第107話・勝てない戦い。

「ヒィヒヒヒヒ、こんなに簡単に殺したらやっぱり駄目だな。ちょっとずつダメージを与えないとアイツが苦しむ顔が見れないな。システムコール・ケリュケイオン。Ａ３を復元しろ。」

『ビィー、Ａ３の復元を開始します。………復元完了しました。Ａ３を地下迷宮19階に転送します。………転送完了しました。』

「はーい、ご苦労さま。」

　岩田の前には灰になって消えたエッサが、元通りの姿で倒れていました。どうやら、気を失っているようです。まったく動きません。

「………あぁ〜、まったく困った奴だ。全然起きやしねぇー。ライトニング一筋の落雷！」

『ピィシャン落雷直撃！』

「ガァハァダメージ２８００！！」

　倒れているエッサの身体に一本の雷が直撃しました。直撃した瞬間にエッサは痛みと痺れで飛び跳ねてしまいました。

「ヒィヒヒヒヒ！！これは面白いな！ライトニング！ライトニング！ライトニング！………ライトニング！」

『ピィシャン！ピィシャン！サァーーーエッサ消滅。』

　エッサの苦痛の声が何度も白一色の空間に響きました。そして、何度も雷魔法を連続で喰らった影響か、最後は肉が焼けるような臭いと共にエッサは灰になって消えました。これで2回死にました。まだまだ岩田プロデューサーは楽しみ足りないようです。再びエッサをシステムを使って復元させました。

「はい、お帰り。次はサッカーだ。さっさと起きろよ！オリャー！」

『ドォフンッ強キック！』

「ごぉふうーダメージ１０５０！うが…あぁー…うわぁーー。」

　気を失った状態のエッサの横っ腹を思い切り蹴飛ばしました。強い衝撃と共に激痛がエッサの腹部を襲います。エッサの呻き声がダンジョンの中に響きました。

(ウゥッ、記憶が2回飛んでる。麻痺？睡眠？一体何の魔法を使ったんだ。全然気づけなかった。)

「そうだ！そうだ！そうだ！もっとよく考えろ！そして、恐怖しろ！絶望しろ！俺に跪いて泣いて許しを乞こえ！ヒッヒヒヒヒ、アッハハハハハ〜〜」

　最低のプロデューサーです。村人を痛ぶって楽しんでいます。そんなに村人狩りがしたいのならオルベ村に73人もいるから、俺エッサの代わりに痛ぶってください。お願いします。

　でも、それは無理な話です。プロデューサーが痛ぶりたいのはエッサ1人です。岩田は魔法の次は杖で攻撃するようです。杖をグルグル回して、杖の先端に炎属性を付加したようです。当たればジュージューと激熱です。

「今度は根性焼きだ！たっぷりと全身に俺様の愛情を焼き付けてやるぜ！ヒィーハァー！」

『ブン…ガァン！ブン…ブンブン…ヒューン…ガァン！』

　プロデューサーはグルグルと回りながらエッサに接近して来ました。杖をフラフープのように身体で回しながら、最初の一撃目はエッサのコメカミを狙い、両手剣でエッサにガードされると、流れるように二撃は足のくるぶしを狙い、三撃目・四撃目は顔の左顎を2連続で攻撃をし続けました。

(ハァハァ、クソ！素人がこんな攻撃出来る訳がない！小太り眼鏡がインチキしやがって！)

『ドォス、ジューーーダメージ３３００、左胸燃焼中！』

「ゔぁあ〜〜ゔぁあーー！！」

「いいぞ！いいじゃないか！もっと苦しめ！ほらほら！遠慮しなくていいんだぞ！」

　杖と両手剣の武術勝負でもエッサに勝ち目はありません。岩田は最高位の棒術を完全インストールしているのです。エッサのような品のない剣術ごっこが通用しないのは当たり前です。

「…フゥフゥ…ハァハァ…さっさと殺せ。俺の負けでいい。どうせ俺が勝てないように色々と準備して細工しているんだろう？」

　エッサは両手剣を投げ捨てると、両手を上げて岩田に降参しました。戦うだけ無駄な事です。

「撃てよ。俺を油断させて雷魔法で攻撃するんだろう？お前の考えてる事なんか全部筒抜けなんだよ。よし、特別サービスだ！好きなだけ攻撃させてやるから俺を殺してみろ。ほらほら、いいんだぞ？」

「ツゥ！天空より訪れし神の雷！ライトニング！……斬空乱波！……豪・昇竜斬！」

『ピィシャン！…ザァシューン……ガァシャーン！」

　トータルダメージ３７００です。白いローブにほとんどの攻撃が軽減されているようです。ここまで来ると清々しい程のクソプロデューサーです。

「遠慮しなくていいんだぞ！痛覚センサーはオフにしているから全然痛くないだから、斬っても焼いてもいい。何なら、口を開けているから、そのデカイ剣でぶっ刺してもいいぞ！俺を殺したんだろう？その願いを叶えてやろう。」

(どうせ倒せない。攻撃するだけ無駄か………だが、ムカつくコイツを1発でも多くぶっ叩けるなら、それでもいいだろう。)

『ザァンザァンザァン………ザァン通常攻撃連続12回！サァーーープロデューサー消滅。』

　エッサの連続攻撃を宣言通りに、プロデューサーは死ぬまで喰らい続けました。プロデューサーは灰になって消えました。

「ハァハァ、どういう事だ？本当に倒されたのか？ここまでイカれた奴だったとは……」

『ビィー、ゼウスの復元を開始します。………復元完了しました。ゼウスを地下迷宮19階に転送します。………転送完了しました。』

　女性の声が聞こえて来ました。岩田が用意したシステムの音声のようです。

(この声、前に聞いた事がある。まだ誰かいるのか？)

「スリーファイヤーボール！」

『ドォンドォンドォン炎の塊3発直撃！』

「ぐぅはぁーダメージ９０００！」

　エッサは黒焦げになりながらも、背後を振り返ると死んだはずの男が立っていました。

「ただいま、エッサ。今度は俺の番だな！ヒッヒヒヒヒ……」