神業(マリオネット)

tantan

1ー87★条件

テーブルの上にはサラダを中心にした数々の料理が並んでいる。
豚肉もあれば面白いなと心の中で思って探してみたのだが…
やはり見当たらなかった。
実は生野菜料理と言うのは、異世界では見かけないことが多い。
その中でも緑の葉物系野菜などは高価な食料とされている。
だが市長が用意をしてくれた料理は、緑の葉物系野菜のサラダが中心の料理。
確かに珍しい料理と言うことで、市局の料理は評判が良いと言うのが頷ける。
エルメダは普段食べたことがない料理だけに、口の中を一杯にしていた。
何か必死に喋ってはいるのだが言葉として認識できない。
アンテロも料理を楽しんでいるように見える。
種族が兎の亜人だけに、もしかすると野菜中心の食生活の方が合っているのだろうか。
とりあえずは一安心しながら、俺も食事をいただいていたのだが…
生野菜中心の料理…
サラダなんですけど…
体に良いのは納得できる。
珍しいのも分かる。
ただ味が単一的と言えば良いのか…
分かりやすく言うと口に合わない。
それぞれの料理の横には、ドレッシング的な役目の品が用意されている。
そこで目を通してみると、チーズ的なもの、バター的なもの、クリーム的なものという感じ。
説明を聞くと牛の乳、ヤギの乳、知らない獣の乳などバリエーションがあると言ってくれる。
バリエーションが豊富なのは分かるのですが…乳というのは変わらないらしい…
予想はしていたが豚の乳はないようだ。
まー、口にしたことがないので出されても困るだけなのだが…
そして料理を味わっているうちに、口の中にそれぞれの癖だけが広がってしまい違いがよくわからなくなっていた。
正直、肉が食べたいなと思いながら市長を見ると何と美味しそうなローストポークに見えることだろう!


『それでは皆様。ある程度お腹が膨れたところで提案の条件について詳しくお話ししたいのですが宜しいでしょうか?』


俺の考えを知ってか知らずか市長が話題を提供してくれた。


『あー、はい。一応、俺が代表して話を聞こうとは思いますので市長、宜しくお願いします』


料理に手が伸びなくなっていた俺としては、市長との話し合いの方がありがたかった。


『実は二日ほど前の夕方くらいにトラボンさんとフェン・ロスロー君が、ここ支局に二人で訪ねてきました』


(えっ…確かフェンと話したのって三日前くらいだったような気が…)


『それって…もしかして…』
『はい、そうです。ナカノ君には、確かトラボンさんが話していると言ってました』
『あー、あれですか…』
『はい?どれでしょうか、ナカノ様』
『あー、アンテロとエルメダには後で話すね。すいません、市長、続きをお願いします』
『はい、話の内容を伺った後で、皆様から事前に聞いた調査報告と照らし合わせました』
『それって…悪魔の石像ガーゴイルの事もですか…?』
『はい、勿論、拝見しました。そして、その悪魔の石像ガーゴイルと言うのが問題なんです』
『問題ですか?』
『はい、トラボンさんとフェン君、二人の話がないのであれば、ナカノ君の悪魔の石像ガーゴイルの件も気にも止めなかったのですが…二人の話を聞いてしまった後では老婆と悪魔の石像ガーゴイルに何らかの関係があるのではと言う者が増えてきたんです』
『まー、確かに当然出てきますよね。でもそれって…何か不都合があるんですか?イーグルとかはこれからも外壁の見回りはやると言っていたと思うんですけど…』
『問題なのはイーグルの方ではなく整備局の方なんです』
『整備局?あっ…すいません。私、ここ来たばかりなので…』
『大丈夫です。気にしないで下さい。整備局とは簡単に言うと、都市の内外にわたり生活や仕事に関する様々な基盤となる設備を管理している場所なんですけど…そこが抗議をし全ての仕事を放棄すると言ってきたんです』
『え?なんでですか?』
『この都市の外にある道路の管理もしているからです』
『あっ…、なるほど…要は外で仕事していると老婆に悪魔の石像ガーゴイルで襲われる可能性もあるからと言うことですか…』
『そう言うことです。それでナカノ君達、三名には調査隊の方に加わってもらいたいのですが…』
『『『えっ!!!』』』


突然沸いてきた明らかな災難に俺とエルメダ、アンテロの声が揃った!


『なっ…なんで、俺たちなんですか?』
『正直に言いますと都市の方では、先ずは住んでいる方々の安全を優先に考えたいのです。そこでイーグルを始めとしたこれまで外壁の見回りを主に行っているチームは、そのままにして調査隊を結成したいと考えています。そうなると調査隊に戦闘を担当できるものが回せなくなってしまいまして…』
『回せないって…他にもチームはありますよね?』
『あります。ですが、ほとんどのチームが他の商人などに破格の値段を提示されたようで…』
悪魔の石像ガーゴイルの件は外部に漏れてないんですよね?』
『漏れてないとは思います。ただ、イレギュラーのモンスターが襲ってきたと言う情報と大きな火事が発生したという情報は広まっているはずです。そうなると都市の外に用事があるものは、護衛の確保に我先にと…』
『なるほど…ん~、事情は分かりました。それで俺たちに許可証を発行してもいいということですか…そうは言っても俺たちだけで戦闘というのは厳しいと思いますよ。他にも何人かいないと…』
『もちろん、お三方だけに責任を押し付けようなどとは考えていません。他にも協力者を募っております。それに…と言ってはなんですが…もちろん謝礼の方も別に用意しております』
『『えっ?謝礼ですか?』』


エルメダとアンテロの二人がいち早く反応した。
今まで話し合いに参加しないで昼食に夢中になっていると思ったのに…。
現金なヤツということなのだろうか…


そして二人に続いて俺も言葉を続けようとした時、部屋の扉からコンコンという音が聞こえてきた。

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