魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
124 帰宅、そして
「ただいまー」
「あら、おかえりなさい。早かったわね」
ベルの本屋を出たロイド達は領を見て回りつつウィンディア家に帰宅し、シルビアがそれを出迎えた。
「なんか道場行ったら予定が一気に消化出来たというか…」
「そうなの?フィンクもそわそわしてたし良かったんじゃないかしら」
「ロイド、あんたも準備しておきなさいよ。フィンク兄さんやる気満々よ」
リビングに向かいながら話しているとそのリビングで椅子に座っていたエミリーも会話に混じる。
ロイドがリビングを見回すと、ローゼは寝ており、テーブルにルーガスとレオンの姿もあった。
「その兄さんは?」
「裏庭じゃない?それよりあんた…」
ロイドの質問に答えつつエミリーはジト目でロイドを見据える。
「ん?」
「なんでラピス連れてきてんのよ?」
「お邪魔してますっ!私も見学したくって…ダメですか?」
ここに来てやっと挨拶するラピス。
ロイドは気付いてなかったがずっと緊張したように固まっていたラピス。もっとも、今も緊張しているのか動きが固いが。
「ダメじゃないけど…これからフィンク兄さんとやるってのに余裕ね」
肩をすくめるエミリーにロイドは苦笑いを浮かべる。
「余裕なんてある訳ないって……まぁでも緊張しすぎんのも嫌だし、いつも通りやるけど」
「それを余裕って言うのよ」
さらに呆れた様子のエミリーにロイドは頬をかいて目線を泳がせる。
するとレオンとルーガスがこちらに足を進めてきた。
「余裕があるのは構わんが、フィンクはこの1年でまた強くなってるぞ」
「おいロイド、ルーガスの子なんぞに負けてる場合じゃない。分かってるな」
何やら張り合うかのような雰囲気を見せる2人。
なんだか2人とも珍しい雰囲気だが、しかしだからといってどうしたんだなどと気軽に聞けない雰囲気でもある。
「……お互いこの一年育ててきた2人のどっちが強いかって張り合ってたわよ」
そんなロイドの心情を察したエミリーが小声でロイドに耳打ちする。
ロイドは溜息を我慢できなかった。
「はぁ〜……まぁそのへんは気にせず素直に楽しむようにするわ」
「それがいいわ。とは言えあんたがどんだけ強くなったか知らないけど、フィンク兄さんはもう異常なレベルよ。怪我には気をつけなさい」
「ありがとな」
お互いが耳打ちするような至近距離で話すロイドとエミリー。
その会話を聞いてか聞かずか何か言おうとするルーガスとレオンーーより早く、クレアとラピスが動いた。
「近くないですかっ!?」
「ろ、ロイドくんっ!?」
ロイドとエミリーに割って入るように飛び出す2人。
ロイドとエミリーは2人とも「え、そう?」という雰囲気で突然飛び出してきた2人に困惑している。
「うぅ〜…先輩にいつの間にかたくさん女の子がついてます…」
唸るクレアに首を傾げるロイド。
だが考えても分からないと判断したのか、切り替えたように深呼吸を一つ。
「ならまぁいっちょ兄さんと遊んでくるわ」
「いってらっしゃい。といっても皆んな見に行くと思うけど」
エミリーはロイドの背中を軽く叩きつつ返す。
その様子にむぅっと膨れたクレアが続くようにロイドにしがみつく。
「おわっ…と、なんだいきなり」
「先輩、頑張ってくださいね!」
「ロイドくん、頑張ってね」
腕にしがみつくようにするクレアと、何やら行き場のない手を宙に泳がせているラピスがロイドに声援を送る。
「ありがと、どーせなら勝ちたいしな」
それをロイドは目線だけ向けて受け取りつつ、足を庭へと進める。
「勝ちたいじゃなく勝て、クソガキ」
「怪我には気をつけろよロイド」
「ふふっ、凍死しなない範囲で楽しむのよ?」
「はーい」
レオンの激励や両親の心配の言葉も頂戴しておく。何気にシルビアが一番過激な気がする。
そして扉を開けると、そこには既にフィンクが立っていた。
「ってあれ?待たせちまった?」
「いや、僕も今来た所だよ」
「嘘つけ。何してたんだよ」
