ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第332話【ドワーフの宴】
俺が低い出入り口を潜って店内に入ると、天井の高い店内にはドワーフの客が数人ほど早くも飲んだくれていた。
そして、俺を招き入れたドワーフの親父が低いカウンターの後ろで鍋を掻き回している女性のドワーフに声を掛ける。
「母さん、外で人間がうろちょろしていたから客引きしてきたぞ」
おや、こいつの母親なのか?
奥さんかと思ったぜ。
「あ~~ら、珍しいわね。人間のお客さんなんてさ。ささ、好きなところに座ってよ。酒かい?お 肉かい? それとも女かい?」
畳み掛けて来る女将さんだな……。
ウザそうな予感……。
そんでもって俺は、椅子が低すぎるのでテーブルに腰かけた。
だって好きなところに座っていいって言ったもん!
「じゃあ、お肉をくれ。酒と女は要らないよ」
「おや、じゃあ男が好みかい?」
「いや、男も要らないわ……」
「じゃあ、酒とお肉だね!」
「人の話を聞いてないな……。肉だけでいいんだよ。俺は子供だから飲めないんだ」
「ええ??」
女将さんが俺の言葉を聞いて不思議そうに顔を傾げていた。
周りの賑やかだったドワーフのお客たちも不思議そうな顔を見せている。
「俺、なんか可笑しなことでも言ったかな……?」
ドワーフの女将さんが答える。
「いやね……。人間の子供って、お酒が飲めないとは知らなかったからさ。不憫な話だね~……」
「ドワーフの子供は酒を飲むのかい?」
するとさっきまで薪を背負っていた店の店員ドワーフが、ジョッキでエールを煽ってから言う。
「ワシの年は五十歳だが、酒は飲んでいるぞ」
「五十歳なら、いい歳のジジィ~じゃあねえか」
「ドワーフの五十歳って言ったら、人間だと十歳ぐらいだわい」
「十歳って、あんた老けすぎ!!」
俺がツッコミを入れていると女将さんが肉が大量に盛り付けられた皿とジョッキを俺が座っているテーブルの上にドシンっと置いた。
「まあ、いいから肉をお食べ!」
「サ、サンキュー……」
すげー量だわ……。
女将さんが俺の背中をバシバシと豪快に叩きながら大声で言った。
「兎に角だ、たらふく食って、たらふく飲みなさい。そうしたら明日も元気モリモリだからさ!!」
肉の山の隣に置かれたジョッキにはエールが注がれていた。
人の話を聞いてねえな、このドワーフマダムはよ。
「だから、酒は要らねえってばさ……」
まあ、いいか……、兎に角晩飯だ。
俺は何の肉か分からないが皿の上の肉を鷲掴みにして口に運んだ。
モグモグと焼け糞のように食べる。
そして、腹が一段落付いた。
しかし、皿の上の肉は三割も減っていなかった。
お肉を残したら怒られるかな?
ここは話を逸らそう。
俺は近くのドワーフに訊いた。
「なあ、訊いてもいいか?」
俺に話しかけられたドワーフは酒で顔を真っ赤にさせながら返答する。
「なんだい? なんでも訊いてくれ!?」
「なんでも答えられるか?」
「知ってることなら、なんだって答えるぞ! それが鯔背なドワーフの飲んだくれってもんだ!!」
「じゃあ、名前と年齢と住所と職業と年俸と貯金残高を教えてくれ」
ドワーフは衣服の胸元からはみ出た胸毛部分をドンっと叩いてから気合いを入れて語り出す。
「ワシの名前はロダンじゃあ! 年齢二百五十三歳で、職業は彫刻家だ! 年俸は定まらないし貯金も無いわい! 更に言うなら花も恥じらう独身貴族じゃぞ!!」
「随分と陽気に告白したな」
「さーー、ワシのすべてを晒し出したんじゃ、酒を奢りやがれってんだ!!」
「分かったよ、一杯奢るよ」
「女将さーーん、エールを樽でくれ!!」
「ざけんな、ドブドワーフ!!」
俺はドワーフの両目をチョキで突いてやった。
「ぎぃぁあああ!!!」
ドワーフの飲んだくれロダンは、しばらくのたうち回ると席に戻って飲みかけのエールを煽りながら言う。
「人間って恐ろしいな……。酒の席でのジョークが分からねえのかよ……」
「何を言う。人間の間では、酒の席での目潰し攻撃はジョークの内だぞ」
「マジかいな!?」
「ああ、マジだ」
「人間って、意外と怖いんだな……」
「ところで訊きたいんだが、あんたも彫刻家なら知ってるだろう。外の不恰好なドワーフ像はなんだい?」
「不恰好?」
店内のドワーフどもが全員首を傾げた。
もしかして、このドワーフたちには外の石像が不恰好には見えないのかな?
