞いたこともない女性の声が聞こえて来たことで、氷餓は驚き慌てて周りを見回す。
すると、いつの間にか氷餓の真後ろには、この世の者とは思えないほどの絶世の美女が立っていた。
「いつに間に!?」
気配も音も何も無く、まるで幽霊かのように、しかし幽霊では絶対にないと分かる存在が氷餓を見ている。
「あなたは一体、誰ですか・・?」
聞くまでもないことだと氷餓も分かってはいるが、あり得ないことが起っていると言うことで反射的に聞いてしまった。
『私は種と生命の神アストルティア。神崎さんが元いた地球とは別世界にあるアルトニアの女神の一柱です。』
「女神・・様・・?」
その人物から言われたことを一瞬信じられず、呆然とした呟きが溢れた。
(そうか・・死後の世界で出会う存在なんてひとつしか無いよな。)
氷餓も神かはそれに値する存在であることは想像していたが・・
「地球の神じゃなく、異世界の神なのですか?」
『はい、そうです。』
女神アストルティアは氷餓の疑問に対して、簡潔に答えた。まさか異世界の女神とは氷餓も予想外であった。
(目の前の神物が女神と言うのはまぁ分かっていたけど・・)
氷餓は少し緊張した様子で次の疑問を呟いた。
「な、何故異世界の女神であるアストルティア様がここに?」
(僕が死んだ事については理解しているつもりだけど、何故死後の僕を地球の神様じゃ無く、異世界の女神様が対応しているんだろう?)
人は普通死ぬと、天国か地獄かはたまた転生するか、地球では確かめようのない疑問ではあったが、今回氷餓が異世界の女神に対応されているのは・・
『それは今回の神崎さんの死因が深く関わっています。』
死因と言れて疑問に思う。
(死因?特に何も変わっていないと思うけど?・・いや通り魔に殺されたんだから変わっていないこともないか。)
実際現代社会での意図的な殺害は本来あってはならないが、地球では一世紀ぐらい前になると戦争なんてやっていたのだから殺されて死んだ事については特に珍しくも無いだろう。しかし取り敢えずはこの女神様の話を聞いてみるのが一番手っ取り早いと思い聞き返した。
「僕の死因ですか?僕はただと言うには無理がありますが、通り魔に襲われて結果的に死んだだけだったと思いますが・・」
『いえ、神崎さんは私たちの世界の事情にとても密接に関わっています。』
「密接に、ですか?」
密接にと言れて疑問に思う。氷餓の死因は通り魔に襲われた事で、異世界の要素は全くないと思われたが・・
『はい。今回神崎さんを結果的に倒したあの男性は、実は私たちの世界の邪神であるヴェルディトルが憑依していたのです。』
「邪神ヴェルディトル?ですか?」
邪神と聞いて最初に想像したのは、悪魔のように残虐で世界を創った神とは違って世界を滅ぼすことを目的とした存在というものだった。
『そうです。ヴェルディトルは私たちの手で何千年も前に封印した神でした。』
「封印した神?」
『はい、彼は数千年前、「暇潰しのため」と言って今回のように、とある下界の人間に憑依して好き勝手に暴れ、世界を混沌に陥れました。』
女神アストルティアの話は想像していたような世界の混乱が目的のようだ。しかし理由が暇つぶしと聞いて少し呆れてしまう。
「それは・・また大変ですね・・」
『はい、とても厄介な事件でした。しかしその時は私たちの世界での出来事だったので、武力と栄光の神と知識と魔法の神の二人が邪神を弱らせたことで、私を含めた神々によって封印することができました。ですが今回、彼は数千年の時が経って弱まっていた封印を自力で破り、私たちの手が出せない異世界の地球に渡り、そこであの男性に憑依したのです。』
(なるほど、だいたい話が掴めてきた。)
つまりアストルティア様たちが手を出せなかった邪神を氷餓が倒したことで干渉できるようになった。と言うことらしい。
『ヴェルディトルは今私たちの手でもう一度、今度はより厳重に封印をかけました。それで話を戻しますが、神崎さんはヴェルディトルを封印するきっかけを身をもって作っていただきました。神崎さんは私たちの恩人なのです。ですから迷惑をかけてしまったお詫びに、少しでも貴方の願いを叶えようと今こうして貴方をこの空間にお連れしたと言う訳です。』
「お詫びですか?」
お詫びと言われてもあまりピンときていない。当たり前であるがすでに氷餓は死んだ身である。そんな氷餓にお詫びとは一体なんなのか、疑問である。
『はい、貴方は死の直前に“もし次があるなら・・もっといい人生を送りたいなぁ・・”と言っておられたので勝手ながら私たちの管理する世界に転生していただこうと思いまして、どうでしょうか?このまま天国に行くか、元の世界の地球で輪廻の輪に入り記憶を消して転生するか、私たちの世界に記憶を持ったまま転生するか、どれでもお好きなものを選択なさってください。ちなみに私たちの世界は、浴に言う剣と魔法の世界で人間は勿論のこと魔物や亜人なども存在しています。』
(うぅ〜ん・・どうしようかな。)
剣と魔法の世界と聞いて興味を持ったのか、考え込むように黙った。
(魔法や魔物にも興味があるし、せっかくお礼に記憶を持ったまま転生させてくれるんだから転生してみるか。)
地球で転生するよりも異世界に転生する方が面白そうだと思い、氷餓は異世界に行ってみることにした。
「じゃあ、異世界に転生させてください。」
『よろしいのですか?』
確認のため聞き返されたが、すでに心は決まっていた。
[はい、お願いします。」
『分かりました、ありがとうございます。返事をいただいた後に言うのは申し訳ないのですが、実はもし神崎さんに断られても私たちの世界に来てもらうつもりだったんです。』
女神アストルティアはからかうように言い、微笑みながら告げてきた。この衝撃の事実を知り氷餓は驚愕した。
「えっ!?そうだったんですかっ!?」
『はい、神崎さんには本当に申し訳ないのでが、実はヴェルディトルが置き土産と言わんばかりに自分の因子、力一部を神崎さんの精神体に埋め込んだんです。』
そんな衝撃なことを告げてきた女神アストルティアに、氷餓は思はず聞いていた。
「それって大丈夫なんですかっ!?身体に悪影響とかって!?」
『心配しなくても大丈夫ですよ。』
(大丈夫と言われても少しも安心できないんだが・・それに身体の中に自分を殺した奴の力が体の中にあるって考えただけでゾッとする。)
いくら女神の言葉だとしても、自分では自覚できないことなので不安である。
『それに悪いことだけでも無いんですよ。先ほどお話しした彼が封印されるきっかけとなった出来事で彼が憑依した下界の人間は強力な〈スキル〉としてその力を発現させました。』
「どういうことですか?」
『実は私たちが下界の人間に祝福という形で私たちの因子を一部授けることがあるんです。それに人種だけで無く魔獣にも授けることがあります。そう言う魔獣のことを下界では神獣と言ったりしています。他に武具や防具、道具にも授けることがあり、それらを神器と言ったりもします。』
(なるほど、意外にも世界にはそう言うのがありふれているのかも知れない。とは言ってもそうホイホイとある訳じゃと思うが・・ないよな・・・?)