「ははっ、最近運動不足だったからちょっと慣らしてたんだ」
「おいおい、何おっさんみたいな事言ってんだよ」
緊張感もない普段通りの兄弟の会話。
だが、ふと会話が切れた瞬間。
――ごぉ…
2人から溢れるように練り上げられた魔力が圧力を伴い庭に広がる。
「ん?早速か」
ロイドに追随するように出てきた面々を叩く魔力の波に、しかし平然と観戦の体勢をとる。
ラピスだけは少し気圧されるように体を硬直させたが、しかしエミリーがそれをほぐすように背中を軽く叩いていた。
「あ…ありがとうございます」
ラピスの礼に目線と微笑みだけで返すエミリー。
横で見ていたクレアが「イケメン…」と呟いていた。
エミリーはすぐに視線を戻す。が、その目線は2人ではない。
それをなんとなく追いかけたラピスは、広い庭の端にいる人影に気付く。
「ベルさんとラルフさん…師匠とお父さんも…」
「豪華なギャラリーね」
呟くように人影を確認するラピスにエミリーがさらりと感想を述べる。
「なんですか…またすごい強そうな人達が…」
同じく気付いたクレアが呟く。
ベルとラルフも強いのは気付いていたが、しかしこうも実力者が多いのは異常だと呟くクレアに、これまたエミリーが告げる。
「ウィンディアはそういう場所なのよ。まぁその中でも強いのがあの人達なんだけどね」
「そうなんですね…」
感嘆とも驚愕ともとれる表情で返事をするクレアに、エミリーは言葉を続ける。
「そんな人達でも気になるみたいね、あの2人は。フィンク兄さんはともかく、1年前まで恥さらしなんて呼ばれていたロイドも、ね」
まるで小馬鹿にするようなセリフにもとれるが、しかしエミリーの表情は隠し切れない喜びか見える。
「…それより、いつまで睨み合ってるのかしらね。早く始めなさい、よっと」
その笑顔を見られたのが気恥ずかしかったのか、エミリーは誤魔化すように拍手するかのように手を強く叩く。
パンッ、という音が庭に鳴り響く。
無造作に放たれたその音に弾かれるように、ロイドとフィンクは同時に動き出した。
「あら、おかえりなさい。早かったわね」
ベルの本屋を出たロイド達は領を見て回りつつウィンディア家に帰宅し、シルビアがそれを出迎えた。
「なんか道場行ったら予定が一気に消化出来たというか…」
「そうなの?フィンクもそわそわしてたし良かったんじゃないかしら」
「ロイド、あんたも準備しておきなさいよ。フィンク兄さんやる気満々よ」
リビングに向かいながら話しているとそのリビングで椅子に座っていたエミリーも会話に混じる。
ロイドがリビングを見回すと、ローゼは寝ており、テーブルにルーガスとレオンの姿もあった。
「その兄さんは?」
「裏庭じゃない?それよりあんた…」
ロイドの質問に答えつつエミリーはジト目でロイドを見据える。
「ん?」
「なんでラピス連れてきてんのよ?」
「お邪魔してますっ!私も見学したくって…ダメですか?」
ここに来てやっと挨拶するラピス。
ロイドは気付いてなかったがずっと緊張したように固まっていたラピス。もっとも、今も緊張しているのか動きが固いが。
「ダメじゃないけど…これからフィンク兄さんとやるってのに余裕ね」
肩をすくめるエミリーにロイドは苦笑いを浮かべる。
「余裕なんてある訳ないって……まぁでも緊張しすぎんのも嫌だし、いつも通りやるけど」
「それを余裕って言うのよ」
さらに呆れた様子のエミリーにロイドは頬をかいて目線を泳がせる。
するとレオンとルーガスがこちらに足を進めてきた。
「余裕があるのは構わんが、フィンクはこの1年でまた強くなってるぞ」
「おいロイド、ルーガスの子なんぞに負けてる場合じゃない。分かってるな」
何やら張り合うかのような雰囲気を見せる2人。
なんだか2人とも珍しい雰囲気だが、しかしだからといってどうしたんだなどと気軽に聞けない雰囲気でもある。
「……お互いこの一年育ててきた2人のどっちが強いかって張り合ってたわよ」
そんなロイドの心情を察したエミリーが小声でロイドに耳打ちする。
ロイドは溜息を我慢できなかった。
