魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
67 遺跡
その後、魔力(神力?)の限界らしくすぐにアリアは繋いでいた空間を切った。
レオンはやっと静かになったと肩を竦めていたが、あれだけ楽しく話しているのを見た後では強がりにしか見えない。
「さて、現状空間魔術は訓練どうこうのレベルじゃないし、遺跡に行ってくるわ、ツンデレじじい」
「そうだな、それが無難だろう。それよりなんだツンデレって」
「んじゃさくっと行って帰ってくるわ!」
レオンの訝し気な表情を浮かべた質問を無視し、ロイドは歩き出す。
「このガキが…帰ってきたら教えてもらうからな。早くしろよ」
レオンの言葉に励ましの色が見えて、ロイドは思わず振り返り、笑う。
やっぱツンデレじゃねーか、と内心呟くロイドは、しかし言葉は返さず、すぐに踵を返して遺跡へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
仮の拠点としている場所から歩いてすぐ。
クレバスのような大地の裂け目の淵に立つロイド。
覗き込むと、よほど深いのか奥が暗くて見えない。
「これを降りろと」
嘆息混じりにロイドは頭に布で固定した懐中電灯――明かりを灯す魔術具に魔力を通す。
かなり強い光を放つものの、奥は真っ暗なままだ。
なんとなく、足元の小石を蹴り落としてみる。
すると、15秒程して微かに石が砕ける音が耳を震わせる。
「………」
落ちたら死ぬ。
そう思い冷や汗を浮かべつつロイドはロープ付きフックを強く握り締めた。
それから数十分後、どうにかロイドは底まで辿り着いた。
フックを突き刺してロープの長さの限界まで降りていき、そこで短剣を壁に突き刺して足場にしてフックを回収する。
フックはロープを硬化させて持ち上げるようにすれば簡単に引き抜けた。
その繰り返しでとうとう降り切ったのだが、あまりに本能的に恐怖を煽る高所や不安定な足場、暗闇により精神的疲労は大きかった。
「疲れた……休みたい…」
思わず1人愚痴るロイドだが、休みは後回しになりそうだった。
「グルル…」
唸り声のような声に顔を向ける。
懐中電灯に照らされたそこには緑色の毛を持つ狼のような魔物が数匹居た。
「上にいる美味い肉の狼に似てるけど、毛色が違うな。まぁ味は似たようなもんだろ」
舌舐めずりしながら右手で短剣を構えるロイド。
普段調達の際によく狙うその魔物の毛色は黒色だが、強さ的にも味的にもロイドにとっておいしい相手だったりした。
ついでにこれも試すか、とフック付きロープを左手に持つ。
そして警戒するように距離を保ったままの狼達、その1匹目掛けて魔力を込めたフックを投げつけた。
「ガウッ!」
狼は素早い動きでフックを躱した。
それを見たロイドはすぐに手元のロープを強く引っ張る。
「ギャアッ!?」
狼の後頭部からフックが冗談のように抵抗なく突き刺さる。
狼の断末魔の悲鳴を聞きながら、ロイドはロープに魔力を流して左に振り抜く。
「ぬっ、りゃぁあ!」
結構な負荷が掛かるが、身体強化を強めて無理矢理振り回した。
ロープは硬化されており、長い鉄パイプのような状態のそれが横薙ぎに狼達に迫る。
狼達は跳ぶなり伏せるなりでロープを避ける。
だが、それが狙いだったロイドはその隙を逃さない。
「ふっ!」
ロイドは素早く短剣を右に振って風の刃を飛ばす。
空中で身動きがとれない狼達は次々と体を斬られて絶命していった。
「グルルァ!」
地に伏せていた狼が敵討ちと言わんばかりに飛びかかってくる。
左右の腕を振りきった体勢のロイドは反撃が間に合わない。
「よっと!」