するとロダンが答えた。
「人間には、外のドワーフ像が不恰好にしか見えないのか?」
「ああ、なんだかアンバランスにしか見えないぞ」
「何を言うか、あのアンバランス感が芸術的なのではないか!」
「えっ、そうなの?」
「あの数々の芸術的ドワーフ像は、百年前ぐらいに、この村で一代ブームを巻き起こした彫刻家であるピカソさんの作品だぞ!!」
あー、作者の名前を聞いて、なんだか納得できたわ……。
ピカソなのね。
そう言うことですか~。
更にロダンは語る。
「ピカソさんは、その芸術的な腕を生前に渡って発揮して、死する直前までに数百の石像を作っては無料で村に寄付してくれたんじゃあ。あまりもの数を寄付しゃがるから、邪魔で邪魔でしゃあないから町の外に投げ捨てたり防壁の修復材料として使ったりしたんだが、まだまだ余ってて困っているんだ。良かったら五個か六個ぐらいお土産に持って帰ってくれないか?」
「要らねーよ……」
なるほどね……。
下手くそな石像の謎が解けたぜ。
そんなこんなしていると、俺は壁に張られた張り紙に気が付いた。
ドワーフの文字で書かれているから読めないが、挿し絵で内容が予想出来た。
その挿し絵には、ハゲの天辺に一角で、顔の真ん中に大きな眼球を有したマッチョマンが描かれている。
俺はそれを指差しながらロダンに訊いた。
「これは?」
「これはバイトでワシが描いた絵だ。上手いだろ。ワシは画力も高いのじゃ」
「いや、下手だぞ」
「なぬっ!?」
「かろうじてサイクロプスだと分かるぐらいだ」
「サイクロプスだと分かれば十分だろ!?」
「すまないが、俺はドワーフ語が読めないんだ。これはなんて書いてあるんだい?」
「村長が出したサイクロプスの討伐依頼だわい。だが、もう十年近くも放置されているから、まだ有効かは知らんぞ」
「この依頼が十年も放置されているのはいいとしてだ。サイクロプスを村の側で十年も放置してて大丈夫なのか?」
「サイクロプスも気を使って、家畜の牛や山羊をたまにしか襲わないからな」
「たまにでも襲われてるんじゃんか……」
「そんなのワシは知らん! 何せワシは家畜の主じゃあないからの! 彫刻家のロダンだからの!」
「あー、そうですねー……」
無責任全開の飲んだくれだな。
まあ、いいか。
明日にでも村長さんの家でも訪ねてみるかな。
この村がサイクロプスの被害に困ってるか否かよりも、俺がサイクロプスと戦ってみたいわ。
それだけが興味深いぜ。
【つづく】
そして、俺を招き入れたドワーフの親父が低いカウンターの後ろで鍋を掻き回している女性のドワーフに声を掛ける。
「母さん、外で人間がうろちょろしていたから客引きしてきたぞ」
おや、こいつの母親なのか?
奥さんかと思ったぜ。
「あ~~ら、珍しいわね。人間のお客さんなんてさ。ささ、好きなところに座ってよ。酒かい?お 肉かい? それとも女かい?」
畳み掛けて来る女将さんだな……。
ウザそうな予感……。
そんでもって俺は、椅子が低すぎるのでテーブルに腰かけた。
だって好きなところに座っていいって言ったもん!
「じゃあ、お肉をくれ。酒と女は要らないよ」
「おや、じゃあ男が好みかい?」
「いや、男も要らないわ……」
「じゃあ、酒とお肉だね!」
「人の話を聞いてないな……。肉だけでいいんだよ。俺は子供だから飲めないんだ」
「ええ??」
女将さんが俺の言葉を聞いて不思議そうに顔を傾げていた。
周りの賑やかだったドワーフのお客たちも不思議そうな顔を見せている。
「俺、なんか可笑しなことでも言ったかな……?」
ドワーフの女将さんが答える。
「いやね……。人間の子供って、お酒が飲めないとは知らなかったからさ。不憫な話だね~……」
「ドワーフの子供は酒を飲むのかい?」
するとさっきまで薪を背負っていた店の店員ドワーフが、ジョッキでエールを煽ってから言う。
「ワシの年は五十歳だが、酒は飲んでいるぞ」
「五十歳なら、いい歳のジジィ~じゃあねえか」
「ドワーフの五十歳って言ったら、人間だと十歳ぐらいだわい」
「十歳って、あんた老けすぎ!!」
俺がツッコミを入れていると女将さんが肉が大量に盛り付けられた皿とジョッキを俺が座っているテーブルの上にドシンっと置いた。
「まあ、いいから肉をお食べ!」
「サ、サンキュー……」
すげー量だわ……。
女将さんが俺の背中をバシバシと豪快に叩きながら大声で言った。
「兎に角だ、たらふく食って、たらふく飲みなさい。そうしたら明日も元気モリモリだからさ!!」
肉の山の隣に置かれたジョッキにはエールが注がれていた。
人の話を聞いてねえな、このドワーフマダムはよ。
「だから、酒は要らねえってばさ……」
まあ、いいか……、兎に角晩飯だ。
俺は何の肉か分からないが皿の上の肉を鷲掴みにして口に運んだ。
モグモグと焼け糞のように食べる。
そして、腹が一段落付いた。
しかし、皿の上の肉は三割も減っていなかった。
お肉を残したら怒られるかな?
