魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
92 邂逅
ロイドは風と共に帝城の最上階へと突入した。
兵士達の姿もなく、また一瞬見た帝城入り口よりも明らかに華美な内装や調度品。
明らかに位の高い者達の階、といった感じだ。
事実そうである。
この階は王族と一部の使用人や兵士が立ち入る事が出来る場所である。
ここに来るには、一部しか知らない抜け道以外だと複雑な順路を進まなければならなかった。
そうとは知らず外から突入したロイド。ラッキー今の内に、程度に考えてすぐに風をこの階全体に放つ。
風の魔術により精度は低いながらも風による探知を可能としたロイド。――十数秒の後、目当てと思われる気配を見つけた。
はやる気持ちを抑える事なく弾かれるように駆け出す。
目的の部屋の扉にたどり着き、勢い良く扉を開けた。
「如月っ!」
そこには男女が1人ずつ立っていた。
女性は男性に給仕をしている様子で、今は男性の傍に設置されている机にあるカップに紅茶を入れているようだ。
男性は茶色の髪と茶色の瞳を持つ16〜18歳くらいの少年だ。
手入れの行き届いた髪や服装は彼が明らかに良い暮らしをしている事を物語る。
しかし、ロイドには彼の事は見えていなかった。
視界に収まるのは女性の方。
見た目こそ大きく変わっているが、彼女こそが全然においてのロイドーー否、黒川涼の後輩である如月愛その人であると、不思議とロイドは見た瞬間に理解出来た。
レオンと同じ銀色の髪。
だがレオンとは違い光を弾くような、またはそれそのものが光り輝いているかのような美しい銀色はこんな状況でさえなければ見惚れる事だろう。
しかし、その銀が映えるような紅い瞳はまるで生気という光を宿していない。
心がここにないかのような、そもそも無くなってしまったかのようなそれ。
明らかに正気の様子にはない。
そんな彼女を見て、そこでやっとロイドは横に立つ少年に敵意を込めて目線を移した。
「お前、如月に何したんだ?」
「ふむ、バタバタとみっともない少年だな。それにキサラギ?誰のことだ?」
ロイドが目線を向けるまでの間に紅茶に手を伸ばして飲んでいた彼は、カップを口からから離して問い返す。
「そこの女だよ。お前が何かしたんだろ?」
「ふん?彼女の名前はクレアなのだがね」
演技じみた、あるいはキザな挙動や口調。
それがロイドの神経を逆撫でするが、まだだと堪える。
「まぁいい、彼女には給仕をさせている。見たら分からないか?」
「ちげぇよ」
ロイドの口調が崩れ始める。
怒りはとうに限界に近いが、しかしまだ聞く事があると必死に抑える。
「どう見ても洗脳かなんかされてんだろうが。それをやったのはお前かって聞いてんだよ」
「ふっ、ふふふっ」
ロイドはいよいよ魔力を高め始める。
悟られないように静かに、されど濃密な魔力をゆっくりと。
「ハハハハハ!そう、僕だよ!邪魔だったエルフの集落、その姫は僕のものになったんだ!」
「性格は生意気で気に入らなかったが、容姿は素晴らしいからね!僕のスキルで洗脳して、今では従順な給仕だ!」
「しかもその功績で僕の時期皇帝は確実となった!何もかも上手くいったよ!その副賞が彼女というワケだ!」
「クレアは君の知り合いかい!?残念だったね!彼女はもうこれからずっとこの僕、時期皇帝のジルバの下僕だよ!ハハハハハ!」
「もういい」
一瞬、ジルバの視界がブレた。
暴風と呼ぶのも生温い、そこにある全てを吹き飛ばし破壊するかのような風が視界に映るもの全てを揺らしたのだ。
「もう黙れ」
歪んだ視界が戻った時にはロイドの姿はなく、気付けば後ろから声がして。
――ドンッ!!!
