ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第289話【同族発見】

カンパネルラ──。

顔は渋くてハンサムだが、短髪の頭はボサボサだ。

服装は汚く泥だらけでだらしない。

年の頃は五十歳ぐらいに見えるが、実年齢は六十歳を越えている。

弟たちより若く見られて、舐められているのが最近の悩みらしい。

弟たちには兄として尊敬されていないようだ。

理由は体が小さく力も弱いからだ。

それと、怠惰で仕事も怠けるのが大きいらしい。

更に豚農家なのに豚を捌くのが嫌いらしく、豚を可愛がり過ぎてウザイらしいのだ。

家畜を殺せないのは、農家として失格である。

だから弟たちに舐められているのだ。

そもそもカンパネルラの一族は農家では無い。

話を聞いて見ればカンパネルラたる男は生粋のテイマーらしい。

父親も祖父も曾祖父もテイマーの冒険者だったらしいのだ。

現在は、息子と娘が一人ずついるが、息子はテイマー冒険者として旅立ち、娘は獣医師としてソドムタウンやゴモラタウンを行ったり来たりとしているらしいのだ。

この農家は、テイマーの才能が無かった弟たち二人が始めた家業なのだ。

その家に、冒険者を引退したカンパネルラが転がり込んだってわけだ。

そして日々飲んだくれている。

「どうぞ、白湯です」

「どうも……」

ボロ屋の中でテーブルを挟んで向かい合う俺とカンパネルラに、弟のルンパネルラが大きな手で白湯を出してくれた。

白湯を見たカンパネルラが弟に言う。

「ルンパネルラ、俺は酒がいいんだが」

「朝から迎え酒か……」

確かにカンパネルラからはプンプンと酒の臭いが漂って来ていた。

「ちょっとだけでいいからさ~」

カンパネルラがだらしなく媚びていると、弟のルンパネルラが酒瓶を持って来る。

えっ、くれるのか?

「カンパネルラ兄さん、いつも言ってるだろ。朝から酒は駄目だって」

「ちょっとだけだよ。ほら、お客さんも来ていることだしさ~」

「お客さんが来ているから、尚更駄目なんだよ!!」

ルンパネルラが酒瓶を棍棒のように持って頭の高さまで振りかぶった。

長身の弟は本気で殴り付けそうなぐらい怖い顔をしている。

すると怯えながらカンパネルラが謝った。

「じょ、冗談だよ。ルンパネルラったら本気にすんなよ、やだな~、も~……。あはははは~……」

ルンパネルラが深い溜め息を吐いた後に俺に言った。

「お客さん、俺は仕事に戻るが、兄が失礼なことを言ったら斬り殺して構わないぞ」

「えっ、マジ……」

「役人には、犯人は見知らぬ中年男性で山のほうに逃げたって証言するから安心してくれ」

「あ、ああ、わかった……」

俺の返答を聞いたルンパネルラは、大きな体を屈めてボロ屋を出て言った。

するとカンパネルラが小声で言う。

「弟たちは糞真面目なんだよ。本当に詰まらんヤツらなんだぜ~」

「あんたが不真面目すぎないか?」

「お前さんだって分かるだろ。冒険者なんて冒険中以外は酒浸りだってよ」

「俺はゲコだ。酒は飲まない」

「おまえ、冒険者じゃあないな!! どこの組織の回しもんだ!? 俺を殺しに来たのか!?」

あー、面倒臭いジジイだな……。

「さっき弟さんが、失礼なことを言ったら斬り捨てていいっていわれているぞ」

俺は鞘から輝く刀身を少し見せた。

「じょ、冗談だよ……。でえ、なんの用事だい。パーティーの誘いかい。だったらお断りだ。俺はもう引退してるんだからな。だが、報酬次第では引退を撤回してもいいぜ、若いの。何せ冒険者の引退は、死んだ時だからな。どぉ~んっとこいや!」

何を言ってるんだ、こいつは?

まだ酔ってるのか?

「あー、うぜぇ~……。斬り捨てて帰ろうかな……」

「嘘です嘘です、痛いのは嫌いなの。だから冒険者をやめたの!!」

なんだ、この爺さんは……。

スゲー、うぜーわー……。

マジで斬りたいわ~……。

「でえ、本気で、なんの用事だい?」

俺は率直に質問する。

「あんた、シルバーウルフを仕付けられるか?」

「シルバーウルフって、雪山に住むダイナウルフだよな」

「詳しいことは知らん。俺は仕付けられるかどうかを訊いているんだよ」

「シルバーウルフをテイムしたことはないが、ダイナウルフならテイムしたことがあるぞ。だからたぶん出来るだろうさ」

「じゃあ、俺の家に子供のシルバーウルフが居るから仕付けてもらいたい」

カンパネルラの顔からおふざけが消えていた。

職人のような顔で訊いて来る。

「子供って、産まれてどのぐらいだ?」

「産まれて間もないのかな。まだ母親の乳から離れない。目も開いたか開かないかだ」

カンパネルラは口をヘの字に曲げて考え込む。

「シルバーウルフか~。見てみたいな~」

見たことないのかよ。

大丈夫か、こいつ?

