運命に刃向かえますか?神様に歯向かえますか? 。

白海

8、 決意


 その言葉を聞いて、目をぱちくりとした。えっ? 、新しい名前じゃなくないかしら … ? 。ポカンとする私に、侍女さんが教えてくれる。


「ファリストリス・マリアお嬢様に、ヴァイオレットと云う 神の名を授けられたのです。この名を頂くと云う事は、最高神であらせられるラプラタス様の御寵愛を受けると云う事で御座います ___ お嬢様は、神に愛されているので御座いますよ。 」


 ___ つまり、マリアの元の名は ファリストリス・マリア と云う事か。ヴァイオレットと云う名は、あの狂った神から授けられた名前 。


 ゾッとした。私は、マリアは、神の寵愛を受けている。簡単に正面から手出しを出来るものなど居ないだろう。しかし、神の寵愛受ける幼子を利用しようと群がる者は、目眩がするほど 多いのだろう。



彼は、何処までも苦しめたいのだろう。



 恐怖と同時に湧き上がったのは、怒りと優越感。良いじゃない、面白いわ。私は、貴方の悪意を利用して 運命にも、神様にも 背いてみせる … !! 。


___ それからは、慌ただしく時が過ぎていった。帰ってくる予定だった父様は、王様に呼ばれ 帰宅を断念。

 私は、状況の理解を視野に入れて 一日を過ごした。


 装飾品や屋敷の大きさから見るに、マリアは 王族に近い立場の家に生まれたのだと察することが出来る。また、使用人達に非常に愛されていた。

 顔を合わせれば 満面の笑みを向けてくれて、時にはチョコレートをこっそりくれたり。私は、ホワイトチョコレートの方が好きなんだけどな。そんな事を思いながら、幼児らしく ありがとうっと 愛らしい笑みを浮かべて愛想を振りまいたり。


 情報収集は、困難だった。当たり前だ。マリアがマリアについて質問するなんて、誰だって 不審に感じるだろう。入浴も夕食も終えれば、外はあっという間に真っ暗だった。こんな風にゆっくり夜空を眺めたのは、一体 何時ぶりだろうか。


 寝室にある鏡を見詰める。相変わらず、造られたお人形さんみたいに可愛らしい。けれど、心は変わらない。可愛くない、鈴菜のまま。表情が微かに陰る。ゆっくりと、ふかふかなベットに倒れ込んだ。



おやすみ、皆さん。お月様が歌ってる。

おやすみ、星さん。明日が笑ってる。

お花が咲いて、また 明日。きらきらな明日が、待っているよ。

今日はおやすみ。ゆっくりおやすみ。明日もまた、きらきら 笑ってる ___ 




 鈴菜だった時、父や母が生きていた時に 良く 母が子守唄で歌ってくれていた歌を口ずさむ。思い出に浸るみたいに、何だか懐かしさに包まれて。


「 お父さん、お母さん _ 彩奈 … 。」



 気付いたら、もうどの世界にも居ない大切な人を呼んでいた。まだ、私は受け入れられていない。失った事を、いないことを。


 探しても、虚しいだけなのに。滲む涙を堪えた。泣くな、泣くな。今日は、やけに涙脆い。うつ伏せになりながらも、布団にくるまった。ウトウトしながらも、朧気な意識の中で 問い掛ける。


運命に歯向かえますか?



運命に歯向かえますか?




____ 抗って見せる、必ず。


 意識は、眠りへと誘われていった。







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