魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
10 講義の選択
それから4人は晩飯を食べ終わって、少し今後の話をして解散となった。
もとよりこの学園に来た理由は一つ。
この学園内もしくは近くにあるであろう、魔術の遺跡の発見。そしてその魔術を入手する事だ。
その為には学園を色々見て回る時間と、見て回る権限も必要になる。
この学園は王都でも重要な教育期間だけあり、誰もが閲覧出来る訳ではない重要な文献なども置かれている。
これは王族もこの学園に通う為、それに見合った参考資料等を揃えた事が理由にあたる。
ロイド達としては別に国家の重要な情報や機密になど興味はないのだが、それらにより侵入禁止区域がある事で探索範囲が狭まる事。ひいては遺跡が見つからない事は避けたい所ではある。
さらに、学園においての行動範囲の制限は意外と多い。
教師のみ立ち入り可能なスペースや、先程言った王族やそれに近い身分のみ立ち入れる場所、生徒会などの学園においての権力を有している者のみ使えるスペースなど様々だ。
であれば、そういった者達に近付く必要性がある。
もっともそのような場所以外から遺跡が見つかるかも知れないのだが、探してから「なかったからコネを作ろう」ではどうしても時間がかかってしまう。
その為、探索可能な範囲で探す事と並行して侵入禁止スペースに入れるコネないし方法の模索を進める事になった。
それに向けた行動として、権力を持つ者と同じ講義、つまり授業を選択して接触しようと考えたのだ。
そしてその権力を持つ者とは誰だ?と考えた時、ロイドとクレアの脳裏に1人の人物が思い浮かぶ。
「生徒会長って言ってたよな、あの人?」
「ですね。たしか、アイフリードさん、だったと思います」
アイフリード生徒会長。
まずは彼女から話を聞いてみよう、という事になったのである。
「そうなの。アイフリードといえば公爵家ね。確か…ティア・アイフリード公爵令嬢、だったかしら」
「ふわぁ、偉い方なんですね」
エミリーが思い出すように言うと、ラピスが感嘆の声を上げる。
ウィンディアは他の貴族が持たない特殊な権力を許可されているとは言え、爵位でいえば伯爵にあたる。
つまり、彼女の方が上の位になる。
もとより権力にものを言わせるつもりはないが、どちらにせよその方法は使えないと言う事だ。
「とりあえずは普通にお願いしてみよか。見学の許可ください、みたいな感じで」
「そうね。それ次第でまた考えればいいでしょ」
随分楽観的な姉弟だが、これといった情報もない以上はそれ以外に何か思いつくわけでもない。
結局、学園内を探索として見て回りつつ、アイフリード生徒会長に接触する。という流れに落ち着いた。
「それにしても……」
簡単な作戦会議のような会話が一区切りつくと、エミリーは眉をひそめて口を開く。
「なんとかならないのかしら。鬱陶しいわ」
「ん?……あー、まぁウィンディアの連中よりかなり熱心な感じだわな」
その内容を察したロイドは苦笑い気味に周囲を横目で伺う。
すると、遠巻きに生徒達がこちらに視線を寄越していた。こちら、というよりは女性陣に、ではあるが。
「まぁいんじゃね?嫌われるよりは」
「……あんたが言うと反論しにくいわね…」
口ごもるエミリーや苦笑いを浮かべるクレアとラピス。
それは周囲からの好意や羨望といった視線と同じかそれ以上の熱量を持った視線――ロイドに対する嫌悪の視線を否が応でも気付いてしまうからだ。
考えるまでもなく分かる事だろう。
入学早々から良い意味で目立ち、目を惹いている女性が3人も集まり、そこに唯一混じる男子があの「恥さらし」なのだ。
周囲がそれをどう思うかは想像に難くない。
「でも聞いた感じ、『国崩し』って英雄視されてるっぽいよ?」
「だとしてもウィンディアで結構情報を制限かけたから知らない人も多いはずよ」
「まぁそうじゃないとこういう扱いにはなりませんもんね」
女性陣が色々話していると、ゴーンと鐘の音が鳴り響く。
それを皮切りに生徒達はわらわらと席を立って食堂を後にしていった。
「あれか、今の鐘って部屋に戻れ的なやつか」
「そうみたいですね。それじゃ私達も戻りましょうか」
「うん、そうしよっかぁ」
それに倣ってロイド達も食器を片付け、食堂を去った。
「明日からは講義の選択期間ですね」
「だなー。生徒会長が受ける講義も調べといたがいーな」
そんな事を話しつつ、その日は解散となった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あー、生徒会長の受ける講義、戦闘関係のは実践戦闘と水魔法みたいだわ」
「は?」
そして翌日、ロイドはティアの受ける講義を無事聞き出せていた。
「いやいやいや、なんでもう調べ終わってるんですか?!」
「いやね、俺もびっくりした」
ロイドは驚くクレアや目を丸くエミリー、ラピスに笑いながら簡単な説明をする。
寮は当然だが男子と女子に分かれている。
そして今朝3人と合流する為に寮の部屋を出て、集合場所である広場に向かうロイドに声を掛ける複数の男子生徒。
