魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
69 ゴーレム2
暗い、真っ暗な空間にロイドは居た。
(……どこだここ?)
妙にはっきりとしない意識の中、ロイドはぼんやりと考える。
なんでこんな所に居る?先程までゴーレムと戦っていたはず。
そこまで考え、そして自分かゴーレムの攻撃をモロに受けた事を思い出した。
(……え?…まさか、死んだ…?え、マジ?)
自らの悪い癖――攻めに徹しすぎて防御が疎かになる事を、レオンに散々注意され続けていたのが功を奏したか、ギリギリのタイミングで身体硬化を発動させはした。
だがあの豪腕である。
咄嗟に発動した身体硬化など突き抜けて致命傷を受けてもおかしくはない。
そう思うと背筋が凍るような感覚と共に自分の現状に不安を覚えた。
――せ……い……て…
マジ?うわ、嘘、死んだの?マジで?と混乱しまくるロイドの耳に、小さな声が届く。
――せん…い…た……て
いや待ってうっさいよそれどころじゃないんよ今っ!と混乱に苛立ちを混ぜつつも、暗闇の中だとどうしても聴覚が働くのか自ずと耳をその声に傾けていた。
こうして聞くと全く聞き覚えのない声だった。まさか天からのお声が掛かっているのか?
いくら天国行きが決まった善人とは言えまだこの年では行きたくない!と自己評価高めに混乱するロイド。
――せんぱい、助けて!
最後に、妙にくっきりと聞こえた声に、何故かロイドは一気に冷静になった。
やはり、聞き覚えのない声。
だが何故だろう、ある人物が脳裏に浮かぶ。
(――如月?)
そう脳内で呟いた瞬間――全身に強烈な痛みが走った。
「いってぇええ!」
あまりの痛みに思わず跳ね起きるロイド。
はっとして辺りを見回すとゴーレムがこちらに歩いてきているのが見えた。
反射的に立ち上がるロイド。だが、そこで気付く。
(っつぅ……!あー、なるほど。意識とんでたなこりゃ……)
見た感じ時間にすれば長くはないだろうが、意識を失っていたようである。
攻撃を受けた左腕は骨が折れたのか上手く動かない。
左脚も強く打ったのか力が入りにくいし、転がった際に打ったのか全身痛い。
だが、動けない程ではない。
咄嗟に防御した事によりどうにか致命傷は避ける事が出来たようだ。
ゴーレムも確実にトドメを刺す為か、遠距離攻撃ではなくあまり速くない歩みで近寄ってきている事が幸運だった。
意識がない内に岩の砲弾を浴びていれば正直即死だったろう。
(ったく、俺の自己治癒じゃ左腕は無理だな……)
もはや痛みを通り越して麻痺しているような感覚になっている。
だがかえってそれが良かったのか、冷静に分析する事が出来た。
立ち上がったロイドを見たゴーレムは敵対者と再認識して排除行動を再び開始する。
遠距離の攻撃はパターン化されているのか、先程までと同じように両腕を振り上げ、地面に叩きつけて岩の弾丸を発射する。
「っ……!」
ロイドも同じように横に飛び退いて回避するも、痛めた左脚に走る激痛に歯を食いしばる。
(こりゃ長期戦になるときついな……どうする?)
ロイドは自らに問い掛ける。
魔力は先程の風の一撃と身体硬化を強制的に解除された事で明らかに目減りしている。
ゴーレムに傷を入れる程の攻撃となると精々あと2発程度だろうか。
しかし、あの分厚い装甲を破壊するとなると時間が掛かり、その間に迎撃される。
ならば、一瞬で破壊するだけの攻撃を仕掛けるか、ヒットアンドアウェイで攻めるしかない。
そして魔力残量や怪我からヒットアンドアウェイは現実的ではない。
つまり一撃で破壊するしかないのだが…
(さっきのでもあれくらいしか効いてないしな…)
ロイドは左脚の痛みを堪えつつゴーレムを中心に円を描くように走りながら、ゴーレムの脚部に目をやる。
大きく削れた様子はあるがその太い脚の半分以上は残っており、今も平然と歩いている様子を見る限り戦闘に支障をきたす程のダメージは無さそうだった。
(どうする…一撃の威力を上げる方法は……)
身体強化?いや先程以上の強化は現状望めない。
風の魔術?先程以上に魔力を溜めれば威力は上がるだろうが、大きな差は見込めない。
一瞬で破壊するのは厳しいだろう。
(くそ、そもそも風じゃ硬いもんを壊すのは無理だろ……ん?)
