魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
97 ギラン敗北
地下通路の天井を切り裂き、悪魔の頭に叩きつけられる巨大戦斧。
悪魔の頭を打ち付けてなお余りある勢いはそのまま地面へと向かい、悪魔の頭ごと叩きつけられた。
地面は砕け、余波は遠く離れた革命軍にも届く程。キースも踏ん張りはしたものの吹き飛ばされてしまった。
「はぁ、はぁ…!どうだ化け物がぁ!」
それにより体力も魔力もほぼ尽きたギランが叫ぶ。
久しぶりの相棒を握りしめたまま崩れ落ちるように肩膝をついた。
その相棒たる戦斧。
魔法具でもあるそれは、金属魔法の属性魔力により質量、硬度が増すという物だ。
ちなみに特殊な金属と魔法陣により可能な芸当らしいのだが、当のギランも詳しくは理解していない。
そんなギランや、昔から見ていたキースはじめ革命軍メンバーがこの戦斧について理解している事はひとつ。
とにかく破壊力がえげつない、という事である。
使い方やタイミング次第では味方にさえ危害が及ぶ為、集団戦では滅多に使わない程の破壊力を有するがーー今回はそれに救われた。
「っつう…、相変わらずとんでもない威力ですね……」
「おぉよ。久しぶりに使ったけど、相変わらず制御が難しいわこれ」
立ち上がって歩み寄るキースに、ギランは溜息まじりに笑ってみせた。
ギランが魔力コントロールが苦手という訳ではないのだが、戦斧の魔法具には増幅の魔法陣が入っているのかコントロールを超えて威力を高める節がある。
おかげで実力以上の威力を出す事が出来るのだが。
「まぁ今回に関しちゃ助かったわ。このまま帝城でも使わせてもらおうかね」
「そうですね。囮として十分すぎる派手さは出せますね」
戦斧を担ぎながら歩き出すギランとキース。
キースは後方に下がっている革命群メンバー達に行くぞと合図をしようとしてーー
「ーーやるじゃねェか」
仄暗い声に振り返った。
「っ!マジかよおい!」
「嘘でしょう…?」
予想外にして最悪の事態に2人は驚愕する。
その2人の目の前でゆっくりと立ち上がる黒い影。
「今のは効いたぜェ……」
先程までとは違い体を叩くような大声ではないが、まるで堪えているかのような声音はどうしようもなく不気味であった。
悪魔は腕を振り上げるでもなく、右手をこちらに向かって翳している。
そして魔力感知の有無関係なしに伝わるような、高密度の魔力を右手に集めているのが分かった。
「死ね」
「っ、おおおおぉぉおおっ!」
背筋が凍るような悪寒。
咄嗟にギランは戦斧を地面に突き刺して魔力を込める。
残り少ない魔力ではあるものの戦斧の力を借りて強固な金属壁を生み出してそれを盾とした。
「……え?」
気付けばギランは壁に寄りかかっていた。
何が起きた?と、周囲を見回せばキースも同じように壁に寄りかかるようにしてぐったりしており、恐らく意識はないように見える。
周辺には金属片が散乱していた。
(……あぁ、壁ごと吹き飛ばされたのか……)
そう理解した時には目の前が黒い影に覆われる。
見上げてみると、やはりというべきか、そこには悪魔が立っていた。
「トドメだァ」
勝利の余韻も昂る感情もない、ただ部屋に出たしつこく逃げ回る虫をやっと退治出来るといった程度の無感情さで悪魔は右手を振り下ろす。
もう魔力も体力も残ってないギランは、その迫る黒い腕をただ見る事しか出来なかった。
――ドゴンッ!
鈍い衝突音。
しかし、ギランの視界には先程までとは違い、黒だけではない色が混じる。
「うるさい。のんびり散歩も出来ないだろうが」
「てめェは…!?」
銀が、揺れていた。
悪魔の頭を打ち付けてなお余りある勢いはそのまま地面へと向かい、悪魔の頭ごと叩きつけられた。
地面は砕け、余波は遠く離れた革命軍にも届く程。キースも踏ん張りはしたものの吹き飛ばされてしまった。
「はぁ、はぁ…!どうだ化け物がぁ!」
それにより体力も魔力もほぼ尽きたギランが叫ぶ。
久しぶりの相棒を握りしめたまま崩れ落ちるように肩膝をついた。
その相棒たる戦斧。
魔法具でもあるそれは、金属魔法の属性魔力により質量、硬度が増すという物だ。
ちなみに特殊な金属と魔法陣により可能な芸当らしいのだが、当のギランも詳しくは理解していない。
そんなギランや、昔から見ていたキースはじめ革命軍メンバーがこの戦斧について理解している事はひとつ。
とにかく破壊力がえげつない、という事である。
使い方やタイミング次第では味方にさえ危害が及ぶ為、集団戦では滅多に使わない程の破壊力を有するがーー今回はそれに救われた。
「っつう…、相変わらずとんでもない威力ですね……」
「おぉよ。久しぶりに使ったけど、相変わらず制御が難しいわこれ」
立ち上がって歩み寄るキースに、ギランは溜息まじりに笑ってみせた。
ギランが魔力コントロールが苦手という訳ではないのだが、戦斧の魔法具には増幅の魔法陣が入っているのかコントロールを超えて威力を高める節がある。
おかげで実力以上の威力を出す事が出来るのだが。
「まぁ今回に関しちゃ助かったわ。このまま帝城でも使わせてもらおうかね」
「そうですね。囮として十分すぎる派手さは出せますね」
戦斧を担ぎながら歩き出すギランとキース。
キースは後方に下がっている革命群メンバー達に行くぞと合図をしようとしてーー
「ーーやるじゃねェか」
仄暗い声に振り返った。
「っ!マジかよおい!」
「嘘でしょう…?」
予想外にして最悪の事態に2人は驚愕する。
その2人の目の前でゆっくりと立ち上がる黒い影。
「今のは効いたぜェ……」
先程までとは違い体を叩くような大声ではないが、まるで堪えているかのような声音はどうしようもなく不気味であった。
悪魔は腕を振り上げるでもなく、右手をこちらに向かって翳している。
そして魔力感知の有無関係なしに伝わるような、高密度の魔力を右手に集めているのが分かった。
「死ね」
「っ、おおおおぉぉおおっ!」
背筋が凍るような悪寒。
咄嗟にギランは戦斧を地面に突き刺して魔力を込める。
残り少ない魔力ではあるものの戦斧の力を借りて強固な金属壁を生み出してそれを盾とした。
「……え?」
気付けばギランは壁に寄りかかっていた。
何が起きた?と、周囲を見回せばキースも同じように壁に寄りかかるようにしてぐったりしており、恐らく意識はないように見える。
周辺には金属片が散乱していた。
(……あぁ、壁ごと吹き飛ばされたのか……)
そう理解した時には目の前が黒い影に覆われる。
見上げてみると、やはりというべきか、そこには悪魔が立っていた。
「トドメだァ」
勝利の余韻も昂る感情もない、ただ部屋に出たしつこく逃げ回る虫をやっと退治出来るといった程度の無感情さで悪魔は右手を振り下ろす。
もう魔力も体力も残ってないギランは、その迫る黒い腕をただ見る事しか出来なかった。
――ドゴンッ!
鈍い衝突音。
しかし、ギランの視界には先程までとは違い、黒だけではない色が混じる。
「うるさい。のんびり散歩も出来ないだろうが」
「てめェは…!?」
銀が、揺れていた。
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