異世界召喚のジーンマジック(仮)

et cetera

9話 勝手に殺すな

「あー、気持ち悪い。やばい、昼飯が出そう」

「大丈夫ですか? トーヤ様、これを飲んでください。マナポーションです」

 と、クローネは青色の液体が入った小瓶を渡す。蓋を開けるとかなり青臭く、少し飲むのを躊躇するが意を決して一気に飲むほす。

「ーーあれ? そこまで不味くないな。以外に甘いぞ、これなら.........」

 それは突然やってきた。甘い味に気を抜いた時に強烈な不味さが鉄、砲水のように押し寄せてきた。俺はなぜこんな事になったんだと思いながら気を失った。


 俺は昼飯を食べたあと、午後にある魔術の訓練に心踊らせていた。なんと言っても、異世界に来たら一番最初に思う事だろう。魔法を使いたいと。

 そして訓練場に着くと、勇者たちと黒板と椅子がある隅っこの方に連れていかれた。

「勇者の皆様、今からこの世界の魔法についてある程度の基礎を覚えて頂きます。その前に自己紹介を、私の名前はカリーナです。では時間もないのでサクサク行きます。」

 そう言われて最初に魔法の概念と基礎を座学で叩き込まれた。この世界の魔法は大まかに二つ、魔力をありとあらゆる現象に変化させる方、もう1つは魔力で魔法陣を作り現象を起こす。この2つに別れている。
 だが、どんな現象でも起こすことは出来ない。起こせるものは適正がある属性に限る。属性は基本属性の火、水、風、土、光、闇、無、そして、派生の氷、雷、空間、重力、時空、これが今現在確認されている属性だ。

「では今から確認していきたいと思います。では、誰から確認しますか?」

「俺から行くぞ。」

 と、キョースケが出てくる。するとカリーナは水晶玉のようなものを出す。それにキョースケが自分の魔力を流すと光だした。光は赤、黒、黄、の順番に光った。

「属性は火、闇、光で、魔力も多いですね。」

 どうやら光った色が得意な属性で、光の強さが魔力のようだ。次に測ったのはマヤ、属性は火、水、風、土、光、闇、氷、雷だ。かなり多いとカリーナは驚いていた。マリアは水、風、土、光の四種類。最後に俺だったが、全部光ったが、カリーナは驚かなかった。

「では次は魔法を使ってみましょう。まずは体にある魔力を感じとるところからです。感じ取れたらそれをゆっくり動かしてみてください」

 目を瞑って体の中に集中する。すると、身体中をゆっくり何かが動いてるのを感じる。それを動かそうとするが全く動かない。

『トーヤさん。体が新しくなった影響で、魔術回路が全くないため魔力を動かせないのだと思います。魔力が通るための血管のようなものをイメージして動かして見てください。』

『血管ね、血管。』

 俺は心臓から足の先にある毛細血管まで詳細に思い浮かべ、そこを魔力が血液が巡るように動かした。その結果出来たばかりの魔力回路に、高い圧力がかかった魔力が通る。細く弱い回路を無理やり広げられ焼き切れそうな熱さと痛み、そして大量の魔力が体から抜けたことによる脱力感と激しい吐き気が襲った。


「と、トーヤさん?大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ。けど一瞬走馬灯を見た。昼から今までの。」

「ほんとに大丈夫ですか?それにしても一瞬気を失った時は死んだかと思いました」

「勝手に殺すなよ。縁起でもない。」

「トーヤさん少しよろしいですか?」

 カリーナに声をかけられ隅の方にいく。

「トーヤさんの魔力70じゃないですよね。だいたい500近くだと思うんですけど、なぜ隠しているのですか?」

「えっ?それは、あの.........すいません」

「それなりに理由があるんですね。なら深く聞きません。ですが、魔力の感知に長けている人には大体の魔力量が分かるので隠し方を教えます」

 カリーナ曰く、普通は魔力が体から漏れ出ているらしくそれを体内に留めることで隠せるそうだ。完全に隠すには全ての魔力をコントロールする必要があり、習得にはかなりの時間がかかる。

「トーヤさんには特別メニューを出します。24時間魔力を体中にめぐらせてください」

「分かりました。やってみます」

 言われた通りにやるが魔力が体から抜けていく。何度やっても変わらない。

「それではダメです。魔力を内側に巻き込むように動かしてみてください」

 そう言って勇者の方に歩いていく。

 それから3時間後、少しコツを掴んで来た時に訓練は終了した。部屋に帰ってからも、何度も魔力を動かしていると不思議なことが起きた。軽くコップを持っていただけなのに簡単に握り潰してしまったのだ。慌てているとクローネが飛んでくる。

「トーヤさん!どうしたんですか?」

「いや、魔力を動かしてコップを持っていただけなのに割れた。」

「持っていただけなのに?もう1回やってもらってもいいですか?」

 と、言われ魔力を動かすとテーブルを持つように言われた。なぜに?と思いながら持つと、何と綿あめのように軽く持つことが出来た。

「やっぱりですか。それは無属性魔法のブーストですね。それは魔力を体の中をコーティングしている感じです。」

「そうではなく魔力を練り上げて動かすとも体から魔力が漏れずコントロールの練習になります。」

 クローネは練り上げると言ったが、練り上げ方が分からない。しかもクローネは感覚派らしく、とりゃー、ぐぬぬなどオノマトペで説明をしてくる。

「ありがとうクローネ。もう少し頑張って見るよ。」

 一応そう言い、明日カリーナに聞きに行くことにした。


 トーヤ達が寝静まったころ王城の一室では2人の人物が密談をしている。

「勇者じゃないあの男はどうする?」

「そうですね。騎士団長に聞いた所なかなか見所のあるやつだと。賢者の方は飲み込みの早く教えがいあるとのことです。」

「そうか、評価はかなり高いな。」

 そう言うと、シーガの葉を丸めた葉巻をふかす。

「そう考えると勇者と同行させるか、騎士団長または宮廷魔術師として雇う方がいいかと。」

「なるほど。だか、本人が出ていきたいと言った場合はどうする?」

「その時は、あまり何もしない方がよろしいかと。もし何かした時に勇者達と仲が良かった時に困ります。」

 葉巻を吸っている男は少し考えると席を立つ。

「分かった。少し様子を見てトーヤに聴いておこう。」


 そこに残ったのはゆっくり昇る葉巻の煙と匂い誰だった。

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