死神と歩く異世界冒険録

tantan

第24話 無料じゃない無料

「そうは言ってもですよ。やっぱりちょっと納得できないですよね……」

恐らくヨハンもミツルが言うように、その女性が女郎としてではなく徴用組織の任務の中で遊郭に身を寄せていると言うのは考えたのだろう。
だが、だからと言ってそれを許せるのかと言ったら……

(俺なら絶対許せないよな)

思わずミツルは、そんな事を思ってしまった。

「でも、ヨハンさん。さっきのアンナちゃんの話だと実技試験でしたっけ?あの魔石を集めるのって最初はなかったんですよね?」
「はい、確か……冬の最中だから……年が代わってから出来たはずです」
「それなら、みんなで抗議とかは無かったんですか?」
「もちろん、ありましたよ」
「それなら……」
「もちろん町のみんな全員でおかしいと抗議をしましたよ。そしてら教会も分かったと言うことで、学校の方は中止しようと言うことになりまして……」
「はい……?でも今、アンナちゃんは学校の問題がってことで話を……」
「はい……。学校は町の者に迷惑をかけてまで無料学校はやりたくないので、中止をすると言うことになったのですが、ですがそれだと今度は私たちが、この町で教育を受ける機会と言うのが0になってしまうんです。そうなると、それはそれで困ってしまい……それから教会の方とは何度も話し合いをした結果、ある一定の金額を納めると言うことで納得したのですが、その金額を納めることが出来ない家の者が実技試験を受けると言うことになったのです」
「えーっと、ヨハンさん。アンナちゃんは、その話し合いをしている間は学校の方はどうしていたのですか?」
「えーっと、この無料学校は入ってから卒業まで5年ほどありまして、その間に今お話しした流れがありました。アンナは、その間、普通に通っていました」
「それで、途中からお金を納めると言うことになった時どうしたんですか?」
「途中からでも、金額は変わらないと言われて、それなら最後までいてもいいよと言われたんです」
「んー…」

ミツルは、一言だけ声を発すると黙ってしまった。

と言うのも今話を聞いて彼が考えた限りどうすれば全員が納得できるような回答が見つからなかったからだ。

無料だからと入学した学校。
途中、領主のいざこざがあり無料なら経営がたち行かなくなると言い出した教会。
町民も町民で教育を受ける機会が0になるというのは危機感を感じていて、教会との交渉。
その結果、最小限のお金という和解案に達したのだろう。
元々の原因は領主が代替わりした時に寄付がストップしたことが全ての原因と言えるのかもしれないが……

(ただ、寄付って本人の善意なんだよな……
もしかしたら財政悪化とかの理由があるのかもしれないしな……
そう言えば共通通貨?専属通貨?あれも領主が絡んでるのか?
多分、領主と言うだけあって無関係ではないよな……)

そう思ったミツルは、まだ見たことがない領主に対してあまり悪くいう気になれなかった……

強いていうのであれば、アンナは無料の時に学校に通っていて、途中から有料となったはず。
そこで、有料となったときに辞めさせると言う選択をするべきだったのかもしれないが……
先程のヨハンの言葉では、どうやら彼は教育の重要性と言うのをじゅうぶんに感じているのだろう。
とすると彼女をやめさせないで続けると言う選択をしたのだろう。
とは言っても、ミツルの頭のなかでは、そのヨハンの判断が今問題となっているだろうにと言うことは言えなかった。
確かに教育が中途半端と言うのはミツルも考え方としては、スッキリとしないからだ。

「ミツルさん、何とかならないですかね?」
「何とかと言われても……、その試験を突破させる手伝いと言うことですよね?」
「まー、そういうことなんですが……」
「でも、協力するとしても俺一人では決められないことなので……」
「あー、アールヴ君も一緒ですからね……。では、とりあえず私が呼んできましょうか?」
「あー……はい……」

(とは言っても、どうやって力になればいいのか……)

ミツルは真剣に考えるあまり、ヨハンの問いかけに上の空で返事をするほどの余裕しかなかった。

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