ストレイ・ラム

Motoki-rhapsodos

第32話

俄かには信じられない。それは松岡にしても同様らしく、俺の隣で眉間に深く皺を寄せている。

「しかしだね、これでいくと全ての事が意味を成してくるし、鎧武者の守る『宝』の場所も特定出来る。陰陽五行とは即ち『もくごんすい』。木が『油絵』を、火が『大時計の灯り』を、土が『魔鏡』を、水が『トイレ』を、――そして、金が『鎧武者の宝』を表しているとしたら……」

「宝の場所は……」

「――そう。此処だ」

依羅さんはペーパーの上の『資料室』の場所を、トンッとボールペンの先で突くと、グルリと円で囲い塗りつぶした。

それを覗き込んだ俺達三人は、互いの顔を上目遣いで見交わし口許に笑みを浮かべた。

「鎧武者の宝、気になるよなぁ?」

「なるなる!」

「人の命を奪ってさえも――という程だからね」

窓際の友也さんと綾香にチロリと目を向けた依羅さんが、唇に人差し指を押しあてた。

「彼女には内緒だが、もう一度校舎に忍び込む必要がありそうだよ」

「ああ、今度は資料室の鍵を手に入れてな」

「でも、どーやって?」

俺の問いに、二人は唇の端をニヤリと引き上げた。

「安心しろ。俺は――いや、俺達は、握ってるんだぜ。理事長の娘の『弱み』をな」

両手をこすり合わせた松岡は、その顔に悪魔のような微笑みを刻んだ。





          

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