魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
47 黒竜現る
ラルフは剣についた血を払い鞘へと納め、振り返る。
「よーし終わったぞ。帰るか!」
「早かったじゃないかい、少しは休ませな」
「お疲れです、先生」
「俺の護衛いらなかったね。完封してたし」
「どうだかな。結局”破剣”に頼っちまったし、まだまだだわ」
そんな会話をしながら盗賊アジト跡地を後にする一行。
「グォオオオオオオオオーー」
そんな一行の耳に、低い唸るような咆哮が鳴り響く。
「えぇ〜…」
ラルフの心底嫌そうな声が妙に響き渡り、億劫そうに振り返る。
つられるように他の面子も振り返ると、そこには巨大な生物が空を飛んでいた。
「こ、これって…」
ロイドは誰にも聞こえない程の声を漏らす。
転生する前に創作物の中では見た事があった。
どの創作物でも「それ」は強者として描かれており、そして今この目で見たその姿もやはり強者としての格を感じさせる。
黒い鱗は鋼鉄のような無骨さと、それでいて宝石のような輝きを内包しており、その真紅の眼は目が合うだけで竦んでしまいそうな鋭い威圧感を放っている。
両翼はざっと見積もって30メートルはあろうか。全長も尻尾まで含めれば40メートルはあるだろう。
「うげぇ、黒竜か…面倒なのに見つかっちまったな」
この世界に存在する数多の魔物、その頂点の一角を担う種族――竜種。
その中でも凶暴性や戦闘能力において上位である黒竜の姿がそこにはあった。
「は、初めて見た…」
「そうね、おっきいわ…」
「う…」
何故か目を輝かせるウィンディア姉弟と、恐怖からか体を強張らせて言葉に詰まるラピス。
その恐怖を和らげるかのようにラピスの頭を撫でながら、ドラグは口を開いた。
「全く、大暴れするからこんなんが出て来るんだぞ」
「そりゃそーだな、あんだけ派手な魔法を使ったんだ。こうなるのも当然だな」
「何言ってんだい。あんたの”破剣”のせいだろう?ド派手に自然破壊するからこうなっちまったのさ」
「いやいや、あの雷の音で昼寝してたのを邪魔でもされたんだろ?」
「バカだね、きっとあんたの剣撃の余波があいつに当たっちまって怒ってんだよ。さっさと謝ってきな」
「どっちでもいいから、さっさと静かにさせてくれないか?ラピスが怯えてるし、僕だって怖くて体が震えてしまってるんだ」
「「よく言うわ!」」
いつもの澄まし顔と全く乱れのない口調で言うドラグに言い合いも忘れてツッコむ2人。
先程まで固まっていたラピスもさすがに呆れた表情を浮かべてしまう。
「んで、どーするんですか先生?逃げます?」
「いや、こいつらはなかなか好戦的でな。逃げても領まで追ってくるかも知れん。ここで斬る」
剣を抜き放ち構えるラルフ。呼応するようにベルは本を広げて半身に構える。
「さっきと同じ分担でいくか。ドラグはこいつらのお守りだ」
「了解。あとこれ、気休め程度だけど魔力回復薬」
「ありがたいねぇ。だいぶ減ってるから、気休めでも助かるよ」
「だな」
  2人はドラグから投げ渡された瓶を黒竜に目を向けたまま掴んで、素早く飲み干す。
そして空になった瓶を適当に放り投げると、それぞれ魔力を練り上げ始めた。
「グォオオッ!」
様子を見るかのように高みから見下ろしていた黒竜は、高まる魔力に気付いてか、短く咆哮をあげると、負けじと魔力を収束させていく。
その魔力の片鱗を覗かせるかのように、咥内から真紅の炎をちらつかせていた。
離れていても感じる熱量と魔力の圧力に、ロイド達は背筋が冷える。
ラピスが思わずといった風に一歩後退る。
するとその小さな足音が合図だと決められていたかのようにーー黒竜とラルフ、ベルは同時に行動を起こした。
「ガァアアアアアッ!!」
「”破剣”んんんっ!!」
「『万雷――』」
黒竜から放たれた巨大な真紅の炎。
まだ届いていないにも関わらず肌が火傷しそうな程の熱量を放っている。
それを迎え撃つのは”破剣”だ。
剣撃に魔力を込めて放つラルフの数少ない遠距離攻撃にして、最大の破壊力を誇る技。
剣の頂きである剣神の最も得意とする攻撃。
 それらは激しくぶつかり合い、轟音と共に凄まじい衝撃波を発生させる。
「うわぁっ!」
「きゃっ!」
相殺し合った攻撃だったが、押し負けたのか余波の熱量と衝撃がラルフ達を叩く。
体が吹き飛ばされそうになる子供達3人をドラグが掴んでいた。
「ちっ、こいつかなり強い個体だぞ」
ラルフが舌打ち混じりに吐き捨てられた言葉を遮るかのように、大気を切り裂くような炸裂音が鳴り響いた。
「――束』!!」
天の怒りが落ちる。
無数の雷を無作為またはある程度の指向性を持って放つ「万雷」だが、それらを束ねて一条の極大の雷を発生させる。
「ゴァアアアアッ?!」
黒竜は体を貫く雷に悲鳴のような雄叫びをあげる。
体が痺れたのか、飛行が出来なくなり空から落ちてきた。
「さてと、とりあえずは引き摺り下ろせたねぇ。……さて、こっからだよ」
 
