運命に刃向かえますか?神様に歯向かえますか? 。
3、神の歪んだ寵愛
 にひ、と瞳を細める彼。
 
 その瞳が冷たく歪んだような気がして、息が一瞬詰まる。何より、神様 ? 。そんなのこの世にいるはず無いのに 。有り得ないじゃないか。
 
 分かっているのに、信じてしまいそうな自分がいる。それ程に、彼は 何か異様な空気を纏っていた。容易に触れたら、消されてしまいそうな 威圧感 。
 
 黙っている私に、彼は 不意に 柔らかく 微笑む。そんな仕草に、私ではない 誰かが、胸を締め付けた。彼が 、ゆっくり 歩み寄る。逃げたいはずなのに、地面に足が張り付いたように動かない。金縛りのような硬直が、自由を 縛る。
「… マリア … 。」
 ゾッとするほどに 甘い声が、彼の口から漏れた。怖い。心臓が震え上がる。伸びてきた彼の手に、ぎゅっと目を瞑った __ が、その手は 優しく 頬に添えられた。衝撃と 恥ずかしさに、顔を微かに染めながら 慌てて目を開ける。
 そこには、愛しいものを見詰める彼の表情があった。
「___ ねぇ、知ってる? 。僕はね、鈴菜を、鈴菜である マリアを愛しているんだ。君が生まれた時から、ずっとね。」
 何を言っているのか、理解出来なかった。只、触れている手には温度がない。やっと確信した。否、確信せざる終えない … 彼は、少なくとも 人間では無いのだと。
 震えながらも睨み続ける私を見て、彼は余計に 嬉しそうに 口元を歪ませて、声を上げて笑った。
「あはは っ、やっぱり素晴らしい !! 素晴らしいよ 鈴菜 !! 。否、今は " マリア"と呼ぶべきかな? 。君は 実に 美しい魂の持ち主だった。僕が食べてしまいたいと思う程に ___ でも、食べちゃったら 君の苦しむ姿がもう見えないから、食べなかったんだ! 。… 苦しむ君は、とても可愛いんだよ! 、本当に 、世界一 可愛い… 。」
 くるくる回りながら、甲高い声で笑う彼。相変わらずその姿は美しい。なのに、彼は歪んでいた。舞う彼は、人の幸せと云う名の蜜を吸いながら生きる蝶々のよう。
 歪んだ愛で、私を見詰めていた。ふふ、と 笑みを零す。がくがくと震える足とは裏腹に、私は一生懸命睨み付けていた。負けないように、屈しないように。
 そんな私に また 近付いてきたと思えば、彼は 無邪気に笑みを浮かべる。そう、それも 恐ろしいほどに無邪気な。
「君に新しい人生を与えたのはね。君に新しい苦しみを与えるためでもあるんだ!!ねぇ? 、だって 退屈だろう? 、悲しいだろう? 。愛しい子を失うなんて。苦しむ姿をもう … 見れないなんて!! 。」
 __ 変態だ。もう、彼はある種の変態にしか見えない。何処までも楽しそうな彼が、憎たらしいのに 動けない。苦しむ姿をみたい … ? 、愛しい子 … ? 。
 
 私は、愛してるの意味を理解できない。本当を見つけることが出来ない。だけれど、これだけは理解出来た。
彼の"愛してる"は、間違っている!
彼の"愛情"は、狂っている!
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