『では今から神崎さんにはこれから転生する〈ステータス〉を決めてもらいます。』
「おおぉ〜〈ステータス〉ですか?具体的には何をするんですか?」
(ステータスと言ったら異世界転生の定番だが・・どうすればいいのかな・・剣と魔法の異世界なんだからやっぱり魔法は使ってみたいよね。)
『先ずはこちらを御覧ください。』
アストルティア様はそう言うと突然透明な板のようなものが僕の目の前のに現れた。
「うおっ!?なんですかこれ?ホログラムって言うんでしたっけ。・・あこれっ!」
板を見てみるとそこには・・
ーーーーーーーーーーーー
Name:
Race:
Age: Sex:
Exp:
Skill: 
Ability:
Title:
ーーーーーーーーーーーー
と空白だらけの情報が表示されていた。これはゲームやライトノベルなどでよく見るステータスボードという奴だろう。
『ご覧いただいてお分かりになったと思いますが、こちらに今から神崎さんの情報を入力していきます。ここでまた、申し訳ないことなのですが種族について制限があるんです。』
「種族に制限ですか?具体的にはどんな制限ですか?もしかして、異形の魔獣とか変な生き物にしかなれないんですか!?」
『い、いえそんなことでわないですよ。先ほど言ったヴェルディトルが貴方に与えた因子の特性は〔不死の回復〕と言ういわゆる不死身、つまり、死なない身体という事です。』
(何その特性・・いや邪神と呼ばれるぐらいなんだからそれぐらい当たり前かぁ・・でも、流石に不死身ってどうなんだ?)
『この特性は回復能力がとても強力で、瀕死の重症でもすぐに治るんです。どんなに傷を負っても再生されるので継続的なダメージ、例えば毒の状態異常でもこの特性のおかげで直ぐに健康な状態に回復されるんです。』
「それは凄いですね。これで死なないという事ですよね。」
『それが・・絶対に死なないというわけではないんです。存在そのものを消されるような攻撃は防げないと思います。何せ〔不死の回復〕と言う特性なので、この特性はあくまでも回復です。そのことを忘れないでくださいね。』
(存在そのものを消すような攻撃は回復する余地もない、と言うことなのだろうな。)
『あと、いくら回復されるからと言ってダメージを受けた痛みはそのままなので、精神的なダメージは受けると思います。』
(そっか、この特性は回復であって攻撃の無効化とかじゃないんだ。)
つまり、傷が即座に回復されても痛みには耐えなければいかず、痛みを受ける事に慣れない間は迂闊に重傷を受けると、気絶してしまう事にもなる。
「あ・・でもこの特性と種族って、どう関係があるんですか?」
『先ほども言いましたが、この特性は身体に害があると即座回復され、健康な状態に戻ります。人が本来年齢を重ねる事で低下する身体能力なども回復されると言うことなんです。つまり、神崎さんは老化をしないという事です。』
「それは、成長しないという事ですか?」
もし〔不死の回復〕で成長しないという事なら、生まれてきた赤子が何年経っても大きくならないっていう事になるのだろう。そういう事であるなら悪魔の子などとは言われ最悪殺されてしまうかもしれない。
例えば、火あぶりなどにされてしまえば、この特性のせいで身体は回復され続けるが、精神に大きな影響が出るだろう。もしかしたら生まれて間もなく廃人になったりするかもしれない。もっと災厄なのは、どこかの国で実験体として一生解剖され続けられるかもしれない。
氷餓は解剖されているのを想像したのか顔を蒼白にしていると、女神アストルティアが慌てて言った。
『大丈夫ですよっ!先ほども言った通り、身体に害があるものだけ回復されるので、きちんと大人に成長しますっ!でも老化はしないと思うので、人間などの短命種では怪しまれると思います。ですから種族に制限をかけるんです。』
なるほど、そういう事ならこの制限も納得だ。
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長くなってしまったのでページを変えました。最後までお読みくださりありがとうございます。誤字・脱字やアドバイスなどのご意見があればコメントしてください。
次回もよろしくお願いします。
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