キミと紡ぐ【BL編】

Motoki-rhapsodos

第4話


「一応、さ。お前に言われた事も、よく考えたんだぜ。女に恥かかせないって意味とかさ。和美と付き合おうかって思ったりもしたけど。……出来なかった」

「えっ」

付き合ってるんじゃ……ないんスか。

「卒業式の数日前には、和美に伝えて。……泣かせちまったよ」

肩を竦めた先輩に、心臓が、バクバクと音を立てる。

そして卒業式の後の和美さんを思い出した。

先輩から言われた後だったのに、あんな風に先輩と笑ってたのだ。

「……いい女ッスね、和美さん」

「まぁなー」

先輩も、そう言って少し笑う。

その瞳は今、和美さんを映しているに違いない。



「……なぁ。――触れていい?」



先輩が、首を傾げるようにして訊いてくる。

あらためて問われても困る。

声を出せないでいると、クスリと笑った先輩の手が伸びてきた。

首の後ろに手が触れて、引き寄せられる。

俺の、唇に。――先輩の唇が触れて、顔を覗き込まれた。

「今日は、突き飛ばさないんだなー? 優樹?」

顔を真っ赤にしてる俺を見て、ニヤニヤと笑ってる先輩に「ウッセ、バカ」と返す。

キスされて。初めて名前で呼ばれて。

照れないヤツがいたら、見てみてーよ。

「俺も、していいッスか。……キス」

一瞬。

キョトンとした先輩が、ニヤリと笑う。

「ドーゾ?」

先輩の腕を掴んで、先輩の額に口付ける。



前髪に、ずっと嫉妬してた。

触れたいと、ずっと思ってた。



その額に触れられて、嬉しく思う。


――それなのに。


「オコチャマー」


クスクスと笑う先輩を、シバいてやりたい……。




――なんで俺、あんたを好きなんスかねッ!





          

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く