ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第355話【森の住人】

クレーター山脈を降りた俺は若様エルフの凶介と別れて森に向かった。

森の中は至って普通な感じである。

五百年前に天空の城アヴァロンが降って来て大穴を開けた様相は残っていない。

見た感じ、森!森!森!である。

俺はショートソードを振るいながら藪を切り裂き進んでいた。

「なんか森に入ると殿様バッタちゃんを思い出すな~。あいつは元気でやってるんかな。カマキリとかに食われてないかな~」

まあ、詰まらんことを考えてないで先を目指すかな。

魔王城まで2キロか3キロだ。

幾ら道が無い森の中でも、夜までには魔王城まで到着できるだろう。

魔王城まで到着したら屋根の有る手頃な場所に転送絨毯を敷いてソドムタウンに帰ろっと。

今日の課題はそこまでだ。

まあ、のんびりやるさ。

城内の死霊の退治もあるし、宝物庫の探索もある。

壁や住居の建築は、それらが終わってからかな。

「んん?」

気配だ。

何か来る!?

俺は慌てて短剣を構えて、気配を感じ取った前方を睨んだ。

来る!!

すると──。

「うわー、たーすーけーてー(棒読み)」

なんだ??

変なチンチクリンなのが叢から飛び出して来たぞ。

頭は人間サイズだが、手足が短く体が小さい。

そしてポッコリお腹が出ていて粗末な服を着ている。

助けてと叫んでいるが、緊張感が無く棒読みだ。

「助けてくりー(棒読み)」

くりー?

なに、この宇宙人みたいな小人は?

いや、小人か??

そして小人は俺の足に絡み付くように隠れた。

「旅のーかーたー、たすけーてーくーりー(棒読み)」

「なんだお前は?」

その時である。

殺気!?

強い殺気が迫って来る。

小人が逃げて来た方向からだ。

こいつを追って来たヤツだな。

「さて、何が出るかだ!?」

「クマだーよー、クーマー(棒読み)」

「なんだ、クマか」

クマなら問題無いだろうさ。

今まで野生のクマより狂暴で巨大な敵と戦って来たんだ。

幾らクマとて4メートルのミケランジェロより大きくないだろうさ。

今さらクマの一匹や二匹、敵でもないわ。

「クマに勝てるのかー、あんたー(棒読み)」

「余裕よ!」

「おおー、頼もしーいー(棒読み)」

すると前方の叢が激しく揺れた。

出て来るな、クマさんが!!

「ガァルルルルルルルル!!!」

「えっ、デカ……」

んんー……。

ちょっと予想していたのと違うな……。

なに、この赤いモヒカンのクマさんは?

体長2メートル半は有るじゃんか!?

「ガァルルルルルルルル!!!」

うわ!?

立ち上がったら更に大きく見えますよ!!

二足歩行だと4メートルあるよ!!

