ストレイ・ラム

Motoki-rhapsodos

第31話

眉をそびやかした依羅さんに、松岡はパチンと指を鳴らした。

「じゃあ、美術室の油絵も、理事長室も封印の一部って訳だ!」

「そう。それと校舎の建っている向き。あの大時計の灯りは、丁度真南を向いている。そこに重大な意味がある」

備え付けのペーパーを一枚取り出した依羅さんは、前に松岡がしたようにそれに校舎の『王』の形を記した。それに東西南北の方位を書き込む。

「私は外側からしかお前達の学園の校舎を見た事はないが、きっとこの場所。渡り廊下の突き当たり、つまりD棟の中央に、水道場かトイレがあるんじゃないかな?」

「確かに――トイレがある」

窺い見る依羅さんに頷いてみせると、彼は「うん」と当然のように答えてペーパーに視線を落とした。そして校舎の『美術室』、『大時計』、『資料室』、『トイレ』、『魔鏡』の位置する場所にボールペンで小さく丸印を付けた。

「二人共、『四神相応しじんそうおうの地』って聞いた事あるかい? 一般的に知られているのは、京都なんだが……」

「あ……、なんとなく。確か、平安京を創る時に、どうとかって……」

「そう、それの事だ。あれは中国の風水から来てる思想なんだが、『東の青龍、南の朱雀、西の白虎、北の玄武』の四神がその土地を護ってくれるというものだ。それと同じような事を、お前達の校舎に施しているのだと思う。――ではもう一つ質問。『陰陽道おんみょうどう』はどう?」

「そりゃ知ってる。『安倍晴明あべのせいめい』だろ」

「天才陰陽師として有名なのはね。その陰陽道の中に『陰陽五行説』というのがあるんだが、それに基づいたもので『五行祭壇』と呼ばれるものがあるんだ。いいかい、その祭壇の上には、東方には榊を、南方には灯火を、中央には皿に盛った土を、西方には刀を、北方には清い水をそれぞれ置くそうなんだが、何かに似ていると思わないかい?」

悪戯っぽい顔で笑う依羅さんに、俺達は顔を見合わせた。依羅さんは、その『五行祭壇』を学園の校舎で創っているというのだ。

「……まさか……」

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