「おい恥さらし、ちょっと来いよ」
「ん?少しならいーけど」
どこかで見たような奴らだな、と思いながら頷くロイド。ちなみに昨日クレアにナンパしてきた生徒達なのだが。
生徒達もあっさり頷くロイドに思わず少し面食らいながらも、寮の裏という人気の少ないスペースへと歩いていく。
「こら君達。何をしている?」
「げっ」
「ん?昨日の子達じゃないか。いい加減にしたらどうなんだ?」
「す、すみませんっ!」
そこに現れたのはまるで昨日を再現するかのように、アイフリード生徒会長である。
この生徒3人は目を付けられてるのか?とロイドがぼんやり考えていると、その生徒達はそそくさとその場を後にしていった。
「全く。君も早く行きなさい」
「あ、はい。それよりちょっといいですかね?」
「ん?なんだい?」
登校を促すアイフリード生徒会長に頷きつつ、ロイドは切り出す。
「出来たら一緒の講義を受けたいんですけど、アイフリード生徒会長ってどの講義を受けるんですか?」
「え?」
あまりにストレートの言い方。
ロイドとしてはあまり時間もとらせれないし、遠回りに話を進める程前情報もない。
どうせ中途半端な言い回しになるならストレートに聞いてしまえ、というものだった。
「あー……」
が、さすがにこれは無理か、とロイドは言ってから反省する。
講義選択なんてものとは言え一応は個人情報。こんな聞き方で話すとは思えない。とゆーか普通警戒する。
「すみません、失礼でしーー」
「構わないよ」
「――た。……ん?」
これは一度仕切り直すか、と謝罪と訂正をしようとして、こくりと頷かれた。
聞き間違いか?と珍しくロイドが鈍い反応を見せる。
「…え?」
「構わない」
「…いいんですか?」
「問題ない。まぁ珍しい事を言ってくれたお礼も兼ねて、特別にではあるけどね」
(…珍しい?同じ講義を受けるってのがか?)
ロイドは少し気になる言葉がありつつもまぁいいやとスルー。教えてもらえるなら、と講義内容を聞いていった。
「――……ありがとうございます」
「気にしないでいい。それより、名前を聞いていいかな?」
「あ、名乗りもせずに失礼しました。ロイド・ウィンディアと申します」
「っ、君があの!?……なるほどね。私はティア・アイフリードだ。よろしく頼む」
「はい、宜しくお願いします」
今更となった自己紹介を交わす。ロイドが名乗った時に驚いたような表情を見せるが、ロイドはあえて触れずにいた。
それからすぐに登校を促され、ロイドも今度は素直に従った。
そして、エミリー達と合流したのであった。
もとよりこの学園に来た理由は一つ。
この学園内もしくは近くにあるであろう、魔術の遺跡の発見。そしてその魔術を入手する事だ。
その為には学園を色々見て回る時間と、見て回る権限も必要になる。
この学園は王都でも重要な教育期間だけあり、誰もが閲覧出来る訳ではない重要な文献なども置かれている。
これは王族もこの学園に通う為、それに見合った参考資料等を揃えた事が理由にあたる。
ロイド達としては別に国家の重要な情報や機密になど興味はないのだが、それらにより侵入禁止区域がある事で探索範囲が狭まる事。ひいては遺跡が見つからない事は避けたい所ではある。
さらに、学園においての行動範囲の制限は意外と多い。
教師のみ立ち入り可能なスペースや、先程言った王族やそれに近い身分のみ立ち入れる場所、生徒会などの学園においての権力を有している者のみ使えるスペースなど様々だ。
であれば、そういった者達に近付く必要性がある。
もっともそのような場所以外から遺跡が見つかるかも知れないのだが、探してから「なかったからコネを作ろう」ではどうしても時間がかかってしまう。
その為、探索可能な範囲で探す事と並行して侵入禁止スペースに入れるコネないし方法の模索を進める事になった。
それに向けた行動として、権力を持つ者と同じ講義、つまり授業を選択して接触しようと考えたのだ。
そしてその権力を持つ者とは誰だ?と考えた時、ロイドとクレアの脳裏に1人の人物が思い浮かぶ。
「生徒会長って言ってたよな、あの人?」
「ですね。たしか、アイフリードさん、だったと思います」
アイフリード生徒会長。
まずは彼女から話を聞いてみよう、という事になったのである。
「そうなの。アイフリードといえば公爵家ね。確か…ティア・アイフリード公爵令嬢、だったかしら」
「ふわぁ、偉い方なんですね」
エミリーが思い出すように言うと、ラピスが感嘆の声を上げる。
ウィンディアは他の貴族が持たない特殊な権力を許可されているとは言え、爵位でいえば伯爵にあたる。
つまり、彼女の方が上の位になる。
もとより権力にものを言わせるつもりはないが、どちらにせよその方法は使えないと言う事だ。
「とりあえずは普通にお願いしてみよか。見学の許可ください、みたいな感じで」
「そうね。それ次第でまた考えればいいでしょ」
随分楽観的な姉弟だが、これといった情報もない以上はそれ以外に何か思いつくわけでもない。
結局、学園内を探索として見て回りつつ、アイフリード生徒会長に接触する。という流れに落ち着いた。