そこまで考えてふと気付く。
父ルーガスは風を以て最強と呼ばれるまでになった。
ではなぜ威力に欠ける風の魔術でそれが出来た?
(訓練で兄さんの氷を風で防いだり破壊したりしていたし……普通無理だよな)
あまりに父の強さという印象が際立ってそんな当たり前の事さえ失念していたが、あんな真似は普通出来ない。
それを可能にしていた方法が必ずある。
ロイドは飛来する岩を躱しながらも考える。
質量が軽い風で何故あの威力を出せた?
(質量……ってここは魔法の世界だし、魔力でどうにかなるのか?……んー?もしかして?)
ロイドは岩を転がりながら回避してゴーレムに目を向ける。
インプットされた行動しかとらないのか、同じ攻撃しかしてこない為回避はどうにか出来ているが、そろそろ左脚の痛みも限界に近い。
確信のない思い付きをぶっつけ本番は正直不安ではあるが、何度も試行錯誤する余裕はない。
そう判断したロイドは短剣を強く握り締める。
(やるしかねーんだけど、外れだったら死ぬかもな……やばいめっちゃ怖いわ…)
これで駄目なら打つ手はない。
最悪反撃されれば次は防げないだろう。そう思うとどうしても恐怖にかられる。
重たくなってきている脚が更に重くなったように感じられた。
身体が強張っているのが自覚出来る程に、自らが恐怖している事が分かる。
(けどまぁ、ここで死ぬ訳にもいかんしな)
帰ると約束した。
まだやらなければならない事がたくさんある。
約束を違える事は誰より自分が許せない。
(っしゃ!賭けるしかない、気張れよ俺!!)
ロイドは恐怖をそこに捨て去るように駆け出した。
痛みを訴える左脚を無視し、残る魔力を振り絞りながら。
(……どこだここ?)
妙にはっきりとしない意識の中、ロイドはぼんやりと考える。
なんでこんな所に居る?先程までゴーレムと戦っていたはず。
そこまで考え、そして自分かゴーレムの攻撃をモロに受けた事を思い出した。
(……え?…まさか、死んだ…?え、マジ?)
自らの悪い癖――攻めに徹しすぎて防御が疎かになる事を、レオンに散々注意され続けていたのが功を奏したか、ギリギリのタイミングで身体硬化を発動させはした。
だがあの豪腕である。
咄嗟に発動した身体硬化など突き抜けて致命傷を受けてもおかしくはない。
そう思うと背筋が凍るような感覚と共に自分の現状に不安を覚えた。
――せ……い……て…
マジ?うわ、嘘、死んだの?マジで?と混乱しまくるロイドの耳に、小さな声が届く。
――せん…い…た……て
いや待ってうっさいよそれどころじゃないんよ今っ!と混乱に苛立ちを混ぜつつも、暗闇の中だとどうしても聴覚が働くのか自ずと耳をその声に傾けていた。
こうして聞くと全く聞き覚えのない声だった。まさか天からのお声が掛かっているのか?
いくら天国行きが決まった善人とは言えまだこの年では行きたくない!と自己評価高めに混乱するロイド。
――せんぱい、助けて!
最後に、妙にくっきりと聞こえた声に、何故かロイドは一気に冷静になった。
やはり、聞き覚えのない声。
だが何故だろう、ある人物が脳裏に浮かぶ。
(――如月?)
