第36話・幽霊船長。

　はぁはぁ。冷静になって考えないと殺されるだぁ。この狭い船内を一度も他のモンスターと遭遇しないで走るのは不可能だべぇ。それに外に出ても、船がねぇ。次に来るのは昼と夕方の2回だべぇ。

「やるなら、ここしかねぇ！この船の中で一番狭くて、他のモンスターも入って来ねぇ！」

　この場所はちょうど船長室から出てすぐの、狭い通路です。背後は広い倉庫で行き止まりです。1対1ならば有利かもしれませんが、4体に分裂されたら形成逆転です。1対4では勝ち目がありません。

　幽霊船長に剣を構えると、剣技・斬空波をMPが続く限り、使い切る作戦を取りました。

「行くどぉ、オラの全力だぁ！斬空波！斬空波！斬空波！」

　エッサの武器を含めた攻撃力の合計が180だとします。エッサのMPが172の場合は斬空波を43回使う事が出来ます。43発全弾命中するとダメージ7740前後です。幽霊船長のHPは5700です。幽霊船長が1体ならば倒し切る事は出来ますが、途中で4体に分裂します。分裂した1体1体の幽霊船長のHPは半分の2850です。途中でMPが足りなくなってしまいます。

「斬空波！斬空波！斬空波！斬空波！」

　はぁはぁはぁ。はぁはぁはぁ。腕が疲れても振り続けないと駄目だべぇ。当て続けていれば衝撃で怯んで近づけねぇべぇ！斬空波を連続で使える回数は最大43回だべぇ。MPがなくなる前に、アイテムの中にあるMP回復薬を急いで出して、飲まないといけねぇ。でも、アイテムを使う瞬間にオラが 隙だらけになるから、船長が一気に攻撃を仕掛けてくるはずだな。そこが勝負の分かれ目になるべぇ。

「ぐぅ、がぁ、このぉ！」

　エッサの予定通りに幽霊船長のHPが半分になりました。怒った船長が4体に分裂しました。壁を通り抜ける事は出来ませんが、空中に浮く事は出来ます。分裂した仲間を盾に使ったり、囮に使って、エッサに2体の幽霊船長が急接近して来ました。

「駄目だべぇ！後ろの倉庫に後退しねぇとやられるべぇ！」

　エッサは後方にバックステップしながら、斬空波を休まずに振り続けます。本に書いてある倒し方は、1体を集中攻撃して倒していき、4体いる幽霊船長を3体、2体、1体と減らす作戦です。エッサも出来る限り、1体を集中攻撃しますが、接近して来る別の3体を無視する訳にはいきません。

「駄目だべぇ！本の通りにはいかねぇ！三連突き！昇竜斬！斬空波！」

　エッサは剣を振り下ろそうとする幽霊船長を高速の三連突きと昇竜斬のコンボで怯ませると、右から襲い掛かって来る1体に斬空波をぶつけます。ゴロゴロと汚れた船内を転げ回ったり、ジャンプしたりと大忙しです。

「ひぃひぃ！こんなに激しい戦いは初めてだべぇ。でも、昨日のオラよりも明らかに速く動けているから、何とかいけるかもしれねぇ！」

『ドォス、ドォス、ドォス、ザァシューン！サァーーー。』と1体の幽霊船長が三連突きと昇竜斬のコンボで倒されました。

　残り3体だべぇ。狭い通路に戻って、斬空波で来た奴から倒して行くべぇ。ゴクゴクとMP回復薬を飲んで消費したMPを回復します。MP回復薬は1本200GでMPを30%回復してくれます。最大で15本しかアイテムとして収納出来ないので、使い切ってしまうとMPを回復手段はありません。使い所が肝心です。

『ザァン！ザァン！ザァン！サァーーー。』と2体目の幽霊船長が斬空波の集中砲火を喰らって狭い通路で倒されました。

「はぁはぁ。なんで次の奴は出て来ねえ？もしかして、オラの斬空波を警戒して出て来ねえのか？」

　いくら待っても、残りの2体が狭い通路にやって来ません。オラの作戦を理解して動かないつもりだな。だとしたら、逃げるチャンスだべぇ。でも、油断したオラを背後から襲うつもりかもしれねぇ？なら、オラが動くしかねぇな。

「この臆病者め、行くどぉ！覚悟しろぉ〜！」

　2本のMP回復薬を飲み干すと、ちょっとだけお腹が『たぷんたぷん』していますが、ここから先は回復薬を飲む余裕はありません。一気に押し切って、残りの2体を倒します。エッサは剣をしっかりと握ると、2体の幽霊船長に向かって行きました。