ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第496話【集いし者たち】

さてさて、飲んだくれの冒険者さんたちが朝っぱらからわざわざ出向いてくれたんだ、ここは賑やかにお出迎えしてやりましょうかね。

俺はこっそりとスターメリケンサックを両手に装着する。

バレてないよな?

まあ、バレててもいいけれど。

場所は正門から入って直ぐの広場だ。

まだ露天や屋台が準備中である。

「ひー、ふー、みー……」

相手の人数は十五人ってところかな。

プレートやスケールの重装備の戦士が六人。

ファイターだな。

レザーなどの軽装備が六人。

シーフだろう。

女性も一人混ざっていやがる。

あんまり可愛くない。

おばさんに片足を突っ込んでやがるぞ。

俺から見たら賞味期限切れだわ。

あと、魔法使いが四人か──。

計十五人の冒険者だ。

あれ、十六人かな?

まあ、なんでもいいか。

さて、どいつが頭だ?

空気感からして、俺の正面から来る大男さんかな~。

その大男が声を掛けて来る。

「なあ、アスラン。ちょっと顔を貸してくれないか?」

大男が腰に差した剣の柄に腕を乗せながら言った。

ビンゴ。

こいつがリーダーだな。

「こんな朝から寝惚け面を並べてなんのようだい?」

「ついて来てもらえれば分かるってばよ」

「分かったよ。じゃあお望み通りついて行ってやろうじゃあねえか」

「助かるぜ」

そう言うと大男が俺の横を過ぎて正門の方向に向かって歩き出した。

壁の外に向かってやがる。

俺が大男の後について行くと、更に冒険者たちが俺の後ろについて来る。

これはこれは大行列だな。

俺も偉くなったもんだぜ。

俺たちが正門から出ようとすると、大男が足を止めた。

「んん? なんで止まるんだ?」

「ぅぅ…………」

大男が苦悶の表情で立ち止まって動かない。

後ろの冒険者たちが何事かと声を掛ける。

「おい、どうしたんだ。さっさと歩けよ?」

「ぅぅ………」

だが、大男は歩みを進めない。

俺は何事かと大男が睨み付ける前方を見た。

そこには道を塞ぐように男たちが立っていた。

道を塞ぐように立つ男たちの真ん中に立つモヒカンのマッチョマンが俺に声を掛ける。

「よう、アスランお帰り。久しぶりだな」

ギルガメッシュだ。

それにサンジェルマンや全裸パーティーのメンバーたちも居る。

彼らが道を塞ぐように立っていた。

ギルガメッシュやサンジェルマンの睨みは厳しい。

大男が冷や汗を流しながら言った。

「すまねえが、ギルガメッシュさん、そこを通してもらえないか?」

あらら、気後れしてるよ。

鼻で笑うギルガメッシュ。

「ふっ」

ギルガメッシュがズボンを吊るしたサスペンダーを両手でパチンと弾くと自分のモヒカンを撫でながら言った。

「んん、お前、誰だ?」

うわ、惚けてるよ、このおっさん。

完全におちょくってるのかな。

大男が言う。

「あんたのギルドのメンバーじゃあねえっスか……?」

「んん、知らん面だな。新人の顔までいちいち覚えてられんからな。すまん」

大男が苦虫を噛み潰したような表情で返した。

「俺が冒険者ギルドに加入したのは、六年も前ですぜ……」

「あれ、そうだったか。すまんすまん、雑魚過ぎて影が薄い奴は覚えてられないからな。でえ、俺になんかようか?」

「すみません、道を空けてもらえませんか……。そこを通りたいので……」

ダメじゃん。

敬語使ってるよ。

ギルガメッシュは顎をしゃくらせると微笑みながら言った。

嫌らしい笑みである。

「道を通りたければ通ればいいだろ。壁際ギリギリがちょっぴり空いてるんだ。身を縮めてヒソヒソと小物らしく通り過ぎればいいだろ」

「ぅぅ…………」

こりゃあ、分かってて侮辱しているわ。

可愛そうに……。

どうもがいてもギルガメッシュ一人に勝てる戦力じゃあないのにさ。

すると俺の横を過ぎて一人の冒険者が大男に駆け寄った。

大男に耳打ちする。

その小声が俺の耳にまで届いた。

「おい、どうする。まさかギルマスとやり合うのかよ……」

「い、いや……」

「冗談じゃあねえぞ。俺らそんな話は聞いてねえぞ……」

二人のヒソヒソ話に俺も声を細めて乱入した。

「じゃあ、どう言われて来たんだよ?」

「いや、アスランを袋にしたら金がもらえるって言われてさ……」

「誰に言われたんだよ?」

「アマデウス派のクラウドだよ……」

「クラウド?」

なんであいつが俺を……?

あいつって友達だったよな。

俺、もしかして恨まれてる?

知らず知らずに恨まれていますかね?

俺たち三人がヒソヒソ話をしていると、背後から大きな声が飛んで来た。

「よ~、アスランじゃあねえか~!」

俺や冒険者たち全員が一斉に振り替える。

すると俺たちの背後に知った顔の一団が立っていた。

大声を飛ばしたのはゴリだ。

ゴリは俺がくれた戦斧を背負って、厳つい顔で立っている。

更に赤いローブのバイマン。

全裸にリュートで股間を隠したオアイドス。

九匹のシルバーウルフを連れたカンパネルラ爺さん。

筋肉ムキムキの長身ガールのユキちゃん。

パンダゴーレムに股がったガイア。

それにスカル姉さんとゾディアックさんまで居やがる。

これはこれは、なかなかの面子が揃ってますな。

これで人数的にもアマデウス派の冒険者と五分五分だぞ。

むしろ個々の実力でこちらが勝っているな。

するとヒソヒソ話を始めた男が気後れを露にする。

「おいおい、なんだよ……。こんなの聞いてないぞ……」

俺がゴリに話し掛ける。

「よう、ゴリ。こんな時間に何してるんだ?」

ゴリが答える。

「いやな、魔王城前のキャンプ地が大雨でな。洪水になりそうだから皆で避難して来たんだよ」

「あっちは大雨なのかよ」

更にパンダに股がったガイアの頭を撫でながらスカル姉さんが言う。

「それで、たまには皆で外食しよって話になってね」

「そうか、それで今から外で朝食なんだな」

スカル姉さんは手を振りながら言った。

「じゃあ、私たちは行くからな。お前もまだ魔王城には帰らないほうがいいぞ」

「あ、ああ……」

スカル姉さんがそう言うと、皆して手を振りながら路地の中に消えて言った。

ヒソヒソ話の男が呟いた。

「行っちゃったぞ……」

う、うん~……。

行っちゃった……。

更にギルガメッシュたちが俺の横を一列で歩いて行く。

通り過ぎる刹那にギルガメッシュが俺の肩を叩いてから言った。

「じゃあ、俺らも行くからな。冒険帰りで疲れてるんだ。またな」

「「「「「またな」」」」」

サンジェルマンや全裸パーティーズも順々に俺の肩を叩いてから過ぎて行く。

アマデウス派の冒険者たちは、左右にずれて道を開けるとギルガメッシュたちを見送った。

そして、正門前には俺と十五人の冒険者たちだけが残ったのである。

大男が額にかいた汗を腕で拭いながら呟いた。

「お、脅かしやがって……」

うん、こいつら安堵している。

間違いなく安堵しているぞ。

そして、大男が俺の肩を叩いてから言った。

「じゃあ、そろそろ俺らも行こうか……」

「あ、ああ……」

俺たちはトボトボと町を出て行った。

な、なんだったんだろう……?

今回の話は要らないよね……。


【つづく】

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