しかしロイドは体を後ろに倒すようにして攻撃を躱し、さらに倒れる勢いを加えた右脚を思い切り振り上げる。
「ギャウッ」
その蹴りで後方に弧を描くように蹴り飛ばされた狼は背中から着地した。
慌てて狼が立ち上がった頃にはロイドはすでに体勢を整えており、無言で振り下ろされた短剣から放たれる風刃により首が落ちる。
その後は数も減った狼達に勝ち目はなく、危なげなくロイドは狼の数を減らしていき、そして全滅させた。
「なんか、上のやつより弱かったよーな…」
狼達の死体を集めながら呟く。
遺跡内に食料があるかわからない以上、肉は無駄に出来ない。
集めた狼を解体して袋に詰めながら、ロイドは疑問に思う。
それもすぐに終わり、袋に肉を詰めたまま背負う。
まぁ弱いなら楽だしいいか、とロイドは気にせず歩き出した。
一本道だ、とレオンから聞いた通り、周りに高い壁に囲まれた一本道を進むと、他の魔物には出会う事なく遺跡に辿り着いた。
「これが遺跡か……」
前世の神殿を彷彿とさせる造りの建造物。
石造りのそれは、しかし所々崩れており、建物としての機能はほとんどないようなレベルになっている。
ロイドは知る由もないが、この建造物は現代の物ではない。
かろうじて残っている部分を見ると、石の繋ぎ目は無く、表面も磨かれたように美しい。
古代、魔術が一般的に使われていた時代に腕のある土の魔術師が拵えたものだ。
また、長い年月にも耐えられるよう魔力で強化もされている。
実は現代の考古学者などからすれば涎が出る程貴重な物だったりするのだが、ロイドは勿論知識も興味もない。
さくっと入り口らしき所に足を進める。
そして、建物の中に足を踏み入れた瞬間だった。
「なっ…!」
足元が崩れ落ちる。
慌ててフック付きロープを投げて先程まで居た床に突き刺す。が、
「うそぉっ?!」
そこも老朽化していたのか、あっさりと砕けて崩れ落ち、ロイドは成す術もなくそのまま暗闇へと落下していってしまった。
レオンはやっと静かになったと肩を竦めていたが、あれだけ楽しく話しているのを見た後では強がりにしか見えない。
「さて、現状空間魔術は訓練どうこうのレベルじゃないし、遺跡に行ってくるわ、ツンデレじじい」
「そうだな、それが無難だろう。それよりなんだツンデレって」
「んじゃさくっと行って帰ってくるわ!」
レオンの訝し気な表情を浮かべた質問を無視し、ロイドは歩き出す。
「このガキが…帰ってきたら教えてもらうからな。早くしろよ」
レオンの言葉に励ましの色が見えて、ロイドは思わず振り返り、笑う。
やっぱツンデレじゃねーか、と内心呟くロイドは、しかし言葉は返さず、すぐに踵を返して遺跡へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
仮の拠点としている場所から歩いてすぐ。
クレバスのような大地の裂け目の淵に立つロイド。
覗き込むと、よほど深いのか奥が暗くて見えない。
「これを降りろと」
嘆息混じりにロイドは頭に布で固定した懐中電灯――明かりを灯す魔術具に魔力を通す。
かなり強い光を放つものの、奥は真っ暗なままだ。
なんとなく、足元の小石を蹴り落としてみる。
すると、15秒程して微かに石が砕ける音が耳を震わせる。
「………」
落ちたら死ぬ。
そう思い冷や汗を浮かべつつロイドはロープ付きフックを強く握り締めた。
それから数十分後、どうにかロイドは底まで辿り着いた。
フックを突き刺してロープの長さの限界まで降りていき、そこで短剣を壁に突き刺して足場にしてフックを回収する。
フックはロープを硬化させて持ち上げるようにすれば簡単に引き抜けた。
その繰り返しでとうとう降り切ったのだが、あまりに本能的に恐怖を煽る高所や不安定な足場、暗闇により精神的疲労は大きかった。
