日常【BL】
さしも知らじな 6
「いや。こっちの橋から向こうに渡って。少し歩くんですケドォ……」
不満そうな祐志に、俺の声も小さくなっていく。
「あっちも、人だかりあるじゃん」
「ま、ね。あれを突っ切るのに苦労する……かなぁ?」
「げーッ」
祐志が夜空を仰いだのと同時にどよめきが広がり、ヒュゥーッと天を切り裂く鋭い音と共に、ドドーッンと1発目の花火が上がった。
花火の音に負けないくらい大きな歓声と、盛大な拍手。
なんだかはしゃぎたくなる程、胸がドキドキする。
それからは、街灯なんて足元にも及ばない程の光が、何度も暗い夜空へと上がっては、地上へと降り注いだ。
これでもか、これでもか、と上がっていく。
「すげぇ……」
俺の呟きに軽く頷いて、祐志も花火に目を向ける。
花火を見遣りながら橋を渡っていた祐志は、その中程で突然足を止めた。人波を抜けるように逸れると、欄干に片手を置いて花火を見つめる。
「……ここだと、見えなくはないけど、ちゃんと見えないぜ」
「ああ」
そう言いながらも、祐志の足は動く気配がない。
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