魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
132 昔話〜活躍〜
フェブル大森林の手前にでかい壁がそびえ立ってる。
防壁として大森林から出てくる魔物や魔族から防ぐ為の物だが、あまり意味はない。正直気休めみたいなもんだ。
「アリア様、お疲れ様です!」
「お疲れー。今日はまだっぽい?」
「ええ、まだ魔族達は攻めてきておりません。先程魔物が出たくらいです」
「そっか、良かった」
俺達のリーダーという立場のアリアは、城壁に控えていた兵士から報告を受けていた。
「とは言えジリ貧だよな。こっちから魔王を倒しに行っちゃダメなんかな」
「ダメじゃないが死ぬだろうな」
ぼやくコウキに止めろという意味を込めて返しておく。
魔族は一人一人の戦闘力が高い。一体につき複数の兵士であたってやっと勝てるかどうかというレベル。
それこそアリアくらいの力がないと複数で攻めてくる魔族を倒すなんて出来ない程だ。
とは言えコウキは凄まじい速度で強くなってる。
俺は剣しか使えないが、こいつは剣に加えて得意の土と、火、水、風の四大魔術を全て扱える。
今はまだ自分の力を持て余しているが、状況に合わせて使いこなせるようになれば更に戦力は向上するだろう。
「まぁそうだよな。んじゃさ、アリアから一本とれるくらいになったらいけるかな?」
「それならいけるかもな」
アリアは以前魔族の幹部を単身で討ち取った事もある。
そんなレベルのバケモノが2人も居るとなれば勝機も見えるだろう。
「魔族か出たぞぉー!!」
「っ!出たか!アリア様、すいませんが手を貸してください!」
「もちろん!ソフィアは待機ね!」
そんな事を話していると大森林から声が聞こえてきた。
魔族だ。
ソフィアに指示しつつ飛び出すアリアに置いていかれないよう、俺達も急いで駆け出す。
「6体を確認!かなり強い個体が1体居ます!」
「強いのは私が相手するわ!コウキ、レオンも1人ずつよろしく!」
「おう!」
「分かった」
走りながら指示を出すアリアに頷く俺達。
残り3体は兵士が引きつけるように指示していた。
「……身体強化」
兵士が力強く返事をしているのを聞き流しながら俺は魔力を練り上げ、身体強化を施す。
体から力が溢れ、さらには脳や感覚器官まで強化する事でまるで時間の流れが遅くなったかのように感じる。
そして大森林へと入ると同時に見えてきた魔族。確かに6体おり、伏兵などは居ないように見える。
魔族の特徴である浅黒い肌の色。強力な魔力を発する威圧感。
それを確認した俺は気を引き締めて剣を強く握る。
「やはり来たか!今日こそは殺してやるぞ貴様らぁ!」
「やってみろよ」
魔族達は俺達を視界に収めると目を見開いて叫ぶ。
唾を散らして怒鳴るその姿にだいぶ恨まれてんなと思ってしまう。
手頃な魔族を標的にして距離を詰めると、そいつも俺を標的にしたのか殺意の乗った魔力を放って威圧してきた。
その魔力をそのまま魔法に変換するかのように体の周りに黒い球を作り出していく。
「『無帰』!」
魔族の言葉に弾かれるようにその黒い球――破壊魔術『無帰』が俺に向かって殺到する。
当たればその部分が消し飛ぶ厄介な魔法だが、魔力と相殺出来る性質があるのは分かってる。
「おらよ」
俺は剣に魔力を込めて破壊魔法へと叩き込む。
すると剣に弾かれるように消し飛んでいく黒い球達。
俺は走る速度を落とす事なく全て弾いてその弾幕を抜ける。
が、これは牽制だったようだ。
「これならどうだぁ!『無明』!」
俺が距離を詰める間に詠唱していたのか、魔族から黒い靄のようなものが溢れ出す。
これ俺の苦手なやつだ、と内心げんなりする。
あれは不定形な靄のくせに当たれば破壊されるという代物で、靄のように捉えにくいから剣だと対応しにくい。
範囲攻撃で消し飛ばせればいいんだけど、そんな便利な剣技は俺にはない。
「めんどくさい……『部分強化』」
迫る靄は眼前に迫っている。
俺は剣を持つ右手に部分強化を施すと、速度を落とす事なく靄へと突っ込む。
「はっははは!よし、銀髪を討ち取ったぞ!」
その光景に魔族は高笑い。うるせぇよ。
「次は金髪の悪魔をーーっ!?」
こんなんで倒せると思うなよ。
俺は靄を突っ切ってアリアへと向かおうとする魔族に斬りかかる。
目を見開いて驚いてる魔族に思い切り剣を振り下ろした。
剣を横向きに寝かせて、だ。
――ごんっ!!