ここは話を逸らそう。
俺は近くのドワーフに訊いた。
「なあ、訊いてもいいか?」
俺に話しかけられたドワーフは酒で顔を真っ赤にさせながら返答する。
「なんだい? なんでも訊いてくれ!?」
「なんでも答えられるか?」
「知ってることなら、なんだって答えるぞ! それが鯔背なドワーフの飲んだくれってもんだ!!」
「じゃあ、名前と年齢と住所と職業と年俸と貯金残高を教えてくれ」
ドワーフは衣服の胸元からはみ出た胸毛部分をドンっと叩いてから気合いを入れて語り出す。
「ワシの名前はロダンじゃあ! 年齢二百五十三歳で、職業は彫刻家だ! 年俸は定まらないし貯金も無いわい! 更に言うなら花も恥じらう独身貴族じゃぞ!!」
「随分と陽気に告白したな」
「さーー、ワシのすべてを晒し出したんじゃ、酒を奢りやがれってんだ!!」
「分かったよ、一杯奢るよ」
「女将さーーん、エールを樽でくれ!!」
「ざけんな、ドブドワーフ!!」
俺はドワーフの両目をチョキで突いてやった。
「ぎぃぁあああ!!!」
ドワーフの飲んだくれロダンは、しばらくのたうち回ると席に戻って飲みかけのエールを煽りながら言う。
「人間って恐ろしいな……。酒の席でのジョークが分からねえのかよ……」
「何を言う。人間の間では、酒の席での目潰し攻撃はジョークの内だぞ」
「マジかいな!?」
「ああ、マジだ」
「人間って、意外と怖いんだな……」
「ところで訊きたいんだが、あんたも彫刻家なら知ってるだろう。外の不恰好なドワーフ像はなんだい?」
「不恰好?」
店内のドワーフどもが全員首を傾げた。
もしかして、このドワーフたちには外の石像が不恰好には見えないのかな?
するとロダンが答えた。
「人間には、外のドワーフ像が不恰好にしか見えないのか?」
「ああ、なんだかアンバランスにしか見えないぞ」
「何を言うか、あのアンバランス感が芸術的なのではないか!」
「えっ、そうなの?」
「あの数々の芸術的ドワーフ像は、百年前ぐらいに、この村で一代ブームを巻き起こした彫刻家であるピカソさんの作品だぞ!!」
あー、作者の名前を聞いて、なんだか納得できたわ……。
ピカソなのね。
そう言うことですか~。
更にロダンは語る。
「ピカソさんは、その芸術的な腕を生前に渡って発揮して、死する直前までに数百の石像を作っては無料で村に寄付してくれたんじゃあ。あまりもの数を寄付しゃがるから、邪魔で邪魔でしゃあないから町の外に投げ捨てたり防壁の修復材料として使ったりしたんだが、まだまだ余ってて困っているんだ。良かったら五個か六個ぐらいお土産に持って帰ってくれないか?」
「要らねーよ……」
なるほどね……。
下手くそな石像の謎が解けたぜ。
そんなこんなしていると、俺は壁に張られた張り紙に気が付いた。
ドワーフの文字で書かれているから読めないが、挿し絵で内容が予想出来た。
その挿し絵には、ハゲの天辺に一角で、顔の真ん中に大きな眼球を有したマッチョマンが描かれている。
俺はそれを指差しながらロダンに訊いた。
「これは?」
「これはバイトでワシが描いた絵だ。上手いだろ。ワシは画力も高いのじゃ」
「いや、下手だぞ」
「なぬっ!?」
「かろうじてサイクロプスだと分かるぐらいだ」
「サイクロプスだと分かれば十分だろ!?」
「すまないが、俺はドワーフ語が読めないんだ。これはなんて書いてあるんだい?」
「村長が出したサイクロプスの討伐依頼だわい。だが、もう十年近くも放置されているから、まだ有効かは知らんぞ」
「この依頼が十年も放置されているのはいいとしてだ。サイクロプスを村の側で十年も放置してて大丈夫なのか?」
「サイクロプスも気を使って、家畜の牛や山羊をたまにしか襲わないからな」
「たまにでも襲われてるんじゃんか……」
「そんなのワシは知らん! 何せワシは家畜の主じゃあないからの! 彫刻家のロダンだからの!」
「あー、そうですねー……」
無責任全開の飲んだくれだな。
まあ、いいか。
明日にでも村長さんの家でも訪ねてみるかな。
この村がサイクロプスの被害に困ってるか否かよりも、俺がサイクロプスと戦ってみたいわ。
それだけが興味深いぜ。
【つづく】
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