サイズ的にミケランジェロと互角だわ~……。

「人間ー、早くやっつけてくれよー(棒読み)」

「んんー、どうしたものかな……」

ジャイアントクマさんは空腹なのか、涎をダラダラと垂らしながら威嚇していた。

鼻の頭に深い皺を寄せて瞳が釣り上がっている。

俺の殺気感知スキルもビンビンに殺気を感じ取っていた。

もう、やる気MAXだわ……。

「ならば!!」

俺は足元にしがみついていた小人の首根っこを掴むと持ち上げた。

「なーにーすーるーだー(棒読み)」

「済まん、これも戦術だ!!」

「えーえー(棒読み)」

俺は小人を全力でジャイアントクマさんの顔に投げつけた。

「うーわー(棒読み)」

すると自分の眼前に飛んで来た小人をクマは真剣白羽取りでキャッチする。

「ガルッ!!」

「ひーどーいー、食ーわー
れーるー(棒読み)」

「今だ!!」

俺は手に在るショートソードから新スキルを放った。

「ソニックウェーブだ!!」

【ソニックウェーブ。すべての武器で、射程距離15メートルほどの斬激破を放てるようになる。一日に撃てる回数は、本人レベルの15置きに一回追加される】

俺が振るったショートソードの切っ先から輝く半月の残光が飛んで行った。

その残光が、ジャイアントクマさんの股間を切り付ける。

「キャイン!!」

ジャイアントクマさんは雄だったのか、小人を投げ捨て踞る。

俺はそこに駆け寄った。

「ワイルドクラッシャー!!」

【ワイルドクラッシャー。すべての武器で、強打力が2.5倍された一撃を放てるようになる。一日に撃てる回数は、本人レベルの20置きに一回追加される】

会心の一撃が踞るジャイアントクマさんの頭をカチ割った。

試し切り完了だ。

「決まったぜ!!」

「すーごーいーなー(棒読み)」

ジャイアントクマさんは、その一撃で絶命した。

ピクリとも動かなくなる。

「見かけよりも容易い敵だったぜ」

どれ、せめてモンスターネームだけでも見ておくか──。

【レッドヘルムベアーです】

うわ、最強のクマを倒したかもしれないぞ……。

「人間、おまえ、やるなー(棒読み)」

頭からダラダラと血を流している小人が俺の側に駆け寄って来た。

「おい、お前……。大丈夫か? 頭からスゲー血が出てるぞ……」

「ああ、食われかけたからなー。いつものこーとーよー(棒読み)」

「そ、そうか……。ヒールをかけたろか?」

「おおー。人間、ヒール使えるか。掛けて掛けてー(棒読み)」

「どれどれ……」

俺が小人の頭を見たら、クマの両手分の鉤爪傷がハッキリと刻まれていた。

こんな深傷だと、馬鹿以外は直ぐに出血多量でしんでますぞ……。

兎に角俺はヒールで小人の傷を癒してやった。

「うわー、傷が治ったぞー(棒読み)」

「よ、良かったな……」

小人はピョンピョン跳ねながら喜んでいる。

「ところで小人よ。こんなところで何をしているんだ?」

「おいら、キノコ取ってたー(棒読み)」

そう言うと小人はキョロキョロと自分の周りを確認し始める。

「おー、どうしようー(棒読み)」

「どうした?」

小人は涙目で言う。

「取ったキノコ、全部落としたー(棒読み)」

「んん、あそこに鞄が落ちてるぞ」

「あー、あれだー、オラのキノコだー(棒読み)」

「良かったな、見つかって」

俺は小人の頭を撫でた。

「おまえ、いいやつか?」

「ああ、当然だ」

「じゃあ、キノコをご馳走してやるー。オラの家に来いよー(棒読み)」

そう言いながら小人は鞄の中のキノコを俺に見せた。

俺にはスバルちゃんとの愛の結晶的に取得したキノコ鑑定スキルがある。

【キノコ鑑定スキル。食用か毒茸かの判定が可能になる】

このスキルが俺に知らしていた。

鞄の中に見えるキノコは全部毒キノコだと──。

しかもかなり猛毒だ。

「おい、このキノコは全部毒キノコだぞ……」

「大丈夫、ホビットは毒キノコで死なないからー(棒読み)」

「人間は死ぬから、やたら滅多にご馳走するなよ……」

「人間って、胃が弱いんだなー(棒読み)」

「お前らの胃が可笑しいんだよ。このキノコは猛毒だぞ」

「このぐらいの毒キノコも食べれないならー、チ◯コも小さいのかー?(棒読み)」

「チ◯コは関係無いだろ!?」

小人は哀れむように俺の顔を見上げていた。

「デケーよ、超ドデカチ◯コだよ!!」

「そう言うことに、しといたるー(棒読み)」

「うわ、超むかつく!!」

それにしても──。

また、可笑しなファンタジー住人が出て来たもんだわ……。


【つづく】

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