「ふんぐぅっ!?」
目ん玉飛び出したんじゃないかという衝撃を受けた魔族は地面に頭から突き刺さる。
動かない。どうやら気絶したみたいだ。
「よし、次」
振り返って他の魔族達を見る。
コウキもあと少しで一体倒しそうだ。俺と変わらない時間で討ち取ろうとしているとか、成長しすぎだ、もうじき追いつかれるどころか追い抜かれかねない。
そしてアリア。
「………」
何やら強い個体とか言っていたが、もうその姿を見えない。
むしろ残る3体の姿さえ見当たらない。
言葉もないとはこの事か。結局4体とも倒したようだ。
「さすが…」
考えるより先に口から称賛の言葉が溢れた。
頼りになるリーダーだ。
その視線に気付かれたか、アリアと目が合うとこちらに近寄ってくる。
「レオン見てたよ。無明を全部斬り飛ばすなんて強くなったね!」
「おう。まぁお前に言われても嫌味にしか聞こえんがな」
割と短時間で仕留めたつもりだったが、それより先に4体倒した上にこちらの戦闘を見ている余裕まであったようだ。
「…ところで、やっぱりトドメは刺さないの?」
「……あぁ、無力化したんだし別に殺す必要はないだろ」
いつもの質問にいつもの返事をする。
「そっか……あ、コウキも倒せたみたいだね」
「だな。とりあえず合流するか」
言葉を呑み込むような、口にし辛い表情を浮かべたアリアは話を逸らすようにコウキへと向かう。
それに頷いて俺も後を追った。
防壁として大森林から出てくる魔物や魔族から防ぐ為の物だが、あまり意味はない。正直気休めみたいなもんだ。
「アリア様、お疲れ様です!」
「お疲れー。今日はまだっぽい?」
「ええ、まだ魔族達は攻めてきておりません。先程魔物が出たくらいです」
「そっか、良かった」
俺達のリーダーという立場のアリアは、城壁に控えていた兵士から報告を受けていた。
「とは言えジリ貧だよな。こっちから魔王を倒しに行っちゃダメなんかな」
「ダメじゃないが死ぬだろうな」
ぼやくコウキに止めろという意味を込めて返しておく。
魔族は一人一人の戦闘力が高い。一体につき複数の兵士であたってやっと勝てるかどうかというレベル。
それこそアリアくらいの力がないと複数で攻めてくる魔族を倒すなんて出来ない程だ。
とは言えコウキは凄まじい速度で強くなってる。
俺は剣しか使えないが、こいつは剣に加えて得意の土と、火、水、風の四大魔術を全て扱える。
今はまだ自分の力を持て余しているが、状況に合わせて使いこなせるようになれば更に戦力は向上するだろう。
「まぁそうだよな。んじゃさ、アリアから一本とれるくらいになったらいけるかな?」
「それならいけるかもな」
アリアは以前魔族の幹部を単身で討ち取った事もある。
そんなレベルのバケモノが2人も居るとなれば勝機も見えるだろう。
「魔族か出たぞぉー!!」
「っ!出たか!アリア様、すいませんが手を貸してください!」
「もちろん!ソフィアは待機ね!」
そんな事を話していると大森林から声が聞こえてきた。
魔族だ。
ソフィアに指示しつつ飛び出すアリアに置いていかれないよう、俺達も急いで駆け出す。
「6体を確認!かなり強い個体が1体居ます!」
「強いのは私が相手するわ!コウキ、レオンも1人ずつよろしく!」
「おう!」
「分かった」
走りながら指示を出すアリアに頷く俺達。
残り3体は兵士が引きつけるように指示していた。
「……身体強化」
兵士が力強く返事をしているのを聞き流しながら俺は魔力を練り上げ、身体強化を施す。
体から力が溢れ、さらには脳や感覚器官まで強化する事でまるで時間の流れが遅くなったかのように感じる。
そして大森林へと入ると同時に見えてきた魔族。確かに6体おり、伏兵などは居ないように見える。
