日常【BL】
なほあまりある 5
驚いたように昭仁が目を瞠る。一瞬寂しげな色を瞳に滲ませたが、それでもすぐにいつもの人懐っこい笑みを浮かべた。
「先輩って、坂城先輩? 憶えてるよ。アレだろ? 『バカやんのは、中学までだぞ』だろ?」
「ちゃんと守ってんだろな?」
低いまま言った俺の言葉に、昭仁が引きつった表情で固まる。しかし俺から顔を逸らせると、ニヘラと笑ってみせた。
「ムリだよ。……だってオレ、元々バカだもん」
再び俺を見返したその瞳が、「お前と違って」と言っている。
「そーゆー事言ってんじゃねーだろが」
「それよりユウさー、いらねぇ紙持ってねー?」
俺の声に被せるように、昭仁が強引に言葉を割り込ませてくる。
もうこの話は終わりだと、先輩の話はしたくないと、無理矢理作ったその笑顔が言っていた。
俺に言われるまでもなく、解っている事でもあるのだ。ピアスをまだ付けたままでいるのが、その証拠にも思えた。
「………紙?」
仕方なく、溜め息混じりにその話題に乗る。
「そ。なんでもいーや」
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