「拝啓、親愛なるヒカルに告ゲル」

コバヤシライタ

第五部「雨降りと嘘つき」③

第六章 「不思議な霧の中で」

-なにボケッとしてんだよ-

青木はこんな時でさえ冷静だ。ホントだったら試合の終わった高校球児のように泣いてしまいたいはずなのに。これからの8回は代打が3人送り込まれる。今までに公式戦に一度も出てきたことのないメンバーばかりだ。監督が明言していた内容とは違い、代打は7回から送り込まれたので9回は興居島中のクリーンアップに回ってくる。しかし、津田中に決勝戦までで2点を取れたチームは準々決勝のチームだけだ。そのくらい今回の津田中の完成度は高かった。つまり2点を先制したことは、津田中に勝つためには十分すぎるくらい十分だった、はずだった。

-なのにどうして…-

今まで、全てこの日のためにやってきた。全ては津田中に入らなかったことが正しいということを証明するために。僕の気持ちなんかよく分からないくせに勝手にアパートまで準備してたお父さんを見返すために。

-なのに…-

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