魔族の特徴である浅黒い肌の色。強力な魔力を発する威圧感。
それを確認した俺は気を引き締めて剣を強く握る。
「やはり来たか!今日こそは殺してやるぞ貴様らぁ!」
「やってみろよ」
魔族達は俺達を視界に収めると目を見開いて叫ぶ。
唾を散らして怒鳴るその姿にだいぶ恨まれてんなと思ってしまう。
手頃な魔族を標的にして距離を詰めると、そいつも俺を標的にしたのか殺意の乗った魔力を放って威圧してきた。
その魔力をそのまま魔法に変換するかのように体の周りに黒い球を作り出していく。
「『無帰』!」
魔族の言葉に弾かれるようにその黒い球――破壊魔術『無帰』が俺に向かって殺到する。
当たればその部分が消し飛ぶ厄介な魔法だが、魔力と相殺出来る性質があるのは分かってる。
「おらよ」
俺は剣に魔力を込めて破壊魔法へと叩き込む。
すると剣に弾かれるように消し飛んでいく黒い球達。
俺は走る速度を落とす事なく全て弾いてその弾幕を抜ける。
が、これは牽制だったようだ。
「これならどうだぁ!『無明』!」
俺が距離を詰める間に詠唱していたのか、魔族から黒い靄のようなものが溢れ出す。
これ俺の苦手なやつだ、と内心げんなりする。
あれは不定形な靄のくせに当たれば破壊されるという代物で、靄のように捉えにくいから剣だと対応しにくい。
範囲攻撃で消し飛ばせればいいんだけど、そんな便利な剣技は俺にはない。
「めんどくさい……『部分強化』」
迫る靄は眼前に迫っている。
俺は剣を持つ右手に部分強化を施すと、速度を落とす事なく靄へと突っ込む。
「はっははは!よし、銀髪を討ち取ったぞ!」
その光景に魔族は高笑い。うるせぇよ。
「次は金髪の悪魔をーーっ!?」
こんなんで倒せると思うなよ。
俺は靄を突っ切ってアリアへと向かおうとする魔族に斬りかかる。
目を見開いて驚いてる魔族に思い切り剣を振り下ろした。
剣を横向きに寝かせて、だ。
――ごんっ!!
「ふんぐぅっ!?」
目ん玉飛び出したんじゃないかという衝撃を受けた魔族は地面に頭から突き刺さる。
動かない。どうやら気絶したみたいだ。
「よし、次」
振り返って他の魔族達を見る。
コウキもあと少しで一体倒しそうだ。俺と変わらない時間で討ち取ろうとしているとか、成長しすぎだ、もうじき追いつかれるどころか追い抜かれかねない。
そしてアリア。
「………」
何やら強い個体とか言っていたが、もうその姿を見えない。
むしろ残る3体の姿さえ見当たらない。
言葉もないとはこの事か。結局4体とも倒したようだ。
「さすが…」
考えるより先に口から称賛の言葉が溢れた。
頼りになるリーダーだ。
その視線に気付かれたか、アリアと目が合うとこちらに近寄ってくる。
「レオン見てたよ。無明を全部斬り飛ばすなんて強くなったね!」
「おう。まぁお前に言われても嫌味にしか聞こえんがな」
割と短時間で仕留めたつもりだったが、それより先に4体倒した上にこちらの戦闘を見ている余裕まであったようだ。
「…ところで、やっぱりトドメは刺さないの?」
「……あぁ、無力化したんだし別に殺す必要はないだろ」
いつもの質問にいつもの返事をする。
「そっか……あ、コウキも倒せたみたいだね」
「だな。とりあえず合流するか」
言葉を呑み込むような、口にし辛い表情を浮かべたアリアは話を逸らすようにコウキへと向かう。
それに頷いて俺も後を追った。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
3087
-
-
353
-
-
35
-
-
1
-
-
2265
-
-
238
-
-
59
-
-
15254
-
-
1168
コメント