禁聖なる復讐の果てに

初歩心

プロローグ 生誕(2)

 

以前、白と黒の剣技が幾度も交差しそのたびに強い光を放っている。

そんな剣技の攻防に圧倒されるなか、何やら異様な音が微かにしていることに気がつき俺は、音の発生源へと恐る恐る目線を上にあげた。

すると自分の視界には両親が宙に浮いている姿が写し出される。

 両親の腹から背中までを白く輝く光剣が突き破り、赤い鮮血がどくどくと止めどなくあふれでている。

たがその血は一滴も下に落ちる事なく光剣に吸収されている。

肯定よりも否定が優先され、それを目の当たりにしても頭が理解する事をしなかった。

 
「やっと来ましたねぇ瞬くん、待ちくたびれちゃいましたぁ」


背後からの声に警戒して、漆黒色の刀を構え振り向くとそこには、よく知る人物がたたずんでいた。

 いつも俺に向けていたあの優しい笑みを浮かべている。

彼女の髪は淡い金色で、黄金色の瞳は神々しく輝いている。

 出過ぎず、足りなすぎずな完璧な軆つき。
そして指先から足先まで白くて柔らかそうな肌、整った顔立。

白いドレスのような羽衣をまとった聖王の娘たる彼女の声はすべてに癒しを育むような優しい印象を与える。

そんな彼女は、親父の契約女神であった。


 光剣が消えるとドサッと音をたて両親だった骸は倒れた。

 
「ふぅ、ごちそうさまでしたぁ」
 
「アリシアさん······がやったの······? よくも!! 」



とたんに状況を把握した姉が聖剣を構えアリシアに飛びかかったが

 
「奏、あなたには用ないんですぅ」



かわされると手刀をくらい、地面に叩きつけられた。

それ以降姉が動く事はなかった。


 「----ぅあ」


 俺は目の前で起こっている現象にまだ頭がついていかず。

自身の口から発せられた声は言葉にならない弱々しいものだった。

 
「大丈夫ですょ、気絶させただけですから
もちろんこの場にはいませんがぁ、私のお姉様。
アテナにも気絶してもらいましたぁ」


「どう···して? 」

 
「はぁい? 」


「何でこんな事するんだよ?! 」

この状況で俺の思考を埋め尽くすのは浮かんただただ疑問だけであった。

訳もわからず頭痛がしていた。


「それはぁ」


 途中で会話が途切れた。
彼女を危険な存在だと察知した聖王と魔王が剣術を放った為だった。

白と紫の炎がそれぞれ一直線に放たれ、アリシアを消し去ろうと迫っていた。

 彼女はそれに向け右手をかざすと巨大な光剣を具現化させ盾のように防せぐ。

地面を少しえぐりながらも頑丈な盾はなんなく防ぎ、彼女はそのまま右手を振り払う動作をする。

すると連動した光剣がそれぞれの火炎を容易に凪ぎ払うとかき消した。
 

「邪魔ですねぇ…そうだ!!
いっそのことお父さまもぉ魔王さんもぉ
私がぁ食べてあげましょう
 瞬くん、ちょっと待っててねぇ♪ 」


 彼女は少し頬を赤らめると口元を緩ませ、魔王と聖王へ向け風を切るような早さで姿を消した。

 
 彼女が出現した場所を予測するかのように聖王剣と魔王剣が素早く振りかざされる。

 頭上に振りかざされたそれに対しアリシアは手をかざすと巨大な二対の光剣を出現させ攻撃を受け止め、さらに弾き返した。

 聖王と魔王は体制を崩されながらも斬撃を放ち、それぞれ別方向へ距離をとりつつ立て直す。

 白と紫の肉骨を容易に切断するであろう鋭くすばやい斬撃。

 そんな斬撃を、彼女は、容易に防げるといわんばかりの表情で一方の巨大な光剣を盾にしばらく防ぐと、もう一方の巨大な光剣をバネのようにしならせ踏み台にする。

 はるか上空で反転し、今度は盾がわりにしていた光剣を空中に出現させ、それを踏み台がわりに下へ向け加速する。

 途中、狂った笑みを見せると上空の光剣を再び出現させ両手で振りかぶり、狙いを定めたのか魔王に向けよりいっそう加速した。

 数秒後、魔剣と振りかぶった光剣が合わさりものすごい風圧が辺りを襲った。

 俺は飛ばされまいと残り少ない聖力を使って白い防御壁を作り姉をかばいながらなんとかしのぐ。

 その間にも光剣に加わる力と光はだんだんと強くなり魔王はとうとう片膝を地面についてしまった。

 黒い鎧に身を包んでいるため顔色は伺えないが、明らかに苦戦を強いたげられている事は確かである。

やがて魔王の片膝を中心に地面に亀裂が走り始めた。

 −−−−魔王がやられる。

そう思った瞬間だった。

 彼女が少しずつ押し返され始めたのだ。
―――それはなぜか。

聖王が魔王剣を聖王剣で下から支え始めたからであった。

アリシアの顔からは笑みが消え焦りが見える。
 


「なんのつもりだ聖王?
我輩が死ねば、貴様に都合が悪い事など」
 
「勘違いするなよ魔王 お前を助けた訳ではない。
お前を、処刑するのはこの私だ 
ただ、それだけの事だ!! 」

 
「あらぁ、お二人ともぉおしゃべりですかぁ?
 ずいぶんと余裕なんですねぇ
なんかぁ本当にムカつきます!! 」

 
「アリシア!! 正気に戻れ いったいどうしたと言うのだ
父はいつでもお前の味方だぞ」

 
「はぁい、お父様。 
私の為にぃ死んでください。
ついでに魔王さんも殺して、私がこの世全ての覇者になるんですぅ」

 
「············仕方あるまい 魔王!」
 
「なんだ」
 
「父として心苦しいが、
 これより聖と魔!!
両族を滅ぼしかねない強大なる存在を抹殺する!!
故に、一時共闘を願えたい」
 
「承知した、今ばかりは貴殿に一時協力するとしよう」
 

とたんに聖剣と魔剣がそれぞれ凄まじい光を放ち光剣を弾く、弾かれた光剣はひび割れ一瞬で破壊され、衝撃でアリシアは地面に叩きつけられた。

 魔王と聖王は間髪入れず先ほどの技を今度は融合させ至近距離で放つ。

 白と紫の炎渦か驚愕した彼女を先ほどの位置よりも遠い場所まで押し流し大きな音と共に強大な爆発を起こした。

間違いなく死んだであろう彼女を中心に爆風とともに土ボコリがあがり、やがて聖王も魔王も包みこんでいった。

 

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