「拝啓、親愛なるヒカルに告ゲル」

コバヤシライタ

第五部「雨降りと嘘つき」⑥

第七章 「二人のヒカル」


-投球練習、しなくていいのか?-

しなくて良いじゃないか。もう負けるんだから。

-バシッ!-

コーチにさえたたかれたことのない僕が青木にたたかれた。

-投球練習、しなくていいのか?-

きっと僕が立ち上がるまでこれを続ける気なのだろう。まったく…。

-ひさしぶりだなぁ…、キャッチャーミットつけるの-

こんな状況でも青木はおどけてミットの付け方を忘れたとか言いながらきょろきょろしている。
そうだ。青木は小学校六年生までキャッチャーだったのだ。古田にあこがれ盗塁阻止にはきらりと光るものがあった。しかし中学校に上がったときに僕を中心にチーム編成をしていった結果、青木ヒカルは肩の強さを買われライトに変わったのだ。というか半ば僕の意志がそこには関与していたのだ。なのに青木は嫌な顔一つせず、度々僕のピンチを救ってくれたのだ。そして今も僕の事を…

―ボールの早さにびびるなよ!元キャッチャー!―

出来る限りのおどけたフレーズをもう一人のヒカルに聞こえるように叫んだ。思いっきり投げ込んだ。やはりミットは追いつくが、上手くつかめずに落としてしまう。かまわず続けた。そして4球目でしっかりキャッチできるようになった。

-こんなんじゃ、100点ぐらい取られるぞ!まだいけるだろ!-

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