一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...

来亜子

バイト 3

「来蘭!大森さんに会ってきた?」
マイクを通して吉井先輩が言う。
もう最近じゃ、吉井先輩もわたしのことを来蘭と呼び捨てにする。

「挨拶してきました!
今週末から使ってもらうことになりました!」

「おー!良かったねー!」
マイク通さなくてもいいんじゃないかと思うんだけど、ずっとマイク通して話す吉井先輩...

「うるせーよ吉井!」
ライブが近づくと廣瀬先輩は人が変わる。
いつものようにわしゃわしゃしてくれなくなる...
それはそれでちょっと寂しい...
でも、ピリピリモードの廣瀬先輩も、カッコイイんだよな...

廣瀬先輩に怒られた吉井先輩は、マイクスタンドにマイクを戻し、ミネラルウォーターを飲みながらわたしの近くにやって来て
「大森さんすごいいい人だからさ、安心してかわいがってもらいな」
そう言ってまたゴクリとミネラルウォーターを飲んだ。

「大森さんにわたしを使ってやってくれってすごいお願いしてくれたんだってね、先輩...
先輩も訳ありな生い立ちだから、わたしのことすごい心配してくれてたって...
ありがとう、吉井先輩。」

「あのオッサン、余計なこと言うなよー」
ちょっと照れて困る吉井先輩
「俺んちは俺が小さい頃に親父が死んでんだよ」

「そうゆうこと、そんなあっけらかんと言う?」
ちょっと笑ってしまったわたしに釣られるように先輩も笑いながら
「俺もひとりっ子だし、なんか来蘭のことちょっと妹みたいな気になったんだよね」
西日を眩しそうにしながら、今まで見たことないような優しい顔をした吉井先輩の横顔を、わたしはこっそり見つめていた...

「ありがと、おにーちゃん」
って小声で言ったら、予想外に吉井先輩は照れて
「おまっ、やめろよー」
とか言いながら、あっちへ行ってしまった。

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