神業(マリオネット)

tantan

2ー38★知らないからこそ

『フィリア・ヴァン・ユースティティアと申します。この度はご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございませんでした』


彼女の食事が一段落した後で、俺は彼女を洞窟の外へ連れ出し他のメンバーに会わせた。
その際には二度手間を避けたい。
なのでエルメダなど洞窟から離れた場所にいるメンバーも呼び寄せた。
アンバーとローレンを除くメンバーは若干、気まずそうに返事をしている。
そして、残りの二人はと言うと…
口を大きく開けながらパクパクと開閉させ、驚いた表情を見せている。
二人は先程のフィリアを知っているだけに、態度などの違いに驚きを見せているのだろう。
そして、二人とも髪の毛の変化にも気づいたように見える。
やっぱり、俺とフィリアだけの思い込みと言うわけではないようだ。


最初フィリアに俺だけではなく、他のみんなにも髪を確かめてもらった方がいいと言った時、彼女は渋っていた。
今回の件があって以来、どうやら対人恐怖症になりかけているのかもしれない。
というかなっていてもそれはそれでおかしくはないとは思う。
だが、なるべく早い確信を得たい今回、確認するのも知恵を絞るのも人数は多い方がと俺は考えた。
なので結構強引ではあるが、手を引っ張るように洞窟の外へ連れ出し今に至る。


『して…本題と言うのは何だ?』


驚いて言葉を失っているアンバーに代わり、エイジが俺にフィリアの用件を聞いてきた。


『はい、これは俺の独断なんですけど…実は彼女に渡そうとしていた食料を一部交換した方がいいのかなと思いまして…』
『交換?確か日持ちしやすいものを中心に渡そうと言うことだったはずだが…何故だ?こちらにあるのは日もちがしないものが殆どだぞ…アイテムボックスか、それ用の収容袋デポットがないと悪くなってしまうぞ』
『あー、そうなんですけど…ちょっと気になる変化が見られたので、彼女にはこの場で限界ギリギリまで食べてもらおうかと…』
『んー…?それでは、先ず、その変化と言うのから話してくれるか?』
『はい、フィリアさんなんですが、最初、俺とアンバー、ローレンの三人が会った時には、髪の毛が真っ白だったんですすが、今うすーくですが、クリーム色っぽい感じしませんか?』
『んー、確かに言われると単純な白ではない気はするな』


エイジのこの言葉をキッカケにして他のメンバーがフィリアの周りに集まり、髪の毛を観察しだす。


『あれ…?なんか変じゃないですか?この髪の毛…』


もっとも遠慮なくフィリアの髪の毛を触っていたトーレが声をあげた。


『どうした?』
『いやー、離れてみると全体的にクリーム色なんですけど…近くで見ると一本一本髪の状態が違うんですよね』
『えっ…どんな感じ?って言うか…トーレ…ちょっと遠慮なく触りすぎじゃないか…』
『あっ…、大丈夫ですよ。痛いわけではないので…』
『あっ…、そうなの?じゃー、トーレ、気になったとこ教えてくれると助かるんだけど…』
『はい、先ずはナカノ様よりは気品がある髪の毛なのは一目で分かったんです。それとは別と言うことですね。では皆様、これみてください』


どんどん俺に対して遠慮のない言動を重ねていくトーレを尻目に俺たちは、彼女の手に触れたフィリアの髪を見ると…
確かに彼女の言う通りに一本一本髪の状態が違うのが分かる。
どの髪の毛も白とクリーム色の二色が混ざっているのは変わらないのだが…
上と下で二色綺麗に分かれているものや細かい段差状になっているものなど様々な状態の髪が混ざっていた。


この世界にブリーチなどがあるのかは分からないが…
もしあったとしても彼女が今の状態になってから、そういったものは使っていないはず。
なので、多分これは先程の薫製肉を食べたことの影響なのだろう。


『珍しくトーレが期待に応える発言をしてくれた。ありがとう!そう、それにフィリアさんがこういう髪になったのって薫製肉を食べてからなんだよ。それでブラッドメアリーだっけ?』
『はい、これからもご期待に添えるようナカノ様を蔑んで発言させていただきます。ちなみに血塗れの宿り子伝説ブラッディメアリですね』
『あー、それ!それで確か夜になると血を求めてとかあったよね?後、フェン!確かレバーソーセージとか豚血肉と脂身の腸詰めブルートヴルストとかその辺の食材ってまだあったよね?その辺りを食べてもらえば、更に髪の状態とか良くなったりしないかなと思って、多分そういうことって宿り子の事が怖くて誰も試した人がいないでしょ?』
『あー、確かにアタルさんの言う通り、宿り子って普通は自分から消えたり、争いの種になったりとか、あまりよくない結末がほとんどですから、言うように誰も試そうなんて人はいなかったと思いますよ。量もそれなりにはありますし、そういう意見聞かされると興味もわきますからね。僕はいいですよ!』


このフェンの意見をキッカケに、俺たちはフィリアにレバーソーセージとか豚血肉と脂身の腸詰めブルートヴルストなどの食材をご馳走することにした。
ご馳走するとは言っても火を通したものを食べさせるだけなのだが…


そして、フィリアに食べさせた後で、俺たちは全員揃って信じられないものを見ることになる。


と言うのも…


そこには言葉にすることができないほどの絶世の美女がいたからだ…

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