日常【BL】

Motoki-rhapsodos

さしも知らじな 4


「こんなに人がいんのに、マシな場所なんてあんのかよ? 相沢じゃねぇけど、俺も人込み得意じゃねぇぞ」

鼻に皺を寄せた祐志は、周りを見遣りながら言う。

「大丈夫大丈夫。中学ん時の奴等と見つけた場所かあるからさ」

「へぇ?」

「全然人いねぇって訳じゃねぇけど、ギュウギュウになって見ないといけない程でもねぇから」

「ふーん」

そう言いながらも、祐志は周りに意識を向けている。

「何回目ぐらい?」

「えぇッ?」

突然こちらに目を向けて言った祐志に、又もや大袈裟に反応してしまった。

「――お前」

スッと目を細めた祐志が、低い声を吐き出す。しばらく無言で俺を見つめた後、小さく肩を竦めると、何事もなかったように言葉を続けた。

「この花火見に来んの、何回目?」

「え? んっと、中2の時からだから、4回目」

「ずっと同じメンバー?」

「うん、大体。今年は連絡取ってねぇけど、あいつらも来てるかもなぁ。――お前は?」

思わず訊き返すと、祐志は呆れた顔で苦笑と共に答えた。

「だから、初めてだって」

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品