神業(マリオネット)
1ー53★絶体絶命
俺とエルメダは、ただひたすらに地面から這い出てくる根の処理に追われていた。
刈れば刈った分だけ地面から根が出てくる。
全くもって切りがない。
攻撃力が強いわけではないが、対象が多すぎて行動が阻害されてしまう。
俺は苛立ちを覚えながら目線をヘンリーとラゴスの方へ向けた。
二人の周囲は依然として黒い霧のようなもので覆われている。
中の様子がどうなっているかは、まるで分からない。
だがしかし先程と比べると明らかに黒い霧は大きくなっている。
最初の黒い霧はヘンリーとラゴスの二人がどうなっているか確認できなくても、あの辺の位置なのかなと見当はつけられるくらいの大きさだったはずだ。
それが時間が経つにつれて一回り二回りと黒い霧は大きくなっている。
また黒い霧を見るとどうやら動いているようにも見えた。
俺は今までに見たことがない光景に思わず黒い霧から目を離すことができない。
ヘンリーとラゴスが中でどうなっているのか一刻も早く確かめる必要もある。
幸い、根からの攻撃は勢いのみで強さはない。
なので出来るだけの集中力を黒い霧に向けて観察してみた。
(あれ?霧がと言うか…霧の粒が動いているような…)
最初は霧全体が動いていると思った俺だが、よく見ると霧の一粒一粒が上下左右に細かく振動しているように見える。
『おい!あれって!もしかしてモンスターかよ!』
無い知恵を振り絞り俺なりに状況を分析してみたのだが…
思わず大声をあげてしまった!
『いや、多分あれはまだ違うよ!普通の虫かなんかさ!でもね!グズグズしてたらモンスターが来ると思うけどね!』
俺の大声に対して、ソフィアも大声を出して答えてくれた。
『グズグズって言っても、どうすんだよ!こっちも手いっぱいだよ!』
今の俺に普通の対応なんてしている余裕など無かった。
俺は乱暴に切り捨てるように言葉を発する。
『仕方ないね…それじゃどうにかしようかね…』
俺の大声を聞くなりソフィアが小さな声で相づちを打つように言ってきた。
恐らくだが、この言葉は氷鳥の攻撃をソフィアの盾として受けていたセアラにも聞こえてなかったはずだ。
ソフィアは言葉を発するとセアラを信頼してなのか、氷鳥との戦いの最中なのに目をつぶり出した。
そして目をつぶって大きな深呼吸を一度、精神を落ち着かせる。
持っている杖を両手でしっかりと握り氷鳥を睨み付けると…
『セアラ、面倒くさいから一気にやるよ!』
ソフィアはセアラに声をかけると、全身に変化が現れた。
杖の先に赤白い透明な熱気のようなものが現れる。
そしてその熱気はみるみるうちに大きくなり、ソフィアの全身をくまなく覆い隠すほどの大きさとなった。
『ちょっと…ソフィア…あんた、そんなに一気に魔力解放しちゃったら氷鳥どころか、この辺一帯に被害出るでしょ!』
『どうだい!鳥も根も樹も虫も一気にやれて好都合だろう!』
『何バカなこといってるの?ちょっとやめなさい!』
ソフィアの魔法をセアラが止めようとするが、セアラも氷鳥の攻撃を受けながらなので言葉で言うしかできない。
『ちょっと、ナカノさん、叔母さんがヤバイです!』
俺の横にいるエルメダが前触れなく奇声のように甲高い声をあげた。
『何?俺の方も結構危ないし、ヘンリーの方も危ないよ!』
『そうじゃなくて、叔母さんが自己犠牲魔法だよ、あれ!』
『自己犠牲魔法??えっ…?何それ…』
『自分の全魔力を一気に高めて爆発させるの!』
『えっ?ソフィアが爆発?それって…大丈夫なのか?』
『叔母さんの魔力だと私たち越えて、あっちも全部やられちゃうよ…』
『はっ?あっちって…ヘンリーとかの方?』
『うん!っていうか…多分この辺全部』
『おい!それはいくらなんでもヤバすぎんだろ…どうすんだよ!』
エルメダの必死の説明からソフィアが自爆で辺り一面を目論んでいるのが分かった。
慌てながらの説明であっても、何とかしなければいけないと言うのも分かったつもりだ。
だが、俺もエルメダも、セアラも、ヘンリーもラゴスも誰もソフィアを止める余裕など無かった。
誰もが、もうどうしようもないなと諦めかけた…
その瞬間。
上から何か降ってきた。
敵と遭遇する前に全部で4匹いると言われたので、残りまだ遭遇していない2匹の内1匹が現れて追い討ちをかけてきたのだろう。
もしかしたら2匹の両方が追い討ちをかけに来たのかもしれない。
そう思い俺は負け戦を覚悟したら途端に時間の流れがゆっくりになったように感じた。
ゆっくり過ぎていく時間の中で俺は何が落ちてくるのかを理解しようと上を向く。
落ちてくるものは長さは15cm位だろう。
直径が1~2cm位の長細いガラスの筒のようなもので中には透明な液体が入っている。
先端はコルクのようなものが詰められている。
恐らくコルクのようなものが蓋なんだろうな。
形状はまるで試験管のようだ…
はい?試験管?
モンスターが試験管を何故投げる?