「それにしても……」
簡単な作戦会議のような会話が一区切りつくと、エミリーは眉をひそめて口を開く。
「なんとかならないのかしら。鬱陶しいわ」
「ん?……あー、まぁウィンディアの連中よりかなり熱心な感じだわな」
その内容を察したロイドは苦笑い気味に周囲を横目で伺う。
すると、遠巻きに生徒達がこちらに視線を寄越していた。こちら、というよりは女性陣に、ではあるが。
「まぁいんじゃね?嫌われるよりは」
「……あんたが言うと反論しにくいわね…」
口ごもるエミリーや苦笑いを浮かべるクレアとラピス。
それは周囲からの好意や羨望といった視線と同じかそれ以上の熱量を持った視線――ロイドに対する嫌悪の視線を否が応でも気付いてしまうからだ。
考えるまでもなく分かる事だろう。
入学早々から良い意味で目立ち、目を惹いている女性が3人も集まり、そこに唯一混じる男子があの「恥さらし」なのだ。
周囲がそれをどう思うかは想像に難くない。
「でも聞いた感じ、『国崩し』って英雄視されてるっぽいよ?」
「だとしてもウィンディアで結構情報を制限かけたから知らない人も多いはずよ」
「まぁそうじゃないとこういう扱いにはなりませんもんね」
女性陣が色々話していると、ゴーンと鐘の音が鳴り響く。
それを皮切りに生徒達はわらわらと席を立って食堂を後にしていった。
「あれか、今の鐘って部屋に戻れ的なやつか」
「そうみたいですね。それじゃ私達も戻りましょうか」
「うん、そうしよっかぁ」
それに倣ってロイド達も食器を片付け、食堂を去った。
「明日からは講義の選択期間ですね」
「だなー。生徒会長が受ける講義も調べといたがいーな」
そんな事を話しつつ、その日は解散となった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あー、生徒会長の受ける講義、戦闘関係のは実践戦闘と水魔法みたいだわ」
「は?」
そして翌日、ロイドはティアの受ける講義を無事聞き出せていた。
「いやいやいや、なんでもう調べ終わってるんですか?!」
「いやね、俺もびっくりした」
ロイドは驚くクレアや目を丸くエミリー、ラピスに笑いながら簡単な説明をする。
寮は当然だが男子と女子に分かれている。
そして今朝3人と合流する為に寮の部屋を出て、集合場所である広場に向かうロイドに声を掛ける複数の男子生徒。
「おい恥さらし、ちょっと来いよ」
「ん?少しならいーけど」
どこかで見たような奴らだな、と思いながら頷くロイド。ちなみに昨日クレアにナンパしてきた生徒達なのだが。
生徒達もあっさり頷くロイドに思わず少し面食らいながらも、寮の裏という人気の少ないスペースへと歩いていく。
「こら君達。何をしている?」
「げっ」
「ん?昨日の子達じゃないか。いい加減にしたらどうなんだ?」
「す、すみませんっ!」
そこに現れたのはまるで昨日を再現するかのように、アイフリード生徒会長である。
この生徒3人は目を付けられてるのか?とロイドがぼんやり考えていると、その生徒達はそそくさとその場を後にしていった。
「全く。君も早く行きなさい」
「あ、はい。それよりちょっといいですかね?」
「ん?なんだい?」
登校を促すアイフリード生徒会長に頷きつつ、ロイドは切り出す。
「出来たら一緒の講義を受けたいんですけど、アイフリード生徒会長ってどの講義を受けるんですか?」
「え?」
あまりにストレートの言い方。
ロイドとしてはあまり時間もとらせれないし、遠回りに話を進める程前情報もない。
どうせ中途半端な言い回しになるならストレートに聞いてしまえ、というものだった。
「あー……」
が、さすがにこれは無理か、とロイドは言ってから反省する。
講義選択なんてものとは言え一応は個人情報。こんな聞き方で話すとは思えない。とゆーか普通警戒する。
「すみません、失礼でしーー」
「構わないよ」
「――た。……ん?」
これは一度仕切り直すか、と謝罪と訂正をしようとして、こくりと頷かれた。
聞き間違いか?と珍しくロイドが鈍い反応を見せる。
「…え?」
「構わない」
「…いいんですか?」
「問題ない。まぁ珍しい事を言ってくれたお礼も兼ねて、特別にではあるけどね」
(…珍しい?同じ講義を受けるってのがか?)
ロイドは少し気になる言葉がありつつもまぁいいやとスルー。教えてもらえるなら、と講義内容を聞いていった。
「――……ありがとうございます」
「気にしないでいい。それより、名前を聞いていいかな?」
「あ、名乗りもせずに失礼しました。ロイド・ウィンディアと申します」
「っ、君があの!?……なるほどね。私はティア・アイフリードだ。よろしく頼む」
「はい、宜しくお願いします」
今更となった自己紹介を交わす。ロイドが名乗った時に驚いたような表情を見せるが、ロイドはあえて触れずにいた。
それからすぐに登校を促され、ロイドも今度は素直に従った。
そして、エミリー達と合流したのであった。
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