「疲れた……休みたい…」
思わず1人愚痴るロイドだが、休みは後回しになりそうだった。
「グルル…」
唸り声のような声に顔を向ける。
懐中電灯に照らされたそこには緑色の毛を持つ狼のような魔物が数匹居た。
「上にいる美味い肉の狼に似てるけど、毛色が違うな。まぁ味は似たようなもんだろ」
舌舐めずりしながら右手で短剣を構えるロイド。
普段調達の際によく狙うその魔物の毛色は黒色だが、強さ的にも味的にもロイドにとっておいしい相手だったりした。
ついでにこれも試すか、とフック付きロープを左手に持つ。
そして警戒するように距離を保ったままの狼達、その1匹目掛けて魔力を込めたフックを投げつけた。
「ガウッ!」
狼は素早い動きでフックを躱した。
それを見たロイドはすぐに手元のロープを強く引っ張る。
「ギャアッ!?」
狼の後頭部からフックが冗談のように抵抗なく突き刺さる。
狼の断末魔の悲鳴を聞きながら、ロイドはロープに魔力を流して左に振り抜く。
「ぬっ、りゃぁあ!」
結構な負荷が掛かるが、身体強化を強めて無理矢理振り回した。
ロープは硬化されており、長い鉄パイプのような状態のそれが横薙ぎに狼達に迫る。
狼達は跳ぶなり伏せるなりでロープを避ける。
だが、それが狙いだったロイドはその隙を逃さない。
「ふっ!」
ロイドは素早く短剣を右に振って風の刃を飛ばす。
空中で身動きがとれない狼達は次々と体を斬られて絶命していった。
「グルルァ!」
地に伏せていた狼が敵討ちと言わんばかりに飛びかかってくる。
左右の腕を振りきった体勢のロイドは反撃が間に合わない。
「よっと!」
しかしロイドは体を後ろに倒すようにして攻撃を躱し、さらに倒れる勢いを加えた右脚を思い切り振り上げる。
「ギャウッ」
その蹴りで後方に弧を描くように蹴り飛ばされた狼は背中から着地した。
慌てて狼が立ち上がった頃にはロイドはすでに体勢を整えており、無言で振り下ろされた短剣から放たれる風刃により首が落ちる。
その後は数も減った狼達に勝ち目はなく、危なげなくロイドは狼の数を減らしていき、そして全滅させた。
「なんか、上のやつより弱かったよーな…」
狼達の死体を集めながら呟く。
遺跡内に食料があるかわからない以上、肉は無駄に出来ない。
集めた狼を解体して袋に詰めながら、ロイドは疑問に思う。
それもすぐに終わり、袋に肉を詰めたまま背負う。
まぁ弱いなら楽だしいいか、とロイドは気にせず歩き出した。
一本道だ、とレオンから聞いた通り、周りに高い壁に囲まれた一本道を進むと、他の魔物には出会う事なく遺跡に辿り着いた。
「これが遺跡か……」
前世の神殿を彷彿とさせる造りの建造物。
石造りのそれは、しかし所々崩れており、建物としての機能はほとんどないようなレベルになっている。
ロイドは知る由もないが、この建造物は現代の物ではない。
かろうじて残っている部分を見ると、石の繋ぎ目は無く、表面も磨かれたように美しい。
古代、魔術が一般的に使われていた時代に腕のある土の魔術師が拵えたものだ。
また、長い年月にも耐えられるよう魔力で強化もされている。
実は現代の考古学者などからすれば涎が出る程貴重な物だったりするのだが、ロイドは勿論知識も興味もない。
さくっと入り口らしき所に足を進める。
そして、建物の中に足を踏み入れた瞬間だった。
「なっ…!」
足元が崩れ落ちる。
慌ててフック付きロープを投げて先程まで居た床に突き刺す。が、
「うそぉっ?!」
そこも老朽化していたのか、あっさりと砕けて崩れ落ち、ロイドは成す術もなくそのまま暗闇へと落下していってしまった。
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