絶対お兄ちゃん主義!

桜祭

変わった日常

玄関から黙って居間へ向かうと、恋と三つ子達の妹が全員各々好きな事をやっていた目から俺へと目を向けるのであった。

「おぅ、ただいま兄貴!」
「いや、帰ったの俺だから。逆だよ逆」
「ただいま兄貴、おぅ!」
「いやいや、逆だから」
「おぅ、ただいま兄貴!」
「ループしてんじゃねーか!」

昨日話していてわかったが音は残念ながら頭がちょっと残念なお人である。
瑠璃、めぐりは普通以上に頭は良いイメージであった。

「あはは、お兄さんおかえりです」
「瑠璃逆だぜ」

散々突っ込まれた音はどうやら自分が突っ込みたかったらしく瑠璃の間違っていない返事にいちゃもんを付けていた。

「お姉さんおかえりです」
「兄貴が女になっちまった!?」
「お兄ちゃんってお姉ちゃんなんですか?」
「お前らメンドクセーな!」

1人めぐりは興味なさそうに雑誌をペラッと捲った。
どうやら昼前にみんな起きたらしい。

今日の13時半頃からパーティーを開く為に来客が来るのは昨日の内に知らせていたので部屋は片付いている。
今日は恋から「お兄ちゃんがおもてなしをしていてください。料理の準備は私がしておきますから」と言われていたので手伝わなかったなどと文句は飛ばないだろう。
3人も手伝うと言ってきたがそんなに人手は要らないのでめぐりのみ手伝う事になったらしい。
三つ子3人、親の夜遅くまで帰らない生活が続いた為家事は全員出来るとの事。

「あたしら起きるの遅かったから昼は軽く済ませたいな」

音の言葉で俺は台所に立った。
軽くと言っている以上料理はしたくない。
ここは買い置きしている割にまったくストックの減らないカップ麺にしよう。

「カップ麺にするか。おまえら何味にする?」
「私味噌にします」
「あたしも味噌」
「みそー」
「空気を呼んで味噌……と見せかけて味噌」

1人すごく面倒な言い回しをする子はとてもどうでも良さげなやる気ない声であった。
みんなが口を揃えて味噌と言うので俺も味噌にしたくなった。
色々なメーカー品の味噌ラーメンにお湯を入れていきそのままみんなの前に箸と一緒に差し出した。

「お兄ちゃんがお湯を入れたので好きなメーカーのを選んでいいですよ」と恋に言われ、本当は余り物を選ぶつもりだったのだが、恋の意見に文句も飛ばなかったのでベターなメーカーのものを選択した。
それからみんな遠慮して取る気配がなかった。
見かねた俺は適当に配り簡単な食事を終えた。

恋とめぐりは台所で料理を作っていた。
みんな来るまでまだ少し時間がある。
俺、音、瑠璃は手持ち無沙汰であった。

「なぁ、兄貴暇だわ。なんか面白い話してー」
「遠野音って回文なんだぜ」
「もうその話やめろよ!」

する事も無くグダグダトークをしながら俺は流亜用のテキストをノートパソコンと手書きで作成していた。
2人共珍しそうに見てたが1分しない内に飽きたらしい。

グダグダトークもネタが無く、皆黙り込み気まずい空気の漂う中であった。
ピンポーンというインターホンが鳴り響いた。
よし、この空気を壊してくれる奴が現れたらしい。
俺は1人ウキウキと玄関まで来客をお迎えにあがる。

「あら、達裄君。これ回覧板よろしくね」
「……」

隣の家のおばさんだった。
月2回まわってくる回覧板を軽く内容を読んですぐに隣の家に届けるのであった。
居間に戻ってもまだ静かな空気だった。
3分前のウキウキした気分はなんだったのであろう。

それから約10分。
ついにまたインターホンが鳴った。
俺はまたウキウキした気分で来客を向かい入れる為玄関へ向かうのであった。

「何度もごめんね達裄君、さっきの回覧板にあった地区のお金集めに来たの」
「……」

隣の家のおばさんだった。
申し訳なさそうに封筒を手に握っていらっしゃった。
部屋まで歩いていき財布の1000円札をおばさんに手渡しておばさんは家に帰って行った。
奇跡のタイミングのおばさんだわ。
奇跡の世代とやらを俺は信じていいかもしれない。

それから5分くらいして、またインターホン。
今度こそと来客を向かい入れる。

「メリークリスマス達裄!」
「メリクリ~」

相変わらずの天パの星丸と相変わらずの美貌の光が一緒に来ていた。
向かう途中に一緒になりここまで一緒だったらしい。

「んで昨日言ってた天使はどこ~?」

昨日の話を信じていた星丸はキョロキョロと辺りを見渡している。

「俺には君の隣に天使が見えるんだけどな」
「え、嘘!?……なんだ暴力堕天使じゃん」
「…………」

星丸の悲鳴が玄関に響き渡った。
その悲鳴の直後玄関のドアが開いた。

「うわっ、開けたら星丸が倒れてた!?」

星丸の悲鳴と重なってしまったらしいインターホン。
影太もちょうどよく現れた。
しかし影太の開けたら人が倒れてたって状況トラウマになりそうだな。

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