「はぁ〜……まぁそのへんは気にせず素直に楽しむようにするわ」
「それがいいわ。とは言えあんたがどんだけ強くなったか知らないけど、フィンク兄さんはもう異常なレベルよ。怪我には気をつけなさい」
「ありがとな」
お互いが耳打ちするような至近距離で話すロイドとエミリー。
その会話を聞いてか聞かずか何か言おうとするルーガスとレオンーーより早く、クレアとラピスが動いた。
「近くないですかっ!?」
「ろ、ロイドくんっ!?」
ロイドとエミリーに割って入るように飛び出す2人。
ロイドとエミリーは2人とも「え、そう?」という雰囲気で突然飛び出してきた2人に困惑している。
「うぅ〜…先輩にいつの間にかたくさん女の子がついてます…」
唸るクレアに首を傾げるロイド。
だが考えても分からないと判断したのか、切り替えたように深呼吸を一つ。
「ならまぁいっちょ兄さんと遊んでくるわ」
「いってらっしゃい。といっても皆んな見に行くと思うけど」
エミリーはロイドの背中を軽く叩きつつ返す。
その様子にむぅっと膨れたクレアが続くようにロイドにしがみつく。
「おわっ…と、なんだいきなり」
「先輩、頑張ってくださいね!」
「ロイドくん、頑張ってね」
腕にしがみつくようにするクレアと、何やら行き場のない手を宙に泳がせているラピスがロイドに声援を送る。
「ありがと、どーせなら勝ちたいしな」
それをロイドは目線だけ向けて受け取りつつ、足を庭へと進める。
「勝ちたいじゃなく勝て、クソガキ」
「怪我には気をつけろよロイド」
「ふふっ、凍死しなない範囲で楽しむのよ?」
「はーい」
レオンの激励や両親の心配の言葉も頂戴しておく。何気にシルビアが一番過激な気がする。
そして扉を開けると、そこには既にフィンクが立っていた。
「ってあれ?待たせちまった?」
「いや、僕も今来た所だよ」
「嘘つけ。何してたんだよ」
「ははっ、最近運動不足だったからちょっと慣らしてたんだ」
「おいおい、何おっさんみたいな事言ってんだよ」
緊張感もない普段通りの兄弟の会話。
だが、ふと会話が切れた瞬間。
――ごぉ…
2人から溢れるように練り上げられた魔力が圧力を伴い庭に広がる。
「ん?早速か」
ロイドに追随するように出てきた面々を叩く魔力の波に、しかし平然と観戦の体勢をとる。
ラピスだけは少し気圧されるように体を硬直させたが、しかしエミリーがそれをほぐすように背中を軽く叩いていた。
「あ…ありがとうございます」
ラピスの礼に目線と微笑みだけで返すエミリー。
横で見ていたクレアが「イケメン…」と呟いていた。
エミリーはすぐに視線を戻す。が、その目線は2人ではない。
それをなんとなく追いかけたラピスは、広い庭の端にいる人影に気付く。
「ベルさんとラルフさん…師匠とお父さんも…」
「豪華なギャラリーね」
呟くように人影を確認するラピスにエミリーがさらりと感想を述べる。
「なんですか…またすごい強そうな人達が…」
同じく気付いたクレアが呟く。
ベルとラルフも強いのは気付いていたが、しかしこうも実力者が多いのは異常だと呟くクレアに、これまたエミリーが告げる。
「ウィンディアはそういう場所なのよ。まぁその中でも強いのがあの人達なんだけどね」
「そうなんですね…」
感嘆とも驚愕ともとれる表情で返事をするクレアに、エミリーは言葉を続ける。
「そんな人達でも気になるみたいね、あの2人は。フィンク兄さんはともかく、1年前まで恥さらしなんて呼ばれていたロイドも、ね」
まるで小馬鹿にするようなセリフにもとれるが、しかしエミリーの表情は隠し切れない喜びか見える。
「…それより、いつまで睨み合ってるのかしらね。早く始めなさい、よっと」
その笑顔を見られたのが気恥ずかしかったのか、エミリーは誤魔化すように拍手するかのように手を強く叩く。
パンッ、という音が庭に鳴り響く。
無造作に放たれたその音に弾かれるように、ロイドとフィンクは同時に動き出した。
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