一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...

来亜子

僕の歌姫 5

そうちゃんと陽介くんは、それぞれ英二先輩と英昭先輩にかぶりついて、躍起になって練習し始めた。
わたしは廣瀬先輩にベースのイロハを教えてもらい始めた。ベースの構造うんぬんかんぬんから、基本のフレーズやピッキング、指弾き...いつもは優しい廣瀬先輩だけど、ベース教えてくれる時の先輩は、なかなか厳しい。でも、先輩の持ってる知識、技術を惜しみなく教えてくれるなんてすごいありがたいことだった。時々、後ろから覆いかぶさって指運びを教えてくれるから、そうちゃんが
「廣瀬先輩近い近い!!」
って、先輩を剥がしに来たけど...

優輝くんは、だまってそれぞれの練習する様子を見ていた。
喉の調子の悪い吉井先輩と話しながら、自分のノートパソコンを出してきて、録り溜めた自作の曲を、吉井先輩に聞かせているようだった。
吉井先輩が、その都度感嘆している様子が目に入って、ちょっと気になった...

そろそろ学校が閉まる時間だからと、片付け始めた。
すると優輝くんが、スっと隣りにやってきて
「僕の作った曲、他にも沢山あるんだ。良かったら、まずは聞いてくれないかな」
と遠慮がちに言った。

「うん!もちろん!他の曲も聞いてみたい!」
と言ったら、ものすごく嬉しそうな顔をして
「来蘭ちゃんはiPhone?だとしたら曲聞かせやすいかも!」
とノートパソコンをなにやら操作し始めた。
「曲のデータを置いてあるアドレスを送るから、そこにアクセス出来る?来蘭ちゃんのアドレス教えて」
アドレス交換をしてアクセスしてみると、沢山の曲がアップロードされていた。

「すごい!これ全部優輝くんが作った曲?」

「うん...まあね...」
ちょっと恥ずかしそうにする優輝くん。

そうちゃんや陽介くんも、わたしたちのそばにやって来て、みんなでアドレス交換をして、曲をみんなで聴けるように優輝くんがしてくれた。

「それでね、来蘭ちゃん、この曲たちにはまだ歌が乗ってないんだ。もちろん歌詞もない。もし来蘭ちゃんが、歌詞を付けて歌ってみたいなと思う曲があったら、来蘭ちゃんに歌詞を書いて欲しいんだ。そして来蘭ちゃんが歌ってくれたなら...と思う...」

「......と、とにかく聞いてみるね。歌詞とか書いたことないし、出来るか分からないけど...」

「うん。自分が作った曲を人に聞かせること自体が初めてだから、聞いてくれるだけで嬉しいよ」
はにかむ優輝くんは、なんかかわいかった。


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