ストレイ・ラム
第22話
「言っとくけど、友也さん。新田の方は一応『子羊』なんだぜ。まだ俺達も、どんな相談事なのか聞いてないけど」
戻って来た松岡に、「判っている」と頷いた友也さんは、カウンター席に座る新田におしぼりを手渡した。
「子羊?」
訊き返した新田が、眉を寄せて俺を見る。それに肩を竦めてみせた俺は、答えを求めて松岡に視線を流した。
「『子羊』ってのは、依羅さんに相談事を持ち込んで来る依頼主の呼び名だ」
「依頼主? 此処って、喫茶店じゃないの?」
「そうだよ。でも、個人的に依羅さんに相談に来る人が多いんだ。警察や他では、聞いてくれないような相談事をね」
「お前のは?」
「う……ん。警察は――っていうより、誰も相手にしてくれないかもしれない」
「はあ?」
間の抜けた声を出すと、新田は気まずそうに眉間に指先をあてた。
「だから、困ってるんだってば」
唸るように言って、「本当だよ」と俺を見る。
「内容は、依羅が下りて来てから聞いた方がいいだろう。それまでは、ゆっくりしておいで。――ところで。二人に訊きたいんだが、あの子犬をどうしたんだ?」
サイフォンの火をおろした友也さんが、俺達の顔を交互に見た。
「あいつは、学園の中庭で拾ったんだ。昼休みに」
「昼休みに? じゃあ。午後の授業は、まさかその子犬を抱いて受けた訳でもないんだろうね」
思い切り顔を顰めて俺に目を向けた松岡は、再び顔を友也さんに向けた。
「まあね。二日連続で授業をサボッたって判ったら、依羅さん怒るかな」
「私は、そうだと思うけどね。理由は兎も角」
「ゲーッ! やっぱそうかぁ。約束は約束、だもんなぁ。――じゃ、黙ってよう」
「まあ、バレない事を祈ってるよ」
クスクス笑った友也さんが、俺にもウィンクしてみせる。
「気合い入れなよ。今日は君も、同罪のようだからね。あいつは、すぐに気付いてしまうから」
「何? 山下。君、授業サボッたの?」
驚いた声をあげる新田に、肩を竦めて天井を仰ぐ。
「俺の方は成り行きだ」
戻って来た松岡に、「判っている」と頷いた友也さんは、カウンター席に座る新田におしぼりを手渡した。
「子羊?」
訊き返した新田が、眉を寄せて俺を見る。それに肩を竦めてみせた俺は、答えを求めて松岡に視線を流した。
「『子羊』ってのは、依羅さんに相談事を持ち込んで来る依頼主の呼び名だ」
「依頼主? 此処って、喫茶店じゃないの?」
「そうだよ。でも、個人的に依羅さんに相談に来る人が多いんだ。警察や他では、聞いてくれないような相談事をね」
「お前のは?」
「う……ん。警察は――っていうより、誰も相手にしてくれないかもしれない」
「はあ?」
間の抜けた声を出すと、新田は気まずそうに眉間に指先をあてた。
「だから、困ってるんだってば」
唸るように言って、「本当だよ」と俺を見る。
「内容は、依羅が下りて来てから聞いた方がいいだろう。それまでは、ゆっくりしておいで。――ところで。二人に訊きたいんだが、あの子犬をどうしたんだ?」
サイフォンの火をおろした友也さんが、俺達の顔を交互に見た。
「あいつは、学園の中庭で拾ったんだ。昼休みに」
「昼休みに? じゃあ。午後の授業は、まさかその子犬を抱いて受けた訳でもないんだろうね」
思い切り顔を顰めて俺に目を向けた松岡は、再び顔を友也さんに向けた。
「まあね。二日連続で授業をサボッたって判ったら、依羅さん怒るかな」
「私は、そうだと思うけどね。理由は兎も角」
「ゲーッ! やっぱそうかぁ。約束は約束、だもんなぁ。――じゃ、黙ってよう」
「まあ、バレない事を祈ってるよ」
クスクス笑った友也さんが、俺にもウィンクしてみせる。
「気合い入れなよ。今日は君も、同罪のようだからね。あいつは、すぐに気付いてしまうから」
「何? 山下。君、授業サボッたの?」
驚いた声をあげる新田に、肩を竦めて天井を仰ぐ。
「俺の方は成り行きだ」
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