魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
139 昔話〜願いか呪いか〜
それから俺とコウキは山と化したフェブル大森林を下りてエイルリア領へと戻った。
エイルリア領に魔王の討伐、アリアやソフィア、兵士たちの犠牲などの話を報告する。
領民達は犠牲を悲しんでくれつつも、長い戦いの終止符に喜んでいた。
笑っている領民達を見て、ソフィアの言葉を思い出す。
『こうしてみんなが笑って、誰も死なずに生きられる世界になればいいね』
「……あいつにも見せたかったな」
気付けば声に出していた言葉。
戦いは終わった。きっとこうして笑って、誰も戦いの中で理不尽な死を迎える事もなく生きていけるはずだ。
だが、それを最も見たかったあいつはもう居ない。
(……ダメだな、このままじゃ)
アリアとの約束だってある。
エイルリア領を見てあげてーー今はとにかくこの約束に力を注ごう。
それからはコウキをリーダーとして復興活動や領地発展に力を注いだ。
コウキは神力の反動か以前よりも力は落ちてはいたが、異世界の知識を使って領民達と協力しあい、大きく領地を発展させた。
俺は眠気などの問題を除けば身体強化の循環によりずっと動き続けれる。
それを使って魔物や野盗などからの護衛や土木工事などの力仕事を中心に貢献する事にした。
そして驚いた事に、領主の引退を機にエイルリアを国として立ち上げ、さらにはその初代国王にコウキが任命されたのだ。
コウキは最初遠慮してたが、領民――いや、国民からの強い支持を受けて引き受ける事になった。
それからさらに忙しい日々を過ごす。
あっという間に月日は流れ、気づけば50年近くも経っていた。
今ではエイルリア王国は立派な城も建ち、城下町も商人や国民達によって賑わっていき、今では王国という名に相応しい様相だ。
復興に目処がたってから俺はたまに世界を見て回った。
時魔術の使い手を探す為だ。
だが、これについては一向に手掛かりすら見つからずにいた。
それでもいつか見つけてやると暇を見つけては歩き回っているのだが、その間に問題が発生していた。
俺の身体の異変だ。
当然だが、コウキは年老いていく。国民達もそうだ。
以前ソフィアと寄った八百屋の夫婦も亡くなっている。
だが、俺達の見た目はあれから変わっていない。
最初は特に気にしなかったし、周りも若作りなどと言って笑っていた。
が、コウキに白髪が混じり始めた頃にはさすがに無視出来ない違和感となりーーそれは周りもそうだったようだ。
『魔王の呪い』
いつしか国民の間で流れ始めた噂だ。
それを聞いた時は俺もショックだった。単に自分の身体の異変を突きつけられた事ではなく、これまで一緒に頑張ってきた国民達に、後ろ指を刺されたという事が、だ。
その噂がコウキの耳に入ったらしく、コウキは演説や自らの足で歩き回りその噂を否定して回ってくれた。
だが、集団というのは一度出回った悪い噂、一度ついた悪いイメージというのは簡単には変わってはくれないようだ。
俺は王国から出て時の魔術師を探す時間が増えていった。
そしてそんな中、決定的な事が起こる。
コウキの年齢や国民の噂、見つからない時魔術の手掛かりといった事に焦りや注意散漫もあったのだろう。
向かった先で白竜の一撃を受けてしまい、致命的な怪我をしてしまったのだ。
自己治癒でも追いつかないであろう大怪我に、しかし俺は死ぬ事はなかった。
傷が勝手に治る、という訳ではないが、どんな致命傷にも死なずに意識や魔力、体の動きを保つ事が出来るという事に気付いたのだ。
意識や魔力があるなら自己治癒で時間をかけて治せる。
その間の攻撃も体が動く為反撃も逃走も出来る。
まるでゾンビのような体になってしまったのだ。
そして、それで全てが繋がった。
歳を取らない体。不死身の肉体。
恐らく魔王の魔術――『森羅狂乱』による影響を受けたのだろう。
あの対象の時を乱す魔術。それならば俺の肉体の時が止まるという異常事態も考えられる。
それを殴りつけた際に”抵抗”という現象が加わったとするならば。
時が止まりながらもこうして活動出来るという、中途半端な魔術の影響を受けたとするならば。
