「拝啓、親愛なるヒカルに告ゲル」
第四部「テノヒラトハナビラ」⑦
津田中の勝つ方法は分かっている。とにかく青木と僕の前にランナーを二塁に進める、ホントにそれだけだ。相手のエースはリトルリーグの時のライバルだからよく分かる。あいつのスライダーはどうやったって打てる気がしないが、スライダーを投げてボールになったら必ず次ぎはストレートだ。あいつは自分のミスから試合を崩れることを極端に嫌っていた。そりゃそうだ。あいつの背負うマウンドはなんせ津田中だもん。勝って当たり前のチームは勝ちに飢えるほど、勝ちを意識しないチームとやる時に決まってプレッシャーに押しつぶされる。それは自分もリトルリーグにいたから分かるのだ。常勝軍団の弱点は一見「油断」に見えるが実は違う。本当に勝って当たり前のチームは油断しない。本当の弱点は「未知」だ。強いチームほど正攻法で勝ちに来る。しかし実際は強いチームほど研究をされつくし、無名な相手ほど秘密兵器が隠れている。たとえ足し算では絶対に負けないチームも本来の試合が出来る前に27人のアウトをとれば試合は終わるのだ。今の僕で津田中に勝つために出来ることはそれだけだ。その意味でも青木というリトルリーグ未経験者の存在は必ず効果があるはず。あとは…僕がいかに最小失点で9回まで投げきるか…そんだけ。
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