短くも重たい轟音とともに、自らの身体が吹き飛んだ事に気付いた。
兵士達の姿もなく、また一瞬見た帝城入り口よりも明らかに華美な内装や調度品。
明らかに位の高い者達の階、といった感じだ。
事実そうである。
この階は王族と一部の使用人や兵士が立ち入る事が出来る場所である。
ここに来るには、一部しか知らない抜け道以外だと複雑な順路を進まなければならなかった。
そうとは知らず外から突入したロイド。ラッキー今の内に、程度に考えてすぐに風をこの階全体に放つ。
風の魔術により精度は低いながらも風による探知を可能としたロイド。――十数秒の後、目当てと思われる気配を見つけた。
はやる気持ちを抑える事なく弾かれるように駆け出す。
目的の部屋の扉にたどり着き、勢い良く扉を開けた。
「如月っ!」
そこには男女が1人ずつ立っていた。
女性は男性に給仕をしている様子で、今は男性の傍に設置されている机にあるカップに紅茶を入れているようだ。
男性は茶色の髪と茶色の瞳を持つ16〜18歳くらいの少年だ。
手入れの行き届いた髪や服装は彼が明らかに良い暮らしをしている事を物語る。
しかし、ロイドには彼の事は見えていなかった。
視界に収まるのは女性の方。
見た目こそ大きく変わっているが、彼女こそが全然においてのロイドーー否、黒川涼の後輩である如月愛その人であると、不思議とロイドは見た瞬間に理解出来た。
レオンと同じ銀色の髪。
だがレオンとは違い光を弾くような、またはそれそのものが光り輝いているかのような美しい銀色はこんな状況でさえなければ見惚れる事だろう。
しかし、その銀が映えるような紅い瞳はまるで生気という光を宿していない。
心がここにないかのような、そもそも無くなってしまったかのようなそれ。
明らかに正気の様子にはない。
そんな彼女を見て、そこでやっとロイドは横に立つ少年に敵意を込めて目線を移した。
「お前、如月に何したんだ?」
「ふむ、バタバタとみっともない少年だな。それにキサラギ?誰のことだ?」
ロイドが目線を向けるまでの間に紅茶に手を伸ばして飲んでいた彼は、カップを口からから離して問い返す。
「そこの女だよ。お前が何かしたんだろ?」
「ふん?彼女の名前はクレアなのだがね」
演技じみた、あるいはキザな挙動や口調。
それがロイドの神経を逆撫でするが、まだだと堪える。
「まぁいい、彼女には給仕をさせている。見たら分からないか?」
「ちげぇよ」
ロイドの口調が崩れ始める。
怒りはとうに限界に近いが、しかしまだ聞く事があると必死に抑える。
「どう見ても洗脳かなんかされてんだろうが。それをやったのはお前かって聞いてんだよ」
「ふっ、ふふふっ」
ロイドはいよいよ魔力を高め始める。
悟られないように静かに、されど濃密な魔力をゆっくりと。
「ハハハハハ!そう、僕だよ!邪魔だったエルフの集落、その姫は僕のものになったんだ!」
「性格は生意気で気に入らなかったが、容姿は素晴らしいからね!僕のスキルで洗脳して、今では従順な給仕だ!」
「しかもその功績で僕の時期皇帝は確実となった!何もかも上手くいったよ!その副賞が彼女というワケだ!」
「クレアは君の知り合いかい!?残念だったね!彼女はもうこれからずっとこの僕、時期皇帝のジルバの下僕だよ!ハハハハハ!」
「もういい」
一瞬、ジルバの視界がブレた。
暴風と呼ぶのも生温い、そこにある全てを吹き飛ばし破壊するかのような風が視界に映るもの全てを揺らしたのだ。
「もう黙れ」
歪んだ視界が戻った時にはロイドの姿はなく、気付けば後ろから声がして。
――ドンッ!!!
短くも重たい轟音とともに、自らの身体が吹き飛んだ事に気付いた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
37
-
-
159
-
-
755
-
-
2
-
-
34
-
-
1978
-
-
353
-
-
111
-
-
549
コメント