「よーし終わったぞ。帰るか!」
「早かったじゃないかい、少しは休ませな」
「お疲れです、先生」
「俺の護衛いらなかったね。完封してたし」
「どうだかな。結局”破剣”に頼っちまったし、まだまだだわ」
そんな会話をしながら盗賊アジト跡地を後にする一行。
「グォオオオオオオオオーー」
そんな一行の耳に、低い唸るような咆哮が鳴り響く。
「えぇ〜…」
ラルフの心底嫌そうな声が妙に響き渡り、億劫そうに振り返る。
つられるように他の面子も振り返ると、そこには巨大な生物が空を飛んでいた。
「こ、これって…」
ロイドは誰にも聞こえない程の声を漏らす。
転生する前に創作物の中では見た事があった。
どの創作物でも「それ」は強者として描かれており、そして今この目で見たその姿もやはり強者としての格を感じさせる。
黒い鱗は鋼鉄のような無骨さと、それでいて宝石のような輝きを内包しており、その真紅の眼は目が合うだけで竦んでしまいそうな鋭い威圧感を放っている。
両翼はざっと見積もって30メートルはあろうか。全長も尻尾まで含めれば40メートルはあるだろう。
「うげぇ、黒竜か…面倒なのに見つかっちまったな」
この世界に存在する数多の魔物、その頂点の一角を担う種族――竜種。
その中でも凶暴性や戦闘能力において上位である黒竜の姿がそこにはあった。
「は、初めて見た…」
「そうね、おっきいわ…」
「う…」
何故か目を輝かせるウィンディア姉弟と、恐怖からか体を強張らせて言葉に詰まるラピス。
その恐怖を和らげるかのようにラピスの頭を撫でながら、ドラグは口を開いた。
「全く、大暴れするからこんなんが出て来るんだぞ」
「そりゃそーだな、あんだけ派手な魔法を使ったんだ。こうなるのも当然だな」
「何言ってんだい。あんたの”破剣”のせいだろう?ド派手に自然破壊するからこうなっちまったのさ」
「いやいや、あの雷の音で昼寝してたのを邪魔でもされたんだろ?」
「バカだね、きっとあんたの剣撃の余波があいつに当たっちまって怒ってんだよ。さっさと謝ってきな」
「どっちでもいいから、さっさと静かにさせてくれないか?ラピスが怯えてるし、僕だって怖くて体が震えてしまってるんだ」
「「よく言うわ!」」
いつもの澄まし顔と全く乱れのない口調で言うドラグに言い合いも忘れてツッコむ2人。
先程まで固まっていたラピスもさすがに呆れた表情を浮かべてしまう。
「んで、どーするんですか先生?逃げます?」
「いや、こいつらはなかなか好戦的でな。逃げても領まで追ってくるかも知れん。ここで斬る」
剣を抜き放ち構えるラルフ。呼応するようにベルは本を広げて半身に構える。
「さっきと同じ分担でいくか。ドラグはこいつらのお守りだ」
「了解。あとこれ、気休め程度だけど魔力回復薬」
「ありがたいねぇ。だいぶ減ってるから、気休めでも助かるよ」
「だな」
  2人はドラグから投げ渡された瓶を黒竜に目を向けたまま掴んで、素早く飲み干す。
そして空になった瓶を適当に放り投げると、それぞれ魔力を練り上げ始めた。
「グォオオッ!」
様子を見るかのように高みから見下ろしていた黒竜は、高まる魔力に気付いてか、短く咆哮をあげると、負けじと魔力を収束させていく。
その魔力の片鱗を覗かせるかのように、咥内から真紅の炎をちらつかせていた。
離れていても感じる熱量と魔力の圧力に、ロイド達は背筋が冷える。
ラピスが思わずといった風に一歩後退る。
するとその小さな足音が合図だと決められていたかのようにーー黒竜とラルフ、ベルは同時に行動を起こした。
「ガァアアアアアッ!!」
「”破剣”んんんっ!!」
「『万雷――』」
黒竜から放たれた巨大な真紅の炎。
まだ届いていないにも関わらず肌が火傷しそうな程の熱量を放っている。
それを迎え撃つのは”破剣”だ。
剣撃に魔力を込めて放つラルフの数少ない遠距離攻撃にして、最大の破壊力を誇る技。
剣の頂きである剣神の最も得意とする攻撃。
 それらは激しくぶつかり合い、轟音と共に凄まじい衝撃波を発生させる。
「うわぁっ!」
「きゃっ!」
相殺し合った攻撃だったが、押し負けたのか余波の熱量と衝撃がラルフ達を叩く。
体が吹き飛ばされそうになる子供達3人をドラグが掴んでいた。
「ちっ、こいつかなり強い個体だぞ」
ラルフが舌打ち混じりに吐き捨てられた言葉を遮るかのように、大気を切り裂くような炸裂音が鳴り響いた。
「――束』!!」
天の怒りが落ちる。
無数の雷を無作為またはある程度の指向性を持って放つ「万雷」だが、それらを束ねて一条の極大の雷を発生させる。
「ゴァアアアアッ?!」
黒竜は体を貫く雷に悲鳴のような雄叫びをあげる。
体が痺れたのか、飛行が出来なくなり空から落ちてきた。
「さてと、とりあえずは引き摺り下ろせたねぇ。……さて、こっからだよ」
 
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