語られない物語~異界の天使たちによる異聞禄~

年齢問題

 リビングに入ってきた紫依がオーブに声をかけた。

「オーブ、どうですか?」

 紫依が二人の前に歩いてくる。
 上は白いシャツでシンプルだが黒いベストで引き締めている。紺色のショートパンツが長い脚を強調しているが、黒いタイツで肌は見えない。完璧なコーディネートに見えるがオーブが気にしていた一点が浮き彫りとなった。

 そこを朱羅がずばり指摘する。

「紫依のイメージではないな」

 紫依はおっとりとした雰囲気があり、それに合せた服となると淡い色やレースを使用したフェミニン系やガーリッシュ系のイメージになる。今着ているようなボーイッシュ系やカジュアル系の服はイメージと違う。

「変ですか?動きやすいのですが……」

 自分の着ている服を見ている紫依に対して、オーブはどこからか髪ゴムと櫛を取り出して言った。

「髪型を変えたらいいよ。一つにまとめるだけでも印象が変わるから」

 オーブが紫依の髪に手を伸ばそうとしたところで朱羅が止める。

「そのままでいい。別に変なわけではない」

 朱羅の意見にオーブが手を止めて紫依を見る。

「ま、確かに。似合ってないわけじゃないからな」

 イメージとは違うが、もともとのスタイルの良さと整った顔立ちが服を着こなしている。

「では、行くか」

 朱羅が立ち上がるとオーブが制止した。

「待って。オレも出かけるから、ついでに車で送っていくよ」

「オーブは車の運転ができるのですか?」

 外見上では運転免許が取れる年齢には見えないため紫依の疑問も当然である。
そのことを自覚しているオーブは軽く笑って説明をした。

「国際免許を持っているから大丈夫。それにオレ、こう見えて朱羅より年上だぞ」

「え?」

 紫依が朱羅とオーブを交互に見ながら首を傾げる。
 大学生ぐらいの年齢にしか見えない朱羅に対して、高校生ぐらいの年齢にしか見えないオーブが年上というのは、どう見ても納得ができない。

 頭の上にクェッションマークを浮かべている紫依に朱羅が簡単に説明をした。

「向こうの世界のヒトはある年齢になったら体の成長が止まり、そのまま長命になる。俺達の体もその影響を受けているらしく、オーブは数年前に成長が止まった」

「では、私の体も成長が止まる可能性があるのですか?」

「ああ。いつ成長が止まるのかも分からないし、そもそも絶対に成長が止まるとも言えない。向こうの世界のヒトがこの世界に生まれ変わったという前例がないし、今は研究する余裕もないかなら」

「そうなのですね」

 話し込む二人にジャケットを羽織ったオーブが声をかける。

「じゃあ、行くか」

 歩いて車庫へと向かっている途中で朱羅がオーブに話しかけた。

「君がそんな恰好をするなんて珍しいな」

 オーブはさり気なくラインが入った薄いとび色のシャツの上に、素材感が出ている茶色のテーラードジャケットを着ている。下はグレーのシンプルなスリムパンツを合わせて上品な感じに仕上げている。

「こういう恰好じゃないと入れない、ちょっと面倒なところに行くからな」

 普段のオーブはパーカーやジーパンなどゆったりとした服を着ていることが多いため、このような正装に近い服装は珍しい。

「お似合いですよ」

「ありがとう」

 オーブが少し照れながら返事をする。

 三人は車庫に止まっていたシルバーのセダンの車に乗り込むと出発した。


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