栴檀少女礼賛

マウスウォッシュ

雲奔は九時から四時へ

「アミ......言い過ぎじゃないか?」


「いいえ、先輩は私に事故の責務を擦りつけてきたのよ? そういう発言をするという事は、自分にそういう発言をされるという覚悟がある、と私は受け取ったの。」


「つまり?」


「他人に事故の責務を負わせる発言は、相当な大義名分が無い限りは容認されない。しかし先輩の言った主張は、ごく個人的なものだったし、そもそも私の講義とアキバ先輩の事故に、直接的な因果関係が無いのは小学生でも分かることだった。」


「それで?」


「良識を持ち合わせている普通の人なら、そんな無茶苦茶な主張はしない。だけど常日頃から本を読み漁り、リテラシーと良識を持ち合わせているべき先輩は、リテラシーも良識も無い発言をした。

だから私は普通なら憚られるような指摘を、ズカズカと土足で踏み入って言ってやった。いま私、先輩と同じで良識もリテラシーも捨ててるので、言いたいこと言いますよ?」


 アミは先輩の方に向き直り、ビッと指さした。天才少女による超論理武装、マキ先輩は怒りの表情から、何も言い返せない悔しそうな表情に変わった。


「ぐっ......」


「筋は通ってますよね? 先輩は良識もリテラシーも無く私に事故の責務を負わせようとした。それなら、私だって良識もリテラシーも無く貴女は今の権限に相応しくないと言ってやります。
最も、理にかなってる事を言ってるのは私の方だと思いますけどね?」


 トラウマから立ち直ったばかりとは思えない程の語気の強さ。今朝9時ぐらいの沈み具合からは考えられないほどの、現在4時の畳み掛け。


 多分、アミの心の中で大きな変化が訪れたのだろう。その変化のキッカケは多分くそヤンキーショウタに言われたことだ。


 彼の言葉は一種の風、風は時として向かい風になるけど、風が無ければ雲は停滞したまま。ある意味、彼のキツい言葉は向かい風のような形ではあったが、確実に彼女の心の雨雲を晴らして見せた。


 何故か僕はにとっては、それが非常に口惜しかった。アミの心が晴れたという結果は喜ばしい限りなのだが、ショウタには出来て僕には出来なかったという事実が、僕にとって何よりも悔しいことであった。


「まぁ、私もホントはここまで言いたく無かったんですけど、先輩が主張を曲げない様子でしたので言わせてもらいました。先輩が折れてくれない限り、滞りなく補講が進められないんですよ。ご理解頂けましたか?」


「......分かった......」

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