第60話・非戦闘員。

　本に地下8階の地図は載っているので、道に迷う事はありません。エッサとロックタの2人でもボス三体を分散させる事に成功すれば倒す事も可能ですが、ボスモンスターは攻撃を避けたり、ガードしたりと通常のモンスターよりも知能と戦闘技術が高いです。予想通りの行動を取ってくれるとは限らないのです。

「いいべぇか？ボスモンスターは三体いるべぇ。首無し鎧のデュラハンは、持っている剣で攻撃するだけだべぇ。厄介なのは残りの二体だべぇ。オラ達と同じで人の姿をしているけど、モンスターなんだべぇ。この二体が、回復魔法を使うのと、攻撃魔法を使うのがいるから、回復魔法を使うボスを速攻で倒さないと長期戦になってしまうんだな。」

「つまりはデュラハンは放置して、魔法を使う二体をエッサ様と私達3人で分散して、同時に攻撃するんですね？」

　うんだぁ。通常の雑魚モンスターなら、ルナの弓矢で魔法は妨害出来ると思うんだべぇ。ただし、今回の相手はボスモンスターだべぇ。用心しないと仲間を失ってしまうかもしれないんだな。オラのサブキャラクターという将来の為に、絶対に誰も死なせたり出来ないんだな。

　本の通りに地下迷宮をクリアして、王様にランク8の武器や防具を献上すれば、エッサの将来は安泰です。サブキャラクターとして、救世主達の冒険のサポートまで出来ます。まさに夢のような未来です。

「それにしても2人は遅いですね？この辺のモンスターはほとんど倒したので、そろそろ来てくれないとやる事がありませんよ。」

　ロックタは昨日は、闘技場で試合を見ているだけの1日でした。もっと戦いたいと身体がウズウズしているようです。女性は何事も時間がかかるものです。もう少しの辛抱です。

「ロックタ、少し早いかもしれないけろ、お昼ご飯にするべぇ。ただ待つだけじゃ、時間が勿体無いべぇ。食べ終わっても来ない時は、引き返して連れて来るしかないべぇな。」

　今日のお昼ご飯はハンバーガーです。手に持って食べられるので、歩きながらでも、食事が出来ます。ダンジョンを探索する時は、おにぎり、サンドイッチ、カレーパンを食べる事がほとんどでした。

『モグモグ。モグモグ。』

　パンとパンの間に、トマトにレタスにチーズにバンバーグ2枚が入って、これで３８０Gはお買い得です。フライドポテトを追加でつけると、５００Gになります。専用のランチボックスに入れると、アイテムボックスにも入れられます。好きな時に取り出せば、熱々の料理がいつでも食べられます。

「エッサ様、私も牢獄に入れば称号を獲得出来るでしょうか？エミィ様のレベルがもう14になっているのに、私のレベルが8なのは、おかしいです。」

　その辺はルールだから仕方ないべぇ。称号はいっぱいあるみたいなんだべぇが、岩田の野郎が『それはゲームをプレイしてからのお楽しみです。』とか訳の分かんねぇ事を言ってたから、本には書いてないべぇ。とりあえず色々やってみないと分からないんだな。

「お〜い、やっと見つけたよぉ〜！はぁ〜、7階はほとんど一方通行だったからよかったけど、この森は分かれ道が多いから地図が必要だね。」

　やっとやって来ましたが、ルナだけです。エミィは足が遅いので遅れているようです。モンスターもほとんど倒したので、やられる事はないでしょうが、少し心配です。エッサはエミィを探しに行く事にしました。

　◆

「ハァハァ。ハァハァ。私は非戦闘員なのよ！体力馬鹿達と一緒に行動出来る訳ないでしょう。ちょっとは気遣ってゆっくり歩きなさいよね！」

　文句を言いながらも、エッサに渡させた杖を突きながら地下8階の森の中を進んで行きます。分かれ道のどちらを選んでもモンスターがいないので、最後の行き止まりまで進まないと、エッサ達がいる場所が分かりません。

「普通は進む道とか、地図とか用意するもんでしょう。か弱い女の子をモンスターの巣の中で迷子にするなんて、信じられない馬鹿女ね。」

　ルナは『ちょっと先に行って探して来るね！』と言って、戻って来ません。パーティーステータスを見るとHPは満タンなので、モンスターにやられた訳ではありません。行き止まりの道に進んだのなら、もう戻って来てもいいぐらいです。つまりは、エッサ達を見つけて休憩しているとしか思えません。

「あの女、私の事を忘れているわね。それとも3人でボスモンスターとかいう奴と戦っているのかしら？」

　エミィが考え事をしながら、道を進んでもいると前方からエッサが走ってやって来るのが見えました。

「はぁ〜、見つけた。お〜い、エミィ、こっちだべぇさぁ！早く来るんだべぇ。お昼ご飯を食べたら、すぐにボス戦だべぇよ。」

　エッサの予定では、7〜9階のボスモンスターをさっさと倒して、10〜12階のボスモンスターから、ランク4の武器や防具を手に入れていたはずでした。王都でランク4の武具を全員分購入すると、1人20万Gはします。ここで入手出来ればタダなので、家計が助かります。

「お願い！ちょっとでいいから、寝させて。」

　田舎では、昼ご飯を食べたら、村人はお昼寝します。エミィの体力も限界のようなので、ボス戦を前に、4人は休憩する事にしました。