Infinity インフィニティ

桜井ギル

1章2話 「愛らしいお姫様」

前回のあらすじ

もう既に詰んでます。人生詰んでます。





「とりあえずはみんなと合流は絶対だと思うんだよね!」

「……うん、私も今それ言おうと思った」


絶対嘘だ。


「拓真は同じ方向に逃げたんだよね?」

「うん」

「とりあえず、拓真と合流しよう」

「方向こっちで合ってる?」

「…たぶん。私も必死に逃げたからよく見えなかったけど」

「………行ってみよう」


そーっと私達は歩く。

恐怖に支配されているためか私の体はとても震えていた。

後ろにいる美紅も同じような様子。


「ねぇなんで私が先頭?」

「え?………いや、その」

「はあ……まあ、いいや」


私達は警戒しながら歩く。


「そういえばInfinityに物理攻撃って効くっけ?」

「さあ……」

「なんでそんな事聞くの?」

「私の部屋に最近買った木刀があるんだよね。それが護身用にならないかなって」

「………なんで木刀なんて買ってるの?」

「なんかのアニメの装飾用木刀」

「装飾用……それ大丈夫なの?」

「大丈夫、………たぶん。化け物相手だから正当防衛になるはず」

「……なんか不安」

「無いよりはいいでしょ」


そうこうしていると私達の目の前に3つの扉があった。


「………私の家にこんな部屋なかったのに」

「これなんの部屋だろう?とりあえず入ってみようよ」

「ばっ……!適当に開けちゃダメだって!」


私がそう言った頃にはもう遅かった。

美紅は3つの扉のうち左端の扉を開けた。






そこにはたくさんの蝋人形が置かれていた。

その人形は今にも動きそうなほど不気味な雰囲気だった。


「……気色悪い」


美紅は露骨に嫌な顔を私に向けてくる。


「………私、こんな趣味ないし」

「それにこんなの知らない」


たくさんの人形のうちの1つ、際立って美しい女性の人形に向かって歩く。

その女性はとても愛らしい端正な顔立ちだ。


「……何か説明書きみたいなのがついてる」


人形の傍に立つ説明書きプレートを読んでみるとこんな事が書かれていた。


『No.008 愛らしいお姫様
 彼女は両親にも、国民にも愛されて育った美しい姫。しかし、嫉妬に狂った姉により殺されてしまう。嗚呼、なんと可哀想なことよ。
 私は悲惨な状態になってしまった遺体を生きていた時と同じように復元することにした。
 完成にはおよそ6年の月日がかかっていた。しかしそれだけの時間を掛けて良かったと思えるほど美しく出来た。物憂れげな瞳からはあの後姉がどうなったのかと心配するように感じられる。』

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