そう脳内で呟いた瞬間――全身に強烈な痛みが走った。
「いってぇええ!」
あまりの痛みに思わず跳ね起きるロイド。
はっとして辺りを見回すとゴーレムがこちらに歩いてきているのが見えた。
反射的に立ち上がるロイド。だが、そこで気付く。
(っつぅ……!あー、なるほど。意識とんでたなこりゃ……)
見た感じ時間にすれば長くはないだろうが、意識を失っていたようである。
攻撃を受けた左腕は骨が折れたのか上手く動かない。
左脚も強く打ったのか力が入りにくいし、転がった際に打ったのか全身痛い。
だが、動けない程ではない。
咄嗟に防御した事によりどうにか致命傷は避ける事が出来たようだ。
ゴーレムも確実にトドメを刺す為か、遠距離攻撃ではなくあまり速くない歩みで近寄ってきている事が幸運だった。
意識がない内に岩の砲弾を浴びていれば正直即死だったろう。
(ったく、俺の自己治癒じゃ左腕は無理だな……)
もはや痛みを通り越して麻痺しているような感覚になっている。
だがかえってそれが良かったのか、冷静に分析する事が出来た。
立ち上がったロイドを見たゴーレムは敵対者と再認識して排除行動を再び開始する。
遠距離の攻撃はパターン化されているのか、先程までと同じように両腕を振り上げ、地面に叩きつけて岩の弾丸を発射する。
「っ……!」
ロイドも同じように横に飛び退いて回避するも、痛めた左脚に走る激痛に歯を食いしばる。
(こりゃ長期戦になるときついな……どうする?)
ロイドは自らに問い掛ける。
魔力は先程の風の一撃と身体硬化を強制的に解除された事で明らかに目減りしている。
ゴーレムに傷を入れる程の攻撃となると精々あと2発程度だろうか。
しかし、あの分厚い装甲を破壊するとなると時間が掛かり、その間に迎撃される。
ならば、一瞬で破壊するだけの攻撃を仕掛けるか、ヒットアンドアウェイで攻めるしかない。
そして魔力残量や怪我からヒットアンドアウェイは現実的ではない。
つまり一撃で破壊するしかないのだが…
(さっきのでもあれくらいしか効いてないしな…)
ロイドは左脚の痛みを堪えつつゴーレムを中心に円を描くように走りながら、ゴーレムの脚部に目をやる。
大きく削れた様子はあるがその太い脚の半分以上は残っており、今も平然と歩いている様子を見る限り戦闘に支障をきたす程のダメージは無さそうだった。
(どうする…一撃の威力を上げる方法は……)
身体強化?いや先程以上の強化は現状望めない。
風の魔術?先程以上に魔力を溜めれば威力は上がるだろうが、大きな差は見込めない。
一瞬で破壊するのは厳しいだろう。
(くそ、そもそも風じゃ硬いもんを壊すのは無理だろ……ん?)
そこまで考えてふと気付く。
父ルーガスは風を以て最強と呼ばれるまでになった。
ではなぜ威力に欠ける風の魔術でそれが出来た?
(訓練で兄さんの氷を風で防いだり破壊したりしていたし……普通無理だよな)
あまりに父の強さという印象が際立ってそんな当たり前の事さえ失念していたが、あんな真似は普通出来ない。
それを可能にしていた方法が必ずある。
ロイドは飛来する岩を躱しながらも考える。
質量が軽い風で何故あの威力を出せた?
(質量……ってここは魔法の世界だし、魔力でどうにかなるのか?……んー?もしかして?)
ロイドは岩を転がりながら回避してゴーレムに目を向ける。
インプットされた行動しかとらないのか、同じ攻撃しかしてこない為回避はどうにか出来ているが、そろそろ左脚の痛みも限界に近い。
確信のない思い付きをぶっつけ本番は正直不安ではあるが、何度も試行錯誤する余裕はない。
そう判断したロイドは短剣を強く握り締める。
(やるしかねーんだけど、外れだったら死ぬかもな……やばいめっちゃ怖いわ…)
これで駄目なら打つ手はない。
最悪反撃されれば次は防げないだろう。そう思うとどうしても恐怖にかられる。
重たくなってきている脚が更に重くなったように感じられた。
身体が強張っているのが自覚出来る程に、自らが恐怖している事が分かる。
(けどまぁ、ここで死ぬ訳にもいかんしな)
帰ると約束した。
まだやらなければならない事がたくさんある。
約束を違える事は誰より自分が許せない。
(っしゃ!賭けるしかない、気張れよ俺!!)
ロイドは恐怖をそこに捨て去るように駆け出した。
痛みを訴える左脚を無視し、残る魔力を振り絞りながら。
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