「拝啓、親愛なるヒカルに告ゲル」

コバヤシライタ

第一部「星の船」⑤

「松山新聞 Go! Go! 島野ヒカル! 2008年 9月20日」

心の中では「またか」という気持ちしかない。地方リーグからプロ野球選手にのし上がった。「28歳のルーキー」島野ヒカルがまた仰天なことをしてくれた。私は彼が中学生の時から彼独特のモチベーションと異彩さに負けない完成された実力に惹かれ15年以上も追い続けているのはこの連載を読んでいる人はみなご存知のことだろうと思うので詳しく話すつもりはない。しかしもはや彼とは切っても切り離せなくなっている、「四年に一度の大濃霧」ごとの不思議な人生の方向転換は全国的にも有名なのではないだろうか。この小さな地方紙も四年に一度全国的に注目されるようになり、このことが彼の人気に拍車をかける一因となっていることは間違いない。
さて今回の「仰天」はなんと島野ヒカルが衝撃の詩集発売を果たしたことによるものなのだ。とはいっても今や「全国区」のヒカルのこの展開はこの連載が皆様に読まれる頃には既にテレビやネットでニュースになっていることだろう。私はこの噂を入手したとき、すぐに彼にメールで確認した。すると返事はあまりにもあっさりしていた。「詩集を出すとかって聞いたけどホントなの?」「はい、そうですよ。相変わらず情報が早いですねぇ」「まぁ仕事だからね。それで、なんでまたそういう流れになったわけ?」「いやぁ、霧の日にですね。ふるーいノートが見つかったんですよ。それを試しにマネージャーに頼んでおいたらとんとん拍子に。」これが彼とのメールの一部始終だ。いつでもそうなのだ。彼はアイドルという風格を微塵も感じさせず、取材陣にも人なつっこく接してくれる。その姿が全国でファンが増えている一つの要因ではあると思うが、わざとなのか偶然なのか、それとも「大濃霧」になにか関連があるのか、とにかく四年に一度の「イベント」は今回も間違いなく行われたのだ。

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