聖玉と巫女の物語
バシュラークにて
「隊長、婚約おめでとうございます!」
ヘイワードの周りには、乾杯を求める若い騎士たちが集まっていた。
バシュラークは騎士たちの拠点となる場所で、ここで訓練や講義を受けるのだが、独身寮が併設されているので、夜ともなれば若者たちの熱気が開放された。ふだん外出が許されている時は、彼らの大半が夜の街へ繰り出しているところだが、今夜は壮行会なので、逆に妻帯者など、街へ帰る者もバシュラークにとどまっていた。
「まさかファルサ前巫女を射止めるなんて、隊長も隅に置けないですねー」
酔った若い騎士にからまれて、さすがにヘイワードも困った表情を浮かべていた。
「おい、お前ら。いくら無礼講とはいえ、いい加減にしろよ」
ヘイワードの同期のグエンが助け舟を出してくれた。彼はバシュラークの教官になっていた。過去の魔族狩りで負傷し、足をひきずっていた。
教官の出現で、若者たちは潮が引くようにヘイワードの傍からいなくなった。
「まったく」
「相変わらず恐れられてるんだな」
ヘイワードの笑顔につられてグエンも笑みを見せた。
「女遊びの常習犯だったお前も、とうとう俺らの仲間入りか」
グエンはそう言いながらも、叶わない恋をしていたヘイワードを想像し、心から良かったと思っていた。
「さて、と」
グエンは、ヘイワードの空になったグラスを奪って言った。
「特別に、六時間だけ馬の貸し出しを許可しよう。明日は外出する時間なんてないだろうし」
彼の言葉の意味を理解したヘイワードはたちまち笑顔になった。
「恩に着る」
「急げ。他の者には適当に言っておく」
「ありがとう」
ヘイワードははやる気持ちを抑えて、厩舎の方へと向かった。
ヘイワードの周りには、乾杯を求める若い騎士たちが集まっていた。
バシュラークは騎士たちの拠点となる場所で、ここで訓練や講義を受けるのだが、独身寮が併設されているので、夜ともなれば若者たちの熱気が開放された。ふだん外出が許されている時は、彼らの大半が夜の街へ繰り出しているところだが、今夜は壮行会なので、逆に妻帯者など、街へ帰る者もバシュラークにとどまっていた。
「まさかファルサ前巫女を射止めるなんて、隊長も隅に置けないですねー」
酔った若い騎士にからまれて、さすがにヘイワードも困った表情を浮かべていた。
「おい、お前ら。いくら無礼講とはいえ、いい加減にしろよ」
ヘイワードの同期のグエンが助け舟を出してくれた。彼はバシュラークの教官になっていた。過去の魔族狩りで負傷し、足をひきずっていた。
教官の出現で、若者たちは潮が引くようにヘイワードの傍からいなくなった。
「まったく」
「相変わらず恐れられてるんだな」
ヘイワードの笑顔につられてグエンも笑みを見せた。
「女遊びの常習犯だったお前も、とうとう俺らの仲間入りか」
グエンはそう言いながらも、叶わない恋をしていたヘイワードを想像し、心から良かったと思っていた。
「さて、と」
グエンは、ヘイワードの空になったグラスを奪って言った。
「特別に、六時間だけ馬の貸し出しを許可しよう。明日は外出する時間なんてないだろうし」
彼の言葉の意味を理解したヘイワードはたちまち笑顔になった。
「恩に着る」
「急げ。他の者には適当に言っておく」
「ありがとう」
ヘイワードははやる気持ちを抑えて、厩舎の方へと向かった。
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