――俺は、本当の化け物になってしまったという事になる。
エイルリア領に魔王の討伐、アリアやソフィア、兵士たちの犠牲などの話を報告する。
領民達は犠牲を悲しんでくれつつも、長い戦いの終止符に喜んでいた。
笑っている領民達を見て、ソフィアの言葉を思い出す。
『こうしてみんなが笑って、誰も死なずに生きられる世界になればいいね』
「……あいつにも見せたかったな」
気付けば声に出していた言葉。
戦いは終わった。きっとこうして笑って、誰も戦いの中で理不尽な死を迎える事もなく生きていけるはずだ。
だが、それを最も見たかったあいつはもう居ない。
(……ダメだな、このままじゃ)
アリアとの約束だってある。
エイルリア領を見てあげてーー今はとにかくこの約束に力を注ごう。
それからはコウキをリーダーとして復興活動や領地発展に力を注いだ。
コウキは神力の反動か以前よりも力は落ちてはいたが、異世界の知識を使って領民達と協力しあい、大きく領地を発展させた。
俺は眠気などの問題を除けば身体強化の循環によりずっと動き続けれる。
それを使って魔物や野盗などからの護衛や土木工事などの力仕事を中心に貢献する事にした。
そして驚いた事に、領主の引退を機にエイルリアを国として立ち上げ、さらにはその初代国王にコウキが任命されたのだ。
コウキは最初遠慮してたが、領民――いや、国民からの強い支持を受けて引き受ける事になった。
それからさらに忙しい日々を過ごす。
あっという間に月日は流れ、気づけば50年近くも経っていた。
今ではエイルリア王国は立派な城も建ち、城下町も商人や国民達によって賑わっていき、今では王国という名に相応しい様相だ。
復興に目処がたってから俺はたまに世界を見て回った。
時魔術の使い手を探す為だ。
だが、これについては一向に手掛かりすら見つからずにいた。
それでもいつか見つけてやると暇を見つけては歩き回っているのだが、その間に問題が発生していた。
俺の身体の異変だ。
当然だが、コウキは年老いていく。国民達もそうだ。
以前ソフィアと寄った八百屋の夫婦も亡くなっている。
だが、俺達の見た目はあれから変わっていない。
最初は特に気にしなかったし、周りも若作りなどと言って笑っていた。
が、コウキに白髪が混じり始めた頃にはさすがに無視出来ない違和感となりーーそれは周りもそうだったようだ。
『魔王の呪い』
いつしか国民の間で流れ始めた噂だ。
それを聞いた時は俺もショックだった。単に自分の身体の異変を突きつけられた事ではなく、これまで一緒に頑張ってきた国民達に、後ろ指を刺されたという事が、だ。
その噂がコウキの耳に入ったらしく、コウキは演説や自らの足で歩き回りその噂を否定して回ってくれた。
だが、集団というのは一度出回った悪い噂、一度ついた悪いイメージというのは簡単には変わってはくれないようだ。
俺は王国から出て時の魔術師を探す時間が増えていった。
そしてそんな中、決定的な事が起こる。
コウキの年齢や国民の噂、見つからない時魔術の手掛かりといった事に焦りや注意散漫もあったのだろう。
向かった先で白竜の一撃を受けてしまい、致命的な怪我をしてしまったのだ。
自己治癒でも追いつかないであろう大怪我に、しかし俺は死ぬ事はなかった。
傷が勝手に治る、という訳ではないが、どんな致命傷にも死なずに意識や魔力、体の動きを保つ事が出来るという事に気付いたのだ。
意識や魔力があるなら自己治癒で時間をかけて治せる。
その間の攻撃も体が動く為反撃も逃走も出来る。
まるでゾンビのような体になってしまったのだ。
そして、それで全てが繋がった。
歳を取らない体。不死身の肉体。
恐らく魔王の魔術――『森羅狂乱』による影響を受けたのだろう。
あの対象の時を乱す魔術。それならば俺の肉体の時が止まるという異常事態も考えられる。
それを殴りつけた際に”抵抗”という現象が加わったとするならば。
時が止まりながらもこうして活動出来るという、中途半端な魔術の影響を受けたとするならば。
――俺は、本当の化け物になってしまったという事になる。
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