死の直前になって俺の心は疑問が溢れてしまった。
と言うか敗けを覚悟して死を覚悟しているのに、手はナイフを握り根を処理している。
まだ諦めていないようだ。
何ともカッコ悪いなと思っていると頭の先から足元にまで響く声がした。
刈れば刈った分だけ地面から根が出てくる。
全くもって切りがない。
攻撃力が強いわけではないが、対象が多すぎて行動が阻害されてしまう。
俺は苛立ちを覚えながら目線をヘンリーとラゴスの方へ向けた。
二人の周囲は依然として黒い霧のようなもので覆われている。
中の様子がどうなっているかは、まるで分からない。
だがしかし先程と比べると明らかに黒い霧は大きくなっている。
最初の黒い霧はヘンリーとラゴスの二人がどうなっているか確認できなくても、あの辺の位置なのかなと見当はつけられるくらいの大きさだったはずだ。
それが時間が経つにつれて一回り二回りと黒い霧は大きくなっている。
また黒い霧を見るとどうやら動いているようにも見えた。
俺は今までに見たことがない光景に思わず黒い霧から目を離すことができない。
ヘンリーとラゴスが中でどうなっているのか一刻も早く確かめる必要もある。
幸い、根からの攻撃は勢いのみで強さはない。
なので出来るだけの集中力を黒い霧に向けて観察してみた。
(あれ?霧がと言うか…霧の粒が動いているような…)
最初は霧全体が動いていると思った俺だが、よく見ると霧の一粒一粒が上下左右に細かく振動しているように見える。
『おい!あれって!もしかしてモンスターかよ!』
無い知恵を振り絞り俺なりに状況を分析してみたのだが…
思わず大声をあげてしまった!
『いや、多分あれはまだ違うよ!普通の虫かなんかさ!でもね!グズグズしてたらモンスターが来ると思うけどね!』
俺の大声に対して、ソフィアも大声を出して答えてくれた。
『グズグズって言っても、どうすんだよ!こっちも手いっぱいだよ!』
今の俺に普通の対応なんてしている余裕など無かった。
俺は乱暴に切り捨てるように言葉を発する。
『仕方ないね…それじゃどうにかしようかね…』
俺の大声を聞くなりソフィアが小さな声で相づちを打つように言ってきた。
恐らくだが、この言葉は氷鳥の攻撃をソフィアの盾として受けていたセアラにも聞こえてなかったはずだ。
ソフィアは言葉を発するとセアラを信頼してなのか、氷鳥との戦いの最中なのに目をつぶり出した。
そして目をつぶって大きな深呼吸を一度、精神を落ち着かせる。
持っている杖を両手でしっかりと握り氷鳥を睨み付けると…
『セアラ、面倒くさいから一気にやるよ!』
ソフィアはセアラに声をかけると、全身に変化が現れた。
杖の先に赤白い透明な熱気のようなものが現れる。
そしてその熱気はみるみるうちに大きくなり、ソフィアの全身をくまなく覆い隠すほどの大きさとなった。
『ちょっと…ソフィア…あんた、そんなに一気に魔力解放しちゃったら氷鳥どころか、この辺一帯に被害出るでしょ!』
『どうだい!鳥も根も樹も虫も一気にやれて好都合だろう!』
『何バカなこといってるの?ちょっとやめなさい!』
ソフィアの魔法をセアラが止めようとするが、セアラも氷鳥の攻撃を受けながらなので言葉で言うしかできない。
『ちょっと、ナカノさん、叔母さんがヤバイです!』
俺の横にいるエルメダが前触れなく奇声のように甲高い声をあげた。
『何?俺の方も結構危ないし、ヘンリーの方も危ないよ!』
『そうじゃなくて、叔母さんが自己犠牲魔法だよ、あれ!』
『自己犠牲魔法??えっ…?何それ…』
『自分の全魔力を一気に高めて爆発させるの!』
『えっ?ソフィアが爆発?それって…大丈夫なのか?』
『叔母さんの魔力だと私たち越えて、あっちも全部やられちゃうよ…』
『はっ?あっちって…ヘンリーとかの方?』
『うん!っていうか…多分この辺全部』
『おい!それはいくらなんでもヤバすぎんだろ…どうすんだよ!』
エルメダの必死の説明からソフィアが自爆で辺り一面を目論んでいるのが分かった。
慌てながらの説明であっても、何とかしなければいけないと言うのも分かったつもりだ。
だが、俺もエルメダも、セアラも、ヘンリーもラゴスも誰もソフィアを止める余裕など無かった。
誰もが、もうどうしようもないなと諦めかけた…
その瞬間。
上から何か降ってきた。
敵と遭遇する前に全部で4匹いると言われたので、残りまだ遭遇していない2匹の内1匹が現れて追い討ちをかけてきたのだろう。
もしかしたら2匹の両方が追い討ちをかけに来たのかもしれない。
そう思い俺は負け戦を覚悟したら途端に時間の流れがゆっくりになったように感じた。
ゆっくり過ぎていく時間の中で俺は何が落ちてくるのかを理解しようと上を向く。
落ちてくるものは長さは15cm位だろう。
直径が1~2cm位の長細いガラスの筒のようなもので中には透明な液体が入っている。
先端はコルクのようなものが詰められている。
恐らくコルクのようなものが蓋なんだろうな。
形状はまるで試験管のようだ…
はい?試験管?
モンスターが試験管を何故投げる?
死の直前になって俺の心は疑問が溢れてしまった。
と言うか敗けを覚悟して死を覚悟しているのに、手はナイフを握り根を処理している。
まだ諦めていないようだ。
何ともカッコ悪いなと思っていると頭の先から足元にまで響く声がした。
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