「お前の家は何処だい?」

「ここから西に行ったところだ。そんなに遠くないぞ」

「なんでそんなところにシルバーウルフが居るんたよ。完全に生息地じゃあないぞ?」

「本当は、どこに住んでるモンスターなんだ?」

「雪山とか、極寒の大地とかが生息地だ。こんな乾燥した地域の生き物じゃあないぞ。それで良く生きてられるな?」

「環境には馴染んでいるぞ。弱っている様子すらない」

「そうか~。意外と暑さに慣れるんだな……。それで、どこからどうやって連れて来たんだい?」

「マジックアイテムから召喚したら、繁殖しちゃってね」

「マジックアイテムからの召喚か~、凄いな……。それが繁殖するなんて珍しい話だぞ……。」

「それで、仕付は出来るのか?」

「たぶん出来るが、依頼料を取るぞ」

「それは構わん。てか、あんた暇か? 他に仕事は?」

「仕事はここの手伝い程度だ。それも俺が居なくても回ってるから、そっちの仕事に専念できるぞ」

「ならば狼たちの世話をしてもらえないか、日当を払うから?」

「本当か……?」

「子供たちの仕付のほかに、親狼たちの散歩もしてもらいたい。代金は俺が出すから餌の買い出しもやってもらいたいんだ。まあ、兎に角、狼たちの面倒を見てもらいたい。飼育員ってヤツかな?」

「飼育員……。良い響きの職業だぜ、憧れる~」

「それで報酬は一日10Gでどうだ?」

「マジか!?」

一日10Gならば、一般人ならそこそこの報酬だ。

貧乏な人足ならば5Gから7Gぐらいしか稼げない。

だから一日10Gも貰えれば、普通に飲んで食って酒に溺れられながら暮らせる賃金なのだ。

でも家賃までは払えないかな?

家賃まで入れれば12Gから15Gは欲しいだろう。

「ただし、仕事中は禁酒だ。飲むなら家で飲め。いいな」

「わかったぜ!!」

なんだかやる気を出してくれてるな。

これで狼たちの問題は解決だぜ。

だが、再びお喋りなジジイが一人で語り出す。

「いや~、冒険者を体力の衰えで引退してからテイマーとしての実力を発揮できる場所がなくってさ~。もう毎日毎日豚ばかり相手にしていたから酒に溺れちゃう日々だよ。でも、豚は豚で可愛いんだけどね。それにしてもこの歳でシルバーウルフなんてレアなモンスターを調教できるなんてラッキーだわ~。生きてて良かったよ。まさか今さらもう一度青春が来るなんて思わなかったぜ」

良く喋るジジイだな……。

「そもそもペットショップとか調教師なんて、この世界で食ってけないもんな。だいたいこの世界の人間はモンスターを殺せばいいとしか考えてないから困るんだよ。手なずけるって習慣がほとんど無いでやんの。モンスターだってテイムすればかわいいのによ。それに戦力にもなるんだぞ。そりゃあ体格が大きいから食費が半端ないけれどね……」

マジでどこまで一人で喋るんだよ……。

「本当に食費がかかってさ、それで俺もテイムしたモンスターを手放さなきゃあならなかったんだ。こんなことならテイマースキルばっかり貰わないで、もっと稼げる戦闘スキルを貰えばよかったよ。それでガッポリ冒険で稼げてたら、こんな寂しい老後を送らなくて良かったのにさ~。今から時間を戻してもらって、転生したところからやり直して~な~」

えっ!!!

今最後になんか凄いこと言わなかったか、この爺さんは!?

「おい、ランパネルラ爺さん!!」

「それは弟の名前だ。俺はカンパネルラだよ」

「えーと、じゃあ、カンパネルラ爺さん、ちょっと訊いていいか……」

「なんだ、若いの?」

「今何気に凄いことを口走りませんでしたか……?」

「えっ、なにが?」

「転生した時とか、言わなかったか?」

「えっ、俺、そんなこと言った?」

「言った言った、バッチリ言った!」

「誰も信じてくれないんだよね。親父も爺さんもさ。弟たちですら俺を馬鹿にするんだよ。俺が転生して来たって言ってもさ」

マジで言ってるわ!

こいつは転生者だ!?

「転生って、どう言うことだよ!」

「俺は昔さ、この異世界に転生して来たところを親父に拾われたんだよ」

「マジか!?」

スゲー方向に話が飛んだな、おい!!


【つづく】

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