生物大事件

陽鐘

プロローグ

朝はどうも起きるのが苦手で仕方がない。それに冬はとくにだ。

あー、ねみぃ……。でも…起きなければ…。

俺は布団の中に入ったまま、腕をのばし、目覚し時計を取る。そして自分の顔の元まで寄せていく。

時計を見ると、現在時刻は8時5分と刻まれている。

なんだ、まだ8時じゃないか。

俺はそう思うと、あともうちょっとだけ…あと5分だけ寝よう…。そう思った。そうして俺は、手から時計を離し、布団にまた潜る。

………………。

……ん?待てよ、8時…?…8時…8時……。

ガバッ

「8時ぃぃい!!?」

そう叫ぶと、勢いよく布団の上から起き上がる。

「蓮二ー!あんたいつまで寝てんのよ!学校遅刻しちゃうわよ!!」

母の怒鳴り声が聞こえてくる。

「なんで起こしてくれなかったんだよ!!?」

大声で俺は叫ぶ。

「起こしに行ったわよ!でもあんた起きなかったじゃない」

母からそう返されると俺は急いで制服に着替え始めた。

「やべぇよやべぇよ、遅刻しちまう!!教頭に雷おっことされる…!!」

速攻で着替えを終わらせ、カバンを持つと、慌てて部屋から飛び出て猛ダッシュで階段を駆け下りる。

「蓮二ー!朝ご飯はァー!?」

リビングのドアから顔を出す母。

「パン!」

そう言うと俺は洗面所へ向かい、顔を洗い、カバンを持つと即玄関へと向かう。

「ほら!焼きそばパンとメロンパン!」 

母はそう言うと、ビニール袋に入っているメロンパンとすぐに口にできる焼きそばパンを渡した。

俺は渡されたメロンパンを片手に持ち、焼きそばパンを口に加える。

「ひってきます(いってきます)!!」

そうして俺は玄関のドアを開け、死ぬ気で俺が通うエルドラ学園へと猛スピードで走った。っにしても何故食べにくい焼きそばパンなんだ。

―――
―――
―――

「全く、蓮二ったらなんでこうなることがわかっているのに早く起きないのかしら」

そんな風に呟く蓮二の母、明峰由紀恵はリビングに戻り、皿洗いをする。すると、気になるニュースが聞こえてきた。

『本日のニュースです。

昨夜未明、山奥の空き家に一人の男性の死体が見つかりました。

男の身体に、爪のような大きな傷跡が何ヶ所もあり、酷く損傷しているそうです。

空き家の敷地内も酷く荒らされていたそうです。

山のふもとの近隣住民達の間では、クマの被害が多発しているため、警察らはその被害者かと思われており、身元の判明を急いでます。

なお、その近辺では、最近学校へ登校中の児童らが行方不明になるなどの事件が多発しているようです。

また──────』

由紀恵は、皿洗いをしながらそのニュースに耳を傾けて聞いていた。そして、皿洗いを終えるとしばらくの間テレビを見つめた。

「クマが人を襲ったり、子ども達が行方不明になったり、最近は随分と物騒ねぇ…」

由紀恵は、不安そうにそう呟いた。






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