【ショートショート】積み木のおじさん

kurumipan

寝たきりの生活

ある日、頭を打って怪我をしてしまったKは、後遺症のためか普通の人よりも沢山寝ないとスッキリ起きれない体になってしまった。
 
とにかく日中眠たいため、仕事もままならないし日常生活を送るにもだいぶ支障が出ていた。
 
「このままずっとこんな生活を続けているのは嫌だ。寝たきりの人生になりたくない」
 
Kは自分の見えない不自由さに毎晩涙を流していた。
 
 
そんなある日、昔の友人たちが噂を聞いてきてKの家へと見舞いに来てくれた。
 
「K、頭打って後遺症患ったって聞いたけど体調は大丈夫かい?」
 
友人たちはとてもKの事を心配してくれた。
 
だがKは「大丈夫だよ。でも今は眠たくて仕方がないんだ。そっとさせてくれ」と、見舞いに来てくれる友人たちから離れるように1人で閉じこもるようになった。
 
それからと言うものの、Kは布団で寝たままになり、起きてる時は天井を見て、それ以外は寝ているという生活をずっと続けていた。
 
当然、その生活は辛くて悲しいものだった。
 
 
ある日、Kに転機が訪れる。
 
それは心配してくれた友人が紹介してくれた精神科へ行くという事だった。
 
なぜ怪我の後遺症なのに精神科へ行かなければならないのか分からなかったが、医者に自分の症状を診てもらうと、
 
「典型的なうつ病ですね。抗うつ剤を出させていただきますね」
 
そう医者に言われ、薬を処方してもらった。
 
薬を飲むようになってから、Kの体調はみるみる良くなった。
 
寝たきりになる事も少なくなり、起きている時間の方が多くなったのだ。
 
ご飯も美味しいし、本を読むのも楽しい。何不自由ない生活にKはこの上ない幸せを感じていた。
 
 
ある日、Kの親は彼にこう言った。
 
「元気になったからそろそろ働けるだろう」
 
 
そう聞いた途端、Kは働いてた頃の自分を思い出し、背筋が凍るような思いがした。
 
「もうあの時みたいに辛い思いをしたくない」
 
そう言うとKは、窓から転落して頭を打つ怪我をした。再び記憶喪失になったそうだ。

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