ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第537話【瓦割りデモンストレーション】

予選会のバトルロイヤルが終了した。

残ったメンバーがステージの上で観客たちから黄色い歓声を浴びていた。

俺も全裸で歓声を浴びている。

『それでは、勝ち残った八名の方々は、領主様のお屋敷に移動してください。これからパーティーを行います!!』

とりあえず試合が終わったから俺は服を着込んだ。

おお、パーティーか~。

ならばご馳走が待っているのだろう。

それに陸の生牡蠣が当たったと言うキシリアお嬢様も拝めるだろうさ。

見合いの席がもうけられるはずだ。

楽しみだな。

「よし、ゴリ、ササビーさん、行こうぜ!」

「「ああ」」

俺たちは、勝ち残った他のメンバーたちと一緒に屋敷を目指す。

その道中に町の中を歩いたのだが、それはもうパレードのようだった。

決勝トーナメントを楽しみに待っている人々に喝采を浴びる。

俺はキョロキョロしながら言った。

「すげ~、注目の的だな」

ササビーさんが背後から俺に言った。

「そりゃあそうさ、注目だって集めるさ。我々は賭けの対象なのだからね。皆、誰に賭けようか品定めしてるんだよ」

「なるほど~。このパレードのような移動は、そのためなのか……」

そんな感じで町中を歩いた俺たち八名は、領主ギデンの屋敷に到着した。

屋敷に入ると大広間のパーティールームに通される。

煌びやかな広い部屋だった。

ピカピカのシャンデリア。

豪華な赤い絨毯。

テーブルにはご馳走が並び、様々な酒が用意されていた。

俺は入り口側に立っていた執事に訊いた。

「この料理、食っていいのか?」

「どうぞ、好きなだけ食べて飲んでくださいませ。ただし、飲み過ぎて明日の喧嘩祭りに支障が出ない程度にお楽しみくださいませ」

「ひゃっは~!!」

俺は酒を飲まないから関係無いや~。

なんかスゲ~料理がたくさん並んでいるぜ~。

こんなご馳走はなかなか食べれないぞ。

おお、これが噂の陸の生牡蠣か~。

レモンを絞って──。

俺は貧乏人のようにご馳走にかぶり付いた。

「ササビー兄さん、俺らは飲みますか」

「そうたね、ゴリ君。滅多に飲めそうにない高価な酒も在るから頂こうよ」

他のメンバーたちも酒や料理に手を付け始める。

皆が喜んでいた。

会場には俺ら喧嘩祭りの参加メンバー以外にも金持ちな商人たちが何人か居た。

お客人なのだろう。

そいつらが卑しい俺らを見て笑ってやがる。

ちょっとはしたなかったかな?

まあ、同じ平民だ。

関係ね~よ。

すると領主のギデンと奥様のミネバがパーティー会場に姿を表す。

そして、ギデンのスピーチが始まる。

「これはこれは、決勝トーナメントに勝ち残った選手の皆様、それにお客人の皆様、酒や料理を堪能しておられますか。今宵は収穫祭です。どうぞ、好きなだけ楽しんで行ってください」

リッチな野郎は違うね~。

奢りかたが派手だぜ。

するとメガホンを持った進行役が何やら叫びだす。

『それでは皆様、余興のお時間です!』

なんだ、何が始まるんだ?

俺が陸の生牡蠣を食べながら見ていると、使用人たちが何やら運んで来る。

「なんだ、あれ?」

それは瓦だった。

屋根の上にあるアレである。

ただ、赤茶色の瓦だ。

その赤茶色の瓦を積み重ねて行く。

「何してるんだ。瓦割りでもするのかな?」

俺が陸の生牡蠣を食べながら眺めていると、使用人たちは瓦を次々と積み重ねて、三十枚一山のタワーを八つ作り出す。

まさか……。

『それではこれから、決勝トーナメントに残った八名による、瓦割りデモンストレーションを開始します!!』

やっぱり、俺らが割るのね。

『喧嘩は拳の破壊力で実力の差が出ます。この瓦割りコンテストは、その参考になるでしょう!!』

「面白いな、前から一度ぐらい瓦割りってヤツをやってみたかったんだ!」

そう言って一番に名乗りを上げたのは、女鍛冶屋のグゲルグ姉さんだった。

ショートボブの彼女は上着を脱ぎ捨てタンクトップ姿になる。

タンクトップの腹部からシックスパックの腹筋がチラチラ見えていた。

スゲ~鍛えているよ、この姉ちゃん。

『瓦の積まれた枚数は三十枚だ。そして一番手に名乗りを上げたのは紅一点のグゲルグ嬢だ~。さあ、彼女は何枚の瓦を粉砕できるのか~!!』

指の間接をポキポキ鳴らしながらグゲルグが瓦の前に立った。

そして、瓦の頭に拳を添えて狙いを定める。

「行くよ! はぁ~~~~!!!」

拳を振りかぶった。

「せいっ!!」

そして、振り下ろす。

バリバリバリ!!!

グゲルグの拳が瓦を叩き割った。

稲妻が落ちたように瓦に衝撃の皹が走って行く。

だが、瓦はすべて割れなかった。

八枚も残る。

「ちっ……。意外と難しいわね」

『おお~~っと、八枚残ったぞ。記録は二十二枚だ! 続いては誰が行く!?』

ササビーさんが前に出る。

「じゃあ、次は私がやるよ」

そして記録は二十五枚。

続いてゴリが行った。

その記録は二十七枚。

「欲しいなゴリ。三枚残ったな~」

「んん~……。三十枚ぐらい行けると思ったんだけどな……」

「じゃあ、今度は俺が行くぜ!」

「アスラン、頑張れよ」

「おうよ!」

俺は瓦の前に立つと、上着を脱ぎ捨てて上半身裸になった。

続いてズボンも脱ぎ捨ててパンツも脱ぎ捨てる。

世に言う全裸スタイルとなる。

これが俺の正装だ。

『あの~、アスラン選手。服を着てください。ルール変更が有りましたので伝えて置きますね。全裸も禁止になりました』

「なんだと、そんなバカな!!」

ゴリが俯きながら言う。

「どっちがバカだ……」

俺はふて腐れながら怒鳴った。

「服を着ないとならないなら、俺はこんなデモンストレーションなんか参加しないからな!!」

『わ、分かりました……。別にデモンストレーションは強制参加ではないので構いません……』

すると巨漢男も手を上げながら詰まらなそうに言った。

ビグザムルだ。

「オラも見合いの前に汗をかきたくないズラ」

『おお~~と、アスラン選手に続いてビグザムル選手もデモンストレーションを拒否したぞ!!』

するとリーゼントを整えながらグフザクが前に出て来た。

「しゃあねえな、ならば俺様が派手に瓦を全部割ってやるぜ!!」

『おお~~と、グフザク選手、気合いが入っているぞ。これは三十枚全部粉砕できるかぁ!!』

「行くぜ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ。

『これは凄い! パンチ一発で一枚の瓦を割って行ったぞ。合計三十発のパンチで三十枚すべての瓦を割り砕いた!!』

違うだろ、それ……。

なんで連打する。

そして、なんで連打を許す。

「どうだ! 一発で三十枚が割れなければ、三十発打ち込めばいいんだよ!!」

そんなアホな瓦割りを見たこと無いぞ……。

『おっと、続いてジオンググ選手か瓦の前に立つ』

「ふんっ!!」

ジオンググが一撃のパンチで瓦の三十枚を粉砕した。

更にジオンググの拳は瓦の下の地面を叩いて床にめり込んでいた。

破壊力に余裕が残っている。

「三十枚どころか四十枚ぐらい行けたんじゃあねえか……」

ジオンググが踵を返すと、今度はジェガンが前に出る。

ジェガンが瓦の前で静かに腕を振り上げた。

だが、その手は拳を握らず開いていた。

手刀だ。

「チョップで行くのか」

「ふっ!!」

そしてジェガンの空手チョップが瓦に落ちる。

その手刀は瓦の下にストンと落ちた。

切ったのだ。

瓦は割れずに斬られていた。

まるで刃物で切り裂いたように真っ二つに割れて崩れ落ちる。

『こ、これは凄い……。まるで刃物だ……』

その切れ味を見てパーティー会場は冷めていた。

それほどにまで鋭い切れ味だっだのだ。

殺伐としていやがる。

ゴリが呟いた。

「あいつとは当たりたくないな。祭りの遊びじゃあすまないぞ……」

なるほどね。

ジェガンたる若造は、空気が読めない野郎なんだな。

まあ、この瓦割りデモンストレーションで分かったことは、マークすべき対象はジオンググとジェガンだけだ。

この二人を倒せれば喧嘩祭りの優勝とキシリアお嬢様のハートは頂きだぜ。

「ところでキシリアお嬢様は、顔を出さないのか。まだ陸の生牡蠣でピーピー状態なのかよ?」

するとササビーさんが指差しながら言った。

「いや、今こられたぞ」

俺とゴリはササビーが指差す方向を見た。

すると廊下の影から煌びやかなドレスを纏ったデラックスな女性が登場したのだ。

「なんだ、ありゃ……」

言ったのは俺じゃない、グフザクの野郎だった。

俺たちの前に登場したキシリアお嬢様を拝見して驚いているのは俺だけで無いようだ。

キシリアお嬢様はデラックスすぎる。

推定体重250キロは有りそうなぐらいデラックスだ。

手足は商品にならないぐらいの脂肪分豊かなハム状態で、首は太すぎて無いぐらいだ。

あんなデラックスが自力で歩いているのが不思議なぐらいデラックスである。

「似顔絵とぜんぜん違うじゃんか……」

「だ、騙されたな……」

俺やグフザクが驚愕に固まっていると、ゴリが呟いた。

「キシリア、綺麗になったね」

俺とグフザクはゴリを見つめながら声を揃えた。

「「こいつ、